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スキから始まる君と僕の物語  作者: 豊本 高弘
第6章 金曜の夜に
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第1章 Third Person-3

「――あっ……!」


 ふと眼鏡の彼女の目にある物が映り、その場で立ち上がった。


「それって、涼本まひろの『HANA』……?」


 祐二がテーブルに置いてある半透明のビニール袋、中にはさっき買った漫画が入っている。

 涼本まひろの『HANA』というのはその漫画を描いている作者とタイトルで、眼鏡の彼女はビニール袋越しにそれを一目見て声を出して立ち上がったようだ。


「そ、そうですよ……?」

「私それ読みたかったんだ、読ませてっ!」


 眼鏡の彼女は両手を合わせてせがみ出す、突然のことに祐二は戸惑いの表情を浮かべた。

 頼まれたものだからという理由を出しながら丁重に断る、それでも読みたいと何度も願い出した。


「ねっ? お願いだからさ、読ませてよ。どこ行ってても売り切れててさ……」

「ダメです」


 眼鏡の彼女が拝みながら頼めば祐二は拒み続ける、これを数分ほど繰り返していると突然祐二は肩を叩かれた、振り向くと人差し指が頬に当たる。


「やーい、引っかかったっ」

「綾!」


 そこにいたのはさっきまで待ち合わせをしていて彼に漫画を買うように頼んだ幼なじみの綾だった、いたずらっ子のように笑いながら元気にウィンクすると祐二の隣の席に座りすぐさま漫画を手渡す。


「綾、これ頼まれた漫画」

「うんっ、ありがと。これ読みたかったんだぁ」


 綾が喜んでいる表情に祐二はホッとした表情を見せる、このやりとりを見て眼鏡の彼女は何かを察したのかポンッと握りこぶしで平手を叩いた。


「もしかして二人って、付き合ってるの?」

「「えっ?」」


 言われた直後、祐二と綾は彼女へ振り向く。

 祐二は慌てて否定しているが隣の綾はまんざらでもない表情を浮かべた。


「いやぁあはは、そうなんだぁ。あたしと祐二は長年の付き合いで――」

「そ、そんなんじゃないですよ、ただの幼なじみです!」

「うっそだー、仲良さそうにしといてそう言う?」

「僕たちは、そのような関係ではありません」


 キッパリと否定した祐二に綾はちぇーっと不快の意を表す、しかし眼鏡の彼女は真面目に返答した彼に興味を持ったのか質問を続けた。

 まるでいたずらを繰り返す子供のように楽しんでいる姿の彼女に綾はじっと見つめ始めた。

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