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スキから始まる君と僕の物語  作者: 豊本 高弘
第6章 金曜の夜に
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第1章 Third Person-2

「――ねぇ!」

「ぶほっ!?」


 突然背後から声をかけられた祐二はその場で勢いよくクリームソーダを飲み込むと、入ってはいけないところに入ったためその場で咳き込む。

 振り向いて相手を見るが、かけている眼鏡が少しずれていたためぼやけて見えた。


「……ゴホッゴホッ、なんなんですか?」

「あうぅ、ごめんねぇ……」


 咳きこみながらも眼鏡をかけ直して改めて振り向くと、群青色のキャスケット帽を目深にかぶり、黒縁の眼鏡をかけた女が申し訳なさそうな表情で両手を合わせていた。

 服装は茶色の襟付きシャツの上に濃い青色のデニム素材で作られたジャンパーと、灰色のジーンズを着ている。


「あのさ、私の携帯知らない?」


 言われた用件に祐二は訳がわからない表情を浮かべた、どこの誰かも知らない人の携帯電話の行方を尋ねられたためなおさらである。

 聞くところによると眼鏡の彼女は自分の携帯を落としてしまい、さっきまで今日行った場所へ行ってみたがどこにも見つからず最終的にここへ来たと言う。


「だからさ、もしかしたらと思って……あ、そうだ。よかったら鳴らしてもらうって出来ない?」

「い、いいですけど……」


 祐二は教わった番号へ発信する、そっと眼鏡の彼女は耳をすました。

 するとどこの携帯にも入っているであろう無個性な着信音が聞こえる、それに反応するように彼女はテーブルの周りを探り始めた。


「あった……!」


 眼鏡の彼女は祐二が座る椅子の下に手を伸ばし携帯を拾い上げる、そこに青みがかったシルバーの二つ折り式携帯が見つかりホッとした表情を浮かべた。


「あイタっ!?」


 その直後、立ち上がろうとしたのか彼女はテーブルに後頭部をぶつけた。すぐに祐二はテーブルの下に潜って手を差し出す。


「だ、大丈夫ですか?」

「ぅ~~~、大丈夫ぅ……」


 音を聞いて喫茶店のウェイターも駆け寄ってきたが、ぶつけた部分を右手でさすりながら祐二の手を取って立ち上がると彼女は苦笑い交じりに祐二が座っている向かいのイスに座る。


「ぅぅ……携帯も見つかったことだし、喉渇いちゃった。相席していい?」

「えっ?」

「私もそれ、飲みたいし」


 答えを聞く間もなくお構いなしに眼鏡の彼女は頬杖をつく、押されるように受け入れた祐二は心の中で仕方のないことと諦めた。

 やがて祐二と同じクリームソーダがやってきた、緑色に光るメロンソーダの上にバニラアイスとワンポイントとしてさくらんぼが乗って、L字型のストローが刺さっている。

 しかし彼女は一口も飲む気配も見せず、ただじっとソーダの泡を見つめていた。

 それを見て祐二は不思議に思いながらも自分の分のクリームソーダを一口飲む。

 釣られるように眼鏡の彼女も同じように飲み始めた。

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