第5章 Third Person-2
一瞬の出来事に周囲はざわつくが、それを気にも留めず祐二は瞳の手を取ってその場から離れた。
「バカ松……!」
綾は彰吾へ睨みを利かせ一言言い残し祐二たちへついていく、しかし数秒遅れただけでどこへ行ったのだろうと周りをキョロキョロさせながら探した。
見覚えのある後ろ姿と今日新しく覚えた後ろ姿を見つけた場所は店内の途中に設置された階段、エレベーターやエスカレーターを利用する客ばかりのお店の中では比較的閑散としている。
二階から一階へ降りることが出来る踊り場に祐二と瞳がいた。
「――どうしてあんなことしたの?」
綾が見つけた時には瞳が祐二へ事の真相を尋ねていて、自分も降りて話を聞こうかとも思ったが綾の心の中で今は行ってはいけないという思いが足を動かなくしていた。
「ど、どうしてかって、秋山さんとはこの間と今日会ったばかりですけど、すました顔をしていながらよく喋ってよく笑って、素敵な人じゃないですか。少し不思議なところもありますけど、そこもまた秋山さんの魅力なんじゃないかと思ってます。あのバカはああ言ってましたけど、僕は秋山さんのファンになります!」
ひとまずの精一杯を瞳に伝えきったところで始めは呆然としていた瞳だったが、次第にくすくすと笑い始める。
さっきまで見ているだけだった綾もようやく階段を下りて祐二へ近付いてくる、今の瞳の行動にあ然としていた。
「ーー確かにああいう風に言われてムッときたけど、祐二くんが手をあげてくれて私嬉しかったよ。それでさっきのこと言われたらもうおかしくって……あー、スッキリしたぁ」
今の瞳はとてもにこやかだった、祐二が怒っているのかどうか確かめたが即座に否定する。
むしろありがとうという気持ちがそこにはあったと言う。
事態が収拾したところで三人は思い出作りをしようという話になりそのまま階段を上がると、店内の一角にあるゲームセンターへ向かった。
この中には最低限ながらプリントシール機が置いてあり、綾の紹介でカーテンの中へ入る。
「私プリントシールって、デビュー前はよく使ったなぁ」
懐かしげに語る瞳をよそに綾が慣れた手つきで機械の操作を進めている、一方で祐二にとっては初めてのプリントシールだ。
プリントシール機から案内の音声が流れ、三人は思い思いの表情を浮かべていく。やがてそれがプリントアウトされ、綾は取り出し口から取り出し出来上がりを見て笑い始めた。
「あははっ、祐二ったら顔ガチガチじゃん!」
そう言いながら祐二と瞳にシールを手渡す。言われてから祐二も気付いたが、笑顔のつもりで撮った祐二の表情は引きつっている。
それを見て瞳もつられて笑う、しょうがないじゃないかと言いたげに祐二は顔を赤らめた。
「記念に貼っとこ♪」
瞳はポケットからメタリックブルーの携帯を取り出すと、背面部分に三人が写るプリントシールを貼り付ける。これでいつでも思い出に浸ることが出来ると満足げな表情だ。
* * *
時間が過ぎ行き、三人が家電量販店を出た時には十七時になろうとしていた。
「綾さん、祐二くん。今日はありがとう、楽しかった♪」
満面の笑顔で綾と祐二へ感謝を述べた瞳は携帯電話を取り出すと、マネージャーのティナへ電話をかけ迎えに来るようお願いした。
「それじゃあ瞳さん、僕たちはこの辺で」
「うん、バイバイ♪ あっ、そうそう。今度の“ミュータ”見てねっ」
「オッケ、わかった♪」
綾と瞳の中で盛り上がる話題に祐二はついていけないまま三人は別れる、祐二にとってはまた一つ綾へ尋ねる疑問が増えた。




