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スキから始まる君と僕の物語  作者: 豊本 高弘
第3章 始まりの歌
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第3章 side Hitomi

 私は“AYS様”と書かれた控え室の中でイヤホンを両耳に付けて、自分がファンにしている音楽を聴いていた。


「瞳、調子はどう?」


 れいちゃんから声をかけられて私はイヤホンを外した、それに対して私はドキドキした顔で返事。


「どうしたの? いつもの瞳ならリラックスしてるのに」

「う、うん、ちょっとね……だって、逃げ出した後の一回目のライブだもん」


 これは咄嗟についた嘘、本当は違うことでドキドキしていた。


「大丈夫よ、センターの瞳をわたしとまりやでなんとかするわ」

「えぇ~、ウチらが? れいやんひどいわぁ~」


 そう言ってもっちゃんったら、お菓子食べてる。

 まあいつものことだよね、だってお腹が空いてたら全然喋らなくなって話しかけても反応しなくなるから。


 ――コンコン。


「アイスの皆さん、もうすぐ本番です!」


 スタッフさんから言われてすぐ、れいちゃんが眼鏡――歌う時は外すんだって――を外して、専用の赤い眼鏡ケースに入れる。

 直後に私たちは気合いを入れるために人差し指を重ね合わせる、これはどんな時でも本番前には必ずやる円陣みたいなもの。


「じゃあ行くわよ……せーの、誰もが皆――」

「愛すっ!」


 気合い入れ完了。恥ずかしいって思われるかもしれないけど、これが私たちアイスのやり方。


「――こんにちは~!」


 ステージの袖から私たちが出てくると、お客さんが暖かい歓声と拍手で迎えてくれた。

 私たちが軽く挨拶と少しの時間だけお喋り――最近のこととか、これから歌う曲についてとか――すると曲のイントロが流れ始めた、そこから私をセンターにダンスの構えに入る。

 お客さんの前で歌う私たち、大きな会場と違ってすぐ近くにお客さんがいるからまた違う緊張感があった。

 でもアイドルとして楽しく歌えている、そんな気がした。

 この次、今歌っている曲の中でも私が一番力を入れて歌うパート。

 なぜなら私のソロだから……!


「♪――!」


 ふとお客さんの後ろ側に見えたその顔。

 一瞬見えただけだからまさかとも思ったけど、この間会ったばかりだから彼の特徴を忘れない。

 来てくれたんだっていう嬉しさで少しの間、歌よりもそっちに気を取られてステージ上には歌声が聞こえない音楽だけが響く。

 呆然と立ち尽くしていた私にお客さんが騒ぎ始めた。


「♪――ララ」


 私が我に返っていた時にはれいちゃんが私の分まで歌っていた、慌てふためきながらも歌い直すとやがて歌が終わって店内に沸く拍手に私たちは一つ礼をしてステージ袖へ消えた。


「――瞳、さっきのところなんだけど……」


 れいちゃんから声をかけられたけど、それに耳も貸さないで私は控え室に置いてあるカバンから携帯を手に取ってすぐにトイレへ走った。

 やっちゃったっていう思いがあったけど、それよりも祐二くんに一言言いたくて、気が付けば着信履歴に残ってある彼の番号にかけていた。

 呼び出し音が聞こえてくる、何度も何度も……。


「瞳! 出てきなさい!」


 そこへれいちゃんの怒鳴り声とドアを叩く音が響いた、私はすぐに電話を切ってトイレのドアを開ける。


「まったく……」

「ごめん、つい……」


 れいちゃん、怒るだろうな……私は覚悟した。


「何やってるのよ、もよおしてたのなら本番前に行っておきなさいっていつも言ってるでしょ!」


 あれ? もしかしてれいちゃん、気付いてない?

 ま、まあいいや。そういうことなら私は笑ってごまかした。

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