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スキから始まる君と僕の物語  作者: 豊本 高弘
第2章 その時、本当は…
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第2章 Third Person-2

「ーーふぅ、気持ちよかった~」


 バスタオルで濡れた髪を拭き取りながら青と水色のチェック柄のパシャマ姿をした瞳が自分の部屋に入る。

 まりやはお風呂からあがって次に瞳が入った後、今は玲奈が入浴中だ。


「今日はいろいろあったなぁ」


 寝る前にベッドに腰掛けた瞳はふと自分の携帯を手に取る、話を聞くと玲奈が物凄く心配していたというのだからそれが本当なのか確かめるためだ。


「うわ、ほんとだ。れいちゃんばっかり……」


 着信履歴の画面を開いてざっと見ていく、ほぼ三十分ごとの時刻に表示されている“れいちゃん”の文字。

 これを見て瞳は苦笑いすることしか出来なかった。


「あれ?」


 ふと最新の着信履歴を見て何かに気付く、一番真上の段に表示されている“ティナさん”という文字の次の段。

 画面内で表示されている中で唯一名前が書かれておらず、ただ十一桁の番号だけが無作為に並んでいる。


「あっ! これって……」


 思い出した。

 携帯を落として喫茶店に戻った時、自分の携帯がここにないか確かめてもらうために確認の電話をしてくれた祐二の携帯番号である。


「あっちゃ~……あの時携帯探すのに夢中で、かけてもらったこと忘れてた……」


 瞳はその場でベッドに倒れる、同時にやや長い茶髪がふわりと揺れて枕に広がった。

 片やアイドル、片や同じ年の普通の高校生。

 一般人に知られたくないことの一つかもしれない携帯番号を自らの失態で教えてしまったことにショックでしかなかった。


「あー……バカバカっ、私のバカ」


 後悔してからでは遅い、今の瞳には最悪な事態を想定していた。

 もしかしたら祐二は一緒にいた綾から話を聞いて番号について尋ねられる、そうしたことで綾の携帯からかかってくるかもしれない。

 そう考えた瞳はその場で悶え始めた。


 ――コンコン。


 不意に部屋のドアがノックされ、瞳はそれに反応するように起き上がる。

 弾みで指に力が入り、携帯の発信ボタンを押してしまう。しかし今の彼女には気付いていなかった。


「お風呂上がったわよ。わたしはもう寝るから瞳も早く寝なさい、明日からまた仕事だから」


 ノックをしたのは玲奈だった、瞳は適当に返答して胸を撫で下ろす。


『ーーもしもし?』


 小さく数回鳴った呼び出し音の後、不意に携帯の受話部分から聴こえてきた男の声に瞳はハッとなる。まさかと思いつつ耳をあてた。


『もしもし、どちら様ですか? いたずらですか? 用件がないなら切りますよ』

「……も、もしもし……」


 周りに聴こえないように瞳は小さな声で話しかける。

 ここは寮の一室、仕事関係や身内ではない人と電話していることがバレたら大事だ。


「あのさ、わかる? 今日の昼に喫茶店で会った……」

『今日のお昼、ですか? あっ、あー! 秋山さん……でしたっけ』

「そ、そう! 私、秋山瞳……」


 自ら名乗ったことで瞳は顔を赤らめると、寝たふりを装うため素早く電気を消して布団の中へ潜りこむ。


「あの、その……着信履歴に知らない番号があったから、誰かなと思ってかけてみたんだ」


 適当にウソをついたが、電話越しの祐二はなるほどと納得する。


「今日はありがとう、楽しかったよ」

『いえいえ、こちらこそ。それよりもごめんなさい、綾から教わるまでどこの誰かも知らなくて……』

「気にしなくていいよ、これから私たちのこと覚えてね」


 アイドルとして一人でも多くの人へファンになってもらいたい、これは瞳なりのアピールだった。


『そういえば、綾が秋山さんのサイン欲しがってましたよ』

「ほんとに? それじゃ綾さんにかわいそうなことしちゃったね」

『気にしなくていいですよ、あいついつも明日には立ち直ってますから』


 それを聞いて瞳はクスクスと小さく笑い出す、初めて会ったと言えどその姿の綾が容易に想像が出来たためだ。


「あっ、そうだ。よかったら今度の土曜に市内のパシフィカレコードってお店でCD発売記念のミニライブあるんだけど、綾さんと来ない?」

『ミニライブですか?』


 それを聞いて電話の向こうでかすかに何かを書く音が聞こえた、メモを取っているかカレンダーに印を付けているのかのどちらかだろう。


「それじゃあ私そろそろ寝るね、明日からまた仕事だから」

『わかりました、おやすみなさい』


 瞳は笑顔交じりに電話を切る。

 本来であれば携帯の番号を消すよう言えばよかったのだが、祐二と楽しく話していくうちに言い忘れていた。

 布団の中で一つあくびをする、携帯を枕元に置くと瞳は眠りについた。

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