01-08 蒸留室女中(スティルルームメイド)
「あちゃー、また失敗かー」
「あは。スージーお姉ちゃんが失敗なんて、珍しいのデスよ」
「そうでもないわよ? お菓子作りは、かなり苦手なのよね。上手く仕上がったら、ミセスに味見してもらおうと思ってたのになー」
「少し焦げたぐらいで、味なら問題なさそうデスよ?」
「見栄えが悪い時点で、ミセスに見せられるレベルじゃないわ。仕方ない。失敗作で悪いんだけどこれ、シャルロちゃん達で片付けてくれる?」
「くくく、全ては我が策略通り!」
「リリちゃん、何か仕込んでたのデスか?」
「姉ちゃんがお菓子作りでヘマすると、あたし達のおやつが増えるじゃない? だからわざと失敗するように、蒸留室の砂時計をすり替えておいたのよ」
「えー、それはあまり感心しないのデスよ?」
「いーのいーの。どうせ練習作なんだから。では早速、いただきまーす」
「あれ?」
「しょっぱいーーーーっ? 何これ、砂糖と塩を間違えてるじゃん! 焼き時間以前の問題じゃない!」
「あは。スージーお姉ちゃん、うっかりさんなのデスよ」
「可愛くないよ! ドジっ娘属性なんて、本の中だけで充分なんだから!」
軽食やお菓子、薬などを作る蒸留室はハウスキーパーの管轄でした。
スティルルームメイドは、ハウスキーパーの助手であり、その身の回りの世話も担当しました。
将来のハウスキーパー候補でもあります。
作中ではメイド長のスージーが、その役割を兼ねています。




