01-03 料理人(コック)
「おおっ、これはなかなか美味しく出来たんじゃないか! あたいもやるもんだね」
「メリッサ、あんたまた創作料理してるの? レシピ通りに作れば腕は一流なんだからさ、余計なことはしなくていいのに」
「ふん。減らず口もそれまでだ。スージー、文句はこのスープを飲んでから言ってもらおうか」
「え? あたしが飲むの?」
「味わいもしないで、非難するなんてフェアじゃないだろう」
「それはそうだけどさ。でも、味わう以前に香りからしてヤバいんだけど」
「どうだ! 面白い味わいだろう!」
「……ごふっ」
「新たな世界が広がった気分はどうだ! あたしは料理界に革命を起こすぞ!」
「…………まず」
「え?」
「だから、不味いって言ってんの! 料理に面白さを求めないで! あんたはコックから引き継いだレシピを守ってればいいのよ!」
「な、なんだと! この味音痴が!」
「何よ、やる気? いいわよ、受けて立ってやるわ。掛かってきなさい」
「くっ。今日こそあたいの包丁の錆にしてくれる!」
「……スージー達、また乱闘してるよ?」
「あは。コリンお兄ちゃん、邪魔しちゃ駄目なのデスよ。あれがあの二人の、コミュニケーションの取り方なのデス」
コックは、キッチンの最高責任者です。
キッチンに関してだけは、ハウスキーパーの権力さえ及びませんでした。
ただし、蒸留室で用意される紅茶や軽食は、ハウスキーパーの管轄です。
作中では伯爵夫妻にお供して、タウンハウスへ出張中。
そのため出番ありません。
屋敷の料理は、ファースト・キッチンメイドのメリッサが代わりに担当しています。