01-01 家政婦(ハウスキーパー)
「ミセスってさ、すごく優しそうだよね~」
「ええッ? コリン兄ちゃん何を言ってるのっ?」
「だっていつもにこにこしてて、怒ってるところなんて見たことないよ?」
「はあー、コリン兄ちゃんは所詮、お客さんだからねー。ミセスに叱られる心配がないなんて、羨ましいわー」
「そ、そんなに怒ると怖いの? 想像も付かないんだけど」
「だってあの姉ちゃんが、ミセスにだけは逆らえないぐらいよ?」
「マジでか!」
「思い出すだけで恐ろしい。家政婦室に呼び出されてしばらくは、ミセスが腰に下げてる鍵束の音だけで、身震いしちゃうわね」
「ふーん。ところでリリちゃん、こんなところで仕事サボってていいの?」
「いーの、いーの。姉ちゃんも別の仕事で忙しそうだし、今のうちに羽を伸ばさなくちゃ」
「あらあら、そうね。たまには休息も必要ですわ」
「ひッ、ミセスいつの間に! 鍵束の音も気配もしなかったのに!」
「ところでリリ、ちょっとわたくしとお話しませんか? 美味しい紅茶を入れて差し上げますよ。さ、一緒にわたくしの部屋へ行きましょう」
「ひぃいいいいいっ」
「……うーん、一体、どんなお仕置きが待っているんだろう。聞きたいような、聞きたくないような。とりあえずこれでしばらくは、リリちゃんも大人しくなりそうだね」
ハウスキーパーは、女性使用人の最高責任者です。
ビジュアル的にはメイド服を着ておらず、ステータスシンボルの鍵束を持ってました。
いわゆる管理職ですが、蒸留室でお菓子作りなんかもしてました。
作中では、ミセスの役職です。
ミセスというのは通称で、本名はひみつです。