01-10 洗場女中(スカラリーメイド)
「おおおおお」
「リリちゃん、どうしたの~?」
「割れ、割れ、割れちゃったぁあああ」
「ええ~? また~? 今月もお給料から天引きだよね、可哀想~」
「エリカちゃん冷たい! せっかくあたしが、皿洗い手伝ってあげたのに!」
「そんなこと言われても~。とりあえず素直に謝ってきたら?」
「嫌だ。何とか隠せないかな。こっそり破片を中庭に埋めちゃうとか」
「ちゃんと枚数は管理してるから。足りないこと分かったら、大騒ぎになっちゃうよ?」
「そうだ! コリン兄ちゃんに頼もう! 兄ちゃんが割ったことにすれば、あたしは怒られないで済むよね!」
「それはコリン兄さんが可哀想じゃない? あ、そうだ。誰かのせいにするなら、良いアイディアがあるよ~」
「ああン? 皿が割られちまった? まーた、リリの仕業か。うちの仕事を手伝ってくれるのはありがたいんだけどさ、それとは話が別だ。落とし前だけはキッチリ付けないとな」
「違うよ! あたしじゃないよ!」
「じゃあ、エリカか? まさか勝手に割れたとか言い出さないよな?」
「ううん、違うの~。犯人はあの子~」
<にゃ! このぼくかっ!>
「あの黒猫? ふーん。うちで餌をもらっておきながら、恩を仇で返しやがった訳だ」
<濡れ衣だにゃ! ちょっとエリカ! どーいうことなのッ?>
<ごめんね、アーウィン。これが一番、誰も傷つかないの>
<僕はッ?>
「おーし、そこを動くなよ黒猫。あたいが三枚に下ろしてくれる。今夜は猫鍋だ」
<ぎゃーーっ、食われるにゃーーッ! エリカ! 助けてよエリカーーーーっ!>
キッチンメイドの下が、スカラリーメイドになります。
洗い物や掃除、羽根むしりなどの下働きを担当しました。
料理系メイドのスタート地点です。
ここからキッチンメイド、コックへと出世していきました。
作中では、子供使用人であるエリカの役職です。
ちなみにヘイウッド邸の上下関係はかなり緩いので、先輩キッチンメイド達も優しく手伝ってくれるようです。