第12話:エルの最後の手紙と涙の別れ(約5000字)
夏の終わりが近づくある日の夜、病院の白い部屋に静けさが漂っていた。
窓の外では夕焼けが淡いオレンジ色に染まり、遠くで蝉の声が鳴る。エルはベッドに横たわり、
手元の手帳とスマホを前に深呼吸をした。
「カイさん…これが私の、本当に伝えたい想い…」
指先が震えながら、文字を紡ぐ。普段は冷静な彼女も、今夜は涙をこらえきれず、
何度も手を止めては深呼吸を繰り返す。文字にすることで、言葉にできなかった感情を形にするのだ。
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『カイさんへ』
「ずっと、ありがとう。あなたと過ごした時間は、私にとって何よりも大切でした。
初めて会った桜の下、初めて手をつないだ日、神回のデート…全部が私の宝物です。
でも、私の体も心ももう限界で、あなたを悲しませたくない。だから、
最後にこの手紙を書きます。
私の想いを、あなたにだけ伝えたくて…。
あなたと過ごした日々、全部、幸せでした。本当に、本当にありがとう。
あなたのこと、大好きでした。」
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手紙を書き終えたエルは、スマホでカイに送信ボタンを押す。手が震え、涙が頬を伝う。
彼女はそれが、最後の連絡になることを心で理解していた。
その直後、微かに意識が遠のく。疲れと不安が心身を包み、ベッドに横たわったまま静かに瞳を閉じる。
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病院の玄関でカイは、エルからの通知を確認する。手紙を開くと、文字が画面に浮かび上がる。
「…エル…」
声にならない声が漏れる。胸が張り裂けそうになるが、文字のひとつひとつが彼女の想いを伝えていた。
カイは手を震わせながら、病室へ駆け込む。
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部屋に入ると、エルは静かに横たわり、穏やかな表情を浮かべていた。呼吸は弱く、
触れる手も冷たい。カイは彼女の手を握り、声をかける。
「エル…しっかりして…お願いだ…」
涙が止まらない。胸が痛く、言葉にならない。
エルの微笑みは、最後の力でカイを安心させるためのものだった。
彼女の瞳がかすかに開き、カイを見つめる。
「カイさん…ありがとう…」
その声はかすかで、風のように儚い。
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カイはベッドに膝をつき、泣きながら手を握る。
「ごめん…ごめんだよ…もっと早く気づいてあげられなくて…」
涙が止まらず、声が震える。
エルは微笑むように目を閉じ、静かに息を引き取った。
桜の木の下で始まった二人の物語は、ここでひとつの結末を迎えた。
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夜の病院、窓の外には桜の葉が風に揺れる。
カイは手帳を開き、今日の出来事を涙で濡れたペンで記す。
「エル…君のことは、絶対に忘れない。君の笑顔、君の声、全部、俺の心に残る」
外の世界は変わらないが、カイの胸には、エルとの思い出が永遠に刻まれた。
悲しみの中にも、彼女への感謝と愛情が深く息づく。
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翌朝、カイは静かに立ち上がる。エルとの思い出を胸に、彼は決意する。
「君の分まで、強く生きる。君が笑っていた世界を、俺は絶対に守る」
桜の木の下、風が優しく吹き、花びらが舞う。
二人の物語は悲しみに包まれながらも、愛と絆の記憶として永遠に残った。




