第9話「街への帰還、そして新たな『演者』」
オーク・ジェネラルを討伐した僕たちは、街へと戻る道についていた。
ヒロトは、まだ興奮が冷めない様子で、僕に話しかけてくる。
「いやあ、本当にすごかったな!俺、あんな強いやつ、初めて見たよ。お前、本当にただの冒険者なのか?」
「ええ、ただの冒険者ですよ。それに、ヒロトさんがオークの群れを足止めしてくれたおかげです」
僕は、ヒロトを褒め称える。
彼のプライドをくすぐり、僕への警戒心を解く。
これもまた、僕がこの世界の物語を操るための、重要なステップだ。
街へと戻ると、僕たちは冒険者ギルドで、討伐の報告をした。
ギルドの受付の女性は、僕たちを見て、驚きを隠せない様子だった。
「オーク・ジェネラルを討伐した……?しかも、お二人で……?」
「ええ、そうです。この通り、オーク・ジェネラルの牙も持ち帰りました」
僕は、オーク・ジェネラルの牙を差し出す。
受付の女性は、その牙を見て、顔を青ざめさせた。
「まさか、本当に……。お二人の力、恐るべし……!」
僕たちは、討伐の報酬として、金貨30枚を受け取った。
ヒロトは、その金貨を見て、目を輝かせた。
「すげえ!こんなにたくさん!」
僕の脳内にあるデータによると、ヒロトは、貧しい家庭に育ち、家族のためにこの世界に転生した。
彼は、金に困っている。
だからこそ、この金貨30枚という報酬は、彼にとって、何よりも価値のあるものだ。
「ヒロトさん、この報酬は、二人で分けましょう」
「え、いいのか?でも、ほとんどお前がやったようなもんだろ?」
ヒロトは、僕に気遣ってくれる。
だが、僕は、この報酬を、僕が彼を操るための「餌」として使う。
「いいんです。二人で協力して、討伐したんですから。それに、私も、このお金で、この街で生活するための準備をしたいので」
僕の言葉に、ヒロトは感銘を受けたようだった。
「わかった!ありがとう、イグニスに似た冒険者!」
「いえ、レオンです。レオンと呼んでください」
僕たちは、冒険者ギルドを後にし、街の宿屋へと向かった。
僕は、この街で、僕自身の物語を紡ぐための準備を着々と進めていく。
その夜、僕は宿屋の一室で、僕の脳内にあるデータと向き合っていた。
ヒロトは、僕がこの世界の物語を操るための、**『最初の駒』**だ。
彼は、素直で、正義感が強く、そして、僕の言葉を信じやすい。
僕は、彼を巧みに操り、この世界の物語を、僕自身の物語へと変えていく。
そして、もう一人、この街には、僕の物語に登場するべき**『演者』**がいる。
彼女の名は、ルナ・エルトリア。
転生者の中でも、特に高い治癒魔術の才能を持つ英雄だ。
彼女は、この街の孤児院で、子供たちの世話をしている。
そして、彼女は、この街で、ヒロトと出会うことになる。
これもまた、神々の「計画」に沿った、典型的な展開だ。
僕は、ルナ・エルトリアの遺伝子コードを抽出し、彼女の能力を、僕自身の能力として再構築する。
僕の魔力が、まるで生まれ変わったかのように変化していく。
数分後、僕は、アルベルトの剣術、カイルの身体能力、そしてルナの治癒魔術を併せ持つ、最強の存在となっていた。
僕は、この世界の物語の**“書き手”だった。
そして、この世界では、僕は“語り手”となり、この世界の英雄たちを“演者”**として操る。
僕の物語は、ここから、さらに加速していく。