表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/10

第7話「オークの森、そして『もう一人の転生者』」

冒険者ギルドで依頼を引き受けた僕は、街の東にある森へと向かった。

僕の脳内にあるデータは、この森の地形、オークの群れの行動パターン、そしてオーク・ジェネラルの弱点をすべて把握している。

この世界の物語では、英雄は、未知の危険に立ち向かい、知恵と勇気で勝利を掴む。だが、僕は違う。僕は、この世界の物語の**“書き手”であり、“語り手”**だ。この物語の筋書きは、すべて僕が知っている。


森に入ると、すぐにオークの気配がした。

オークは、この世界に転生したばかりの冒険者にとって、最初の壁となる存在だ。

だが、僕にとっては、ただの経験値でしかない。

僕は、アルベルトの剣術とカイルの身体能力を組み合わせ、オークを次々と倒していく。

僕の動きは、滑らかで無駄がない。オークたちは、僕の動きに対応できず、その首に剣が突き刺さる。


「……完璧だな」


僕は、再び確信した。

僕の能力**『遺伝子情報操作ヒューマンエディター』**は、転生者の能力を完全に模倣できる。

彼らの才能を、僕自身の才能として利用できる。


森の奥へと進んでいくと、僕は一人の男と出会った。

男は、僕と同じくらいの年齢で、僕と同じように剣を手にしていた。

だが、彼の動きは、僕の模倣したアルベルトの動きとは全く違う。

彼の剣は、力強く、重い一撃を放つ。まるで、岩を砕くような剣だ。


僕は、その男の顔を見て、脳内のデータベースと照合した。

《対象:ヒロト・タナカ (転生者)》

《能力:剣術Lv.7、剛力Lv.9》

《特性:英雄遺伝子と適合》


彼は、この世界の物語の**“もう一人の主人公”だ。

僕と同じように、この世界に転生させられた転生者。

だが、彼と僕の間には、決定的な違いがあった。

彼は、神々の「計画」に沿って転生させられた、“正当な転生者”。

僕は、神々に抹消処分を下された、“不当な転生者”**。


ヒロトは、僕に話しかけてきた。

「お前、強いな。俺も、この森のオークを討伐しに来たんだ」

「そうですか。私も、領主様から依頼を受けて、討伐に来ました」


僕は、イグニス・フレイアの顔と、記憶を模倣し、彼に接する。

ヒロトは、僕の顔を見て、驚いたような顔をした。

「お前、イグニスに似ているな……」

「よく言われます」


僕は、心の中で静かに笑った。

ヒロトは、僕がイグニス・フレイアに瓜二つであることに驚いている。

だが、彼は、僕がイグニス・フレイア本人だとは思っていない。

なぜなら、彼の脳内には、イグニス・フレイアという英雄の情報が、すでに刻み込まれているからだ。


僕は、ヒロトに提案した。

「もしよろしければ、二人で協力して、オーク・ジェネラルを討伐しませんか?」

「ああ、いいぜ!二人なら、心強いな」


ヒロトは、僕の提案を快く承諾した。

彼は、僕がイグニス・フレイアに似ているだけで、僕が誰なのか、僕が何者なのか、何も知らない。

だが、それでいい。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ