第6話「最初の任務、そして『計画』の兆候」
領主館の一室で、僕は自らの肉体と向き合っていた。
アルベルトの剣術と、カイルの身体能力。二人の英雄の遺伝子を僕自身の身体に融合させた結果、肉体はこれまでの少年とは似ても似つかない、洗練されたものになっていた。
「これで、この世界の物語の『演者』として、舞台に立つ準備は整った」
僕は、この世界の物語の**“書き手”だった。そして、この世界では、僕は“語り手”となり、この世界の英雄たちを“演者”**として操る。
その第一歩として、僕はまず、このリーベルの街で情報を集めることにした。
翌朝、僕は領主レイモンドの元を訪れた。
「領主様、何か私にできることはありませんか？」
「おお、レオン。いや、イグニス様。記憶を失っているとはいえ、そのお心遣い、感謝いたします」
レイモンドは、僕の顔を見て、相変わらず感嘆の声を上げる。
「実は、この街の東にある森で、最近オークの群れが出現しているのです。冒険者ギルドに討伐を依頼していますが、中々手こずっているようでして……」
オークの群れ。
僕の脳内にあるデータが、即座にその情報を分析する。
この世界の物語では、オークの群れは、転生者が最初に乗り越えるべき試練として登場することが多い。
そして、そのオークの群れを率いるのは、必ずと言っていいほど、オーク・ジェネラルという個体だ。
神々の「計画」に沿った、典型的な展開だ。
「その任務、私にお任せください。記憶を取り戻すためにも、体を動かしたいと思っていました」
「おお、真でございますか！イグニス様の力があれば、オークの群れなど敵ではないでしょう。感謝いたします！」
レイモンドは、僕の申し出に喜びを隠せない様子だった。
彼は、僕がイグニス・フレイアという伝説の英雄であると信じ込んでいる。
だからこそ、僕がこの任務を引き受けたことに、何の疑いも抱いていない。
僕は、領主館を後にし、街の冒険者ギルドへと向かった。
冒険者ギルドは、転生者たちが最初に訪れる場所だ。
そこには、神々が用意した、この世界の物語の**“物語の語り手”**たちがいる。
彼らは、転生者たちを導き、物語の筋書きを語り、彼らを英雄へと育てていく。
冒険者ギルドの受付で、僕は討伐依頼の詳細を確認した。
「オークの群れ、討伐依頼。報酬は金貨30枚……」
僕の脳内には、この世界の通貨の価値、そしてオークの生態に関するデータが刻み込まれている。
金貨30枚は、この世界の物語のプロローグに登場する報酬としては、破格の金額だ。
これもまた、神々の「計画」の一環だろう。
オーク・ジェネラルを討伐することで、英雄は多額の報酬を得て、次のステップへと進む。
僕は、受付の女性に微笑みかけた。
「この依頼、私が引き受けましょう」
「えっ……？あなた、まさか、イグニス様……？」
受付の女性は、僕の顔を見て、驚きを隠せない様子だった。
僕は、彼女の反応を見て、心の中で静かに笑った。
僕は、この世界の物語の**“書き手”だった。
そして、この世界では、僕は“語り手”となり、この世界の英雄たちを“演者”**として操る。
この任務は、僕にとって、物語の筋書きを操作するための、最初の舞台となるだろう。
