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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

あいしてる

作者: 群雲

閲覧いただきありがとうございます!


診断メーカー「あなたに書いて欲しい物語」さんのお題を元に書いた、おっさん夫夫の愛のお話です。

お題↓

「たった5文字が言えなかった」で始まり、「そっと笑いかけた」で終わる物語を書いて欲しいです。できれば7ツイート(980字程度)でお願いします。


 たった5文字が言えなかった。付き合おうとも、一緒にいようとも、自分からは言えないまま、君の優しさに甘えて今日まできた。

 一緒に暮らして何年になるんだったか。お互いもうすっかりジジイという名称が似合う年頃になった。

 若いときには、老後は2人で静かな生活になるのかと想像していたけれど、この歳になっても喧嘩はするしお喋りな君がよく笑うから、つられて腰が抜けるほど大笑いする日だってある。意外と騒々しい日々が続くもんだなぁと思っていた矢先、君が骨折をして入院する事になった。


「いやぁ参った。足が滑ったんだよ。俺も歳だよなぁ」

 あっけらかんと笑う君だけど、買い物から帰宅して階段下で蹲っている君を見つけた時には、心臓が止まるかと思ったのだ。じとっと睨むくらいは許して欲しい。


 入院した君を見舞うときは、痛みは良くなっているだろうかと心配しているくせに、いつものとおり素直になれずに大丈夫か、の一言も言えない自分。

 それでも君は僕の顔を見ると嬉しそうに笑い、いつものとおり喋り倒す。隣のおっさんがどうの、とか、最近読んだ本が、とか。そのいつもどおりがとても心地よくて安心する。

 だからつい、お前のメシが食いたい、という君に応えてやらねばならないと思ったりする。

「まぁ、次に来る時に副菜を持ってきてやらんこともない。」

「お!アレがいい。きんぴら。蓮根のやつ」

「ハイハイ」

 帰宅すると、家がほんのり寒い。テレビを見ても本を読んでも、感想を言う相手がその場にいないとむなしさが募る。今までの生活が君で溢れていたんだと、実感する。寂しくなったらいつでも連絡していいんだぞ、とニヤニヤした君の顔を思い出してスマホを手に取るけれど、なんと送っていいのやら、結局画面と睨みっこして終わってしまう。

(…きんぴら作るか。)


 今日も今日とて君の見舞い。きんぴらも持参したが、君は珍しく静かに眠っていた。家での寝相の悪さはどこへやらだ。思わずくすりと笑ってしまう。ベッド横の丸椅子に腰掛けると、投げ出された手に目がいく。歳をとってシワシワの、ジジイの手だ。でも、この世の手の中でいちばん愛おしい、君の手。起こさないようにそっと握る。


 あいしてる


 だから早くよくなって帰ってきて。願いを込めて、一世一代の告白をする。

 君はふと目を開いて「お前、起きてる時に言えよ」と声が聞こえてきそうな顔で、僕にそっと笑いかけた。


お口にあいましたでしょうか。

気に入っていただけたら、幸いです。


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