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異世界転移した医師、成り上がりつつポーション革命を起こします  作者: アルゼン枕子
三章 陰謀疫病編 ──黒幕の野望と民の救い──
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Episode 033: 特効薬開発とマックス協力

早朝、グライフブルク診療所の研究室でケンタとアウレオルスが新薬開発計画を検討していた。


「抗生物質は病原体を直接攻撃する方法だが、異世界では材料調達が困難だ」


前日の調査結果を基に、ケンタは開発方針を決定した。


「むしろ免疫システムを強化して、体の自然な防御力を活用する方が現実的だ。これなら、従来のポーションを改良することでできると思う。」


「白血球やマクロファージの働きを活性化すれば、細菌感染に対抗できるはず」


「アウレオルス、簡単に説明すると」ケンタは羊皮紙に図を描き始めた。「体には侵入者と戦う兵士がいる。白血球は前線の兵士で、マクロファージは大食いの掃除屋だ。彼らが細菌を食べて分解してくれる」


アウレオルスの目が輝いた。「なるほど!つまり、体内の防衛部隊を強化すればよいのですね」


「その通り!従来のポーションの細胞再生促進作用を免疫細胞活性化に転用したい」


アウレオルスは天才的な理解力で即座に応用を考え始めた。


「理論的には可能です。しかし、通常の材料では不十分でしょう」


彼は錬金術の知識と今学んだ免疫の仕組みを組み合わせて材料リストを作成し始めた。


「白血球の活性化にはシルバーモス(銀の苔)が有効でしょう。銀には抗菌作用がありますから。マクロファージの貪食能力向上にはエターナルハーブを従来の3倍量。クリスタルウォーター(結晶水)で純度保持、ドラゴンスケール(竜鱗)で薬効の安定化を図れば...」


「素晴らしい!」


ケンタは感嘆した。簡単な説明から、ここまで的確な材料選定ができるとは。


「ただ、これらの材料は非常に高価で入手困難です。それに...」


アウレオルスの表情が険しくなった。


「最も重要なのは、これらの材料は採取から6時間以内に下処理を開始しないと薬効が失われることです」


「6時間?」ケンタは驚いた。


「はい。特にシルバーモスは2時間で効果が半減し、クリスタルウォーターは4時間で不純物が析出します。現地での下処理が必須です」


「なるほど、つまり採取現場で誰かが処理しなければならないのか。なら、アウレオルス、きみに、、、」 


「はい、私がケンタ殿に下処理の技術をお教えしますので、現地で対応していただく必要があります」


アウレオウルスは即座に逃げ道をつくる。


<こ、こいつ、、、>


<まあ、しょうがないか。弟子に危険な目に合わせるわけにはいかないよな。みるからに運動が不得手そうなアウレオウルスだし、ここは俺がやるしかないか。>


と、運動オンチな自覚のないケンタは自分を納得させた。世の中は自覚がないおかげで平和に回ることもある。


「だけど、流石に俺でもドラゴンを相手にするのは手強いな。。」


課題を認識した時、フローラが提案した。


「マックスさんに相談してみては?信頼できる方ですし、健太様との相性はよいと思います。」


同日夜、冒険者ギルドの酒場でケンタはマックスに会った。いつもの定位置で酒を飲むマックスに、疫病の深刻さと特効薬開発の重要性を説明した。


「シルバーモスは毒沼地帯にしか生えない」


「ドラゴンスケールは竜の巣の近くで拾えるが、危険だ」


「クリスタルウォーターは魔物が守る泉にある」


聞けば聞くほど難易度の高さがわかる。


「例の病気に効く薬を作りたいんだ」


ケンタは材料リストを見ながら説明していたが、羊皮紙を逆さまに持っていることに気づいていなかった。


「シルバーモスは...えっと...」


「ケンタ、それ逆さまだぞ」マックスが苦笑いしながら指摘した。


「あ、ほんとだ。ありがとう」


(書類の向き、いつも間違えるな...)


「でも、問題は時間制限なんだ。採取から6時間以内に現地で下処理をしないと効果が失われる」


ケンタは真剣な表情で説明した。


「アウレオルスに下処理の技術を教えてもらったが、俺が現地で処理する必要がある」


「なるほど、だから一緒に行くのか」マックスは納得した。


「それに、マックスとなら安心だ。君は信頼できる仲間だから」


マックスの表情が和らいだ。


「ケンタがそう言うなら、こっちも本気で守ってやる。疫病を止めるためだ。俺が先導する。危険は俺が引き受ける」


マックスは護衛を引き受けた。


「ケンタは俺の大切な友人だ」


「最近は護衛ばかりだったが、久々の本格的な冒険だ」


「この採取が成功すれば、多くの命が救われる」


マックスの心境は使命感に満ちていた。




翌日早朝から、グライフブルク郊外の危険地帯で材料採取が始まった。


毒沼地帯でのシルバーモス採取では、マックスが毒霧を警戒しながら先導した。


「おい、これか?」


マックスが銀色に光る苔を指差す。


「そうだ!」


ケンタは慎重に採取し、すぐにアウレオルスから教わった特殊な保存液に浸した。


「2時間以内、2時間以内」


つぶやきながら手際よく下処理を行うケンタを見て、マックスは感心した。




「息を止めて、俺の後をついて来い」


沼に潜む魔物を剣で撃退するマックス。


魔物の泉でクリスタルウォーター確保では、水精霊が守る泉への接近が必要だった。


「今だ!水を汲め!」


マックスが囮となって魔物を引きつけた。


「よし、とった!」


「こいつは4時間以内だからミスしないように慎重に。。」


ケンタは採取したクリスタルウォーターを特殊な容器に保存し、現地で濾過処理を行った。


「本当に手際がいいな」


マックスが感心する。




竜の巣近くでドラゴンスケール探索は最も危険だった。


「静かに...竜が近くにいる」


若竜の気配を感じながらの危険な探索。落ちていた鱗を慎重に回収した。


危機一髪、若竜に見つかりかけたが、マックスの機転で無事に撤退できた。


長年の冒険者経験による的確な判断で、最小限の戦闘で最大の成果を得た。


夕方、疲労困憊だが全員無傷で診療所に到着した。




「全ての材料を無事確保できました」


「久々に冒険者の血が騒いだぜ」


危険だった場面を振り返りながら、マックスは満足そうだった。


「マックスがいなければ不可能だった」


ケンタとアウレオルスは心から感謝し、謝礼をはずんだ。


そして、新鮮な材料での調合が開始された。ケンタの現代医学理論を基にした配合比率の調整に、フローラが怪我の手当てと材料の準備で支援した。


調合中、診療所に緊急の来訪者があった。


「ケンタ先生、大変です!」


息を切らしながら駆け込んできたのは、治癒術師ギルドの若い職員だった。


「ハイマン上級幹部の奥様とお嬢様が高熱で倒れられました!」


一同に衝撃が走った。ついに感染が治癒術師ギルドの最高幹部の家族にまで及んだのだ。


「上層部でも感染が...」ケンタは事態の深刻さを理解した。


その時、別の来訪者があった。


「先生、お忙しい中すみません」


現れたのは、以前から診療所に通っていた中年の職人だった。エドワードという名前で、家族を養うために必死に働いている誠実な男性だ。


「私、例の病気にかかってしまったようです。まだ軽い症状ですが...」


エドワードは申し訳なさそうに続けた。


「もしよろしければ、新しい薬の実験台にしていただけませんか?家族のためにも、街の人たちのためにも、少しでも役に立ちたいんです」


ケンタは彼の真摯な申し出に心を動かされた。


「エドワード、ありがとう。でも危険性もあるから、十分に説明させてもらう」


インフォームドコンセントを丁寧に行った後、エドワードが最初の被検体となることが決まった。


「検鏡では貪食しているマクロファージは増加しているようだが、まだ安定しない。もう少し調整が必要だ」


ケンタは顕微鏡でエドワードの血液サンプルを観察しながら、配合比率を慎重に調整した。


調合を続けながら、ケンタは額の汗を拭った。


「免疫細胞の活性化は...うまくいっているようだが...」


アウレオルスが横から魔力測定器を覗き込む。


「魔力の流れが不安定ですね。細胞再生とは違う制御が必要なようです」


「やはりそうか。従来のポーションとは根本的に違うアプローチが必要だ」


二人は試行錯誤を重ねながら、少しずつ最適な配合に近づいていった。


「エドワード、体調に変化はないか?」


「はい、むしろ体が軽くなったような気がします」


初回試作での効果は上々のようだった。


「ケンタ先生!」


治癒術師ギルドの職員が再び診療所に駆け込んできた。


「ハイマン上級幹部が、奥様とお嬢様を診察してほしいと...街中の治癒術師が治療を試みましたが、魔法では症状が改善しないのです」


「ついに治癒術師ギルドも、現実を認めざるを得なくなったということですね」


アウレオルスが冷静に分析した。上層部の危機が、ギルド内の意識を変え始めていた。




同日夜、診療所の居住部分で4人が夕食を共にした。フローラが用意した感謝の食事で労をねぎらった。


「最初はただの護衛依頼だと思ってた」


ほろ酔いのマックスが語る。


「でも今は違う。本当に大切な仲間を守る仕事だ。この疫病を止めるためなら、どんな危険でも引き受ける」


マックスの本音に、ケンタは感謝を込めて答えた。


「マックス、君がいなければ何もできなかった」


「今日の試作は成功と言えるが、まだ改良が必要だ」


ケンタが食事をしながら今後の計画を話し始めた。


「量産するには材料の安定供給も課題だし、何より本格的な臨床試験が必要になる」


「材料なら俺に任せろ」マックスが胸を叩いた。


「臨床試験の準備は私が手伝います」フローラも前向きだった。


「必要な材料があれば、いつでも声をかけてくれ」


マックスの継続支援の約束に、みんなは心強さを感じた。


「でも、本格的な臨床試験には協力者が必要だな」


次の段階への課題も認識されていた。




マックスの友情が深化し、チームとしての結束も確認された。護衛対象から守るべき大切な仲間へ、仕事としての冒険から使命感を持った行動へ。「報酬のため」から「みんなの命のために」変わったマックスの心境が、新たな力となっていた。


免疫強化ポーションの開発は次の段階へ進み、危険地帯での材料採取を可能にしたマックスの護衛力が、チームの安全を守る頼れる存在となった。


臨床試験の準備に向けて、さらなる協力者確保の課題が待っていた。

どうも、ケンタです。

今回は、免疫強化ポーションの開発に取り組みました。抗生物質の代わりに免疫システムを強化するという発想は、異世界の制約を考えると最適解だと思います。

マックスとの材料採取は、本当に命がけでした。毒沼地帯、魔物の泉、竜の巣...どれも普通なら近づきたくない場所ばかり。でも、マックスがいてくれたから無事に採取できました。

「ケンタは俺の大切な友人だ」って言ってくれた時は、正直ウルッときました。この世界に来てから、本当に良い仲間に恵まれています。

免疫強化ポーションの初回試作は、まだ安定していませんが、確実に前進しています。次回は、いよいよ臨床試験に挑戦です。

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