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異世界転移した医師、成り上がりつつポーション革命を起こします  作者: アルゼン枕子
三章 陰謀疫病編 ──黒幕の野望と民の救い──
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Episode 031: 汚染源の仮説とライバル心

早朝、グライフブルク診療所の研究室でケンタとアウレオルスが昨日までの調査データを整理していた。


「これは...下層街の特定地域に集中している」


ケンタは地図上に感染者の分布をプロットしながら、パターンを見つけていた。


「特定の水源を日常利用している層が集中的に罹患している」


社会的格差との関連も明らかになってきた。アウレオルスの異世界手法での分析結果と照合すると、共通する水源の存在が浮かび上がってくる。


「この井戸が初期感染源で、生活レベルの格差が拡大を加速させたんだ」


ケンタの推理は的確だった。現地調査の必要性を確認している時、来訪者があった。


「疫病調査に治癒術師ギルドとして協力したい」


カインツが正式に協力を申し出てきた。表向きの理由は「都市の安全のため」だが、本当の理由は違った。


<今度こそテレジア様に私の実力を見てもらう>


<ミッテルフェルト殿だけに手柄を独占させるわけにはいかない>


<でも、疫病は本当に解決しなければ...>


カインツの心境は複雑だった。善意と競争心が混在している。


「私が現地調査を主導しましょう。私の治癒魔法があれば、より詳細な分析が可能です」


微妙な対抗意識を表に出しながら、カインツは提案した。


ケンタは水源汚染仮説を共有し、現地調査の重要性を説明した。


「危険物質の可能性があるので、決められた手順で水を調べよう」


ケンタは調査用の容器を取り出したが、蓋を開けるのに手こずっていた。


「あれ?この蓋、どうやって開けるんだ?」


マックスが苦笑いしながら手伝う。


「ケンタ、それ逆回しだぞ」


現実世界から持ってきた道具の使い方を異世界人に教えてもらうケンタであった。




昼、3人は問題の井戸周辺地域に向かった。


「確かに...」


下層街の古い井戸を前に、ケンタは現代医学的調査を開始した。水質の目視確認で濁りや異臭を確認し、周辺住民への聞き取りで水依存度や他の水源アクセスを調査する。


「貧困層は他に選択肢がない」


感染パターンとの照合で、社会的要因も明確になった。


「確かに何か異常な気配がある」


カインツは治癒魔法による水の「気」の分析を行い、得意気に結果を報告した。


「おお、さすがカインツ!」


ケンタは素直に感心した。


「魔法による検知能力は現代医学にはない優れた手段だ」


カインツは嬉しそうに胸を張ったが、内心では


<なぜケンタ殿に評価されると、こんなにやる気が出るんだ?>


と困惑していた。


(急に張り切ってるな、カインツ)


ケンタは相変わらず鈍感だった。


アウレオルスも錬金術的分析で採取した水の成分解析を行い、未知の病原体の存在を確認した。


「3つのアプローチが全て汚染を裏付けている」


調査結果の統合により、仮説の正しさが証明された。


午後、調査現場にテレジアが進捗確認のため来訪した。


「調査はいかがですか?」


3人から調査結果の報告を受けたテレジアの反応に、カインツは期待を込めていた。


「今度こそテレジア様に認めてもらえる」


しかし、テレジアの反応は期待とは異なっていた。


「さすがケンタ殿ですね。カインツ殿もご協力感謝します。」


ケンタの分析手法に強い関心を示すテレジア。カインツの協力にも感謝の言葉はあったが、明らかにケンタへの注目度が高い。


「テレジア様に褒められたはずなのに、なぜ満たされない?」


期待していた反応が得られない落胆に、カインツは混乱を深めた。同じ医療従事者として、彼の実力を認めながらも負けたくない気持ちが強まった。


「これは悔しさだ。医師として、彼に負けたくないだけだ」


カインツは自分の対抗心を素直に認めた。テレジアの視線がケンタに向けられていることに気付くと、内心の焦りと対抗心が増大した。




汚染源の特定と除去方法の検討という今後の方針が決定された後、カインツは治癒術師ギルド本部の自室で一人になった。


「私には何が足りないのか?」


今日の出来事を振り返る。調査では確実に貢献できた。しかし、テレジア様の関心はケンタに向いている。


「次の段階では私が主導権を握る」


「汚染源の除去は治癒魔法の専門分野だ」


「今度こそテレジア様に認めてもらう」


カインツは新たな決意を固めた。ケンタの医学知識と分析力は確かに優れている。それは素直に認めざるを得ない。だが、同時に湧き上がる感情があった。ケンタ殿に負けたくない。テレジア様に、いや、皆に自分の価値を認めてもらいたい。そして何より、この疫病は必ず解決しなければならない。都市の人々を救うという使命感が、個人的な競争心と交じり合い、より強い原動力となっていく。


夜、カインツは自室の机に向かい、汚染除去の魔法陣を書き始めた。


「なるほど、水の流れに沿って魔力を...いや、違う」


何度も書き直す羊皮紙。インクが指に付いているのにも気づかない。


「ケンタ殿なら、きっと別のアプローチを考えるだろう」


ペンが止まった。また彼のことを考えている自分に気づく。


「くそっ、集中しろ。これは競争じゃない、協力だ」


独り言を言いながら、カインツは新しい羊皮紙を広げた。今度こそ完璧な除去方法を編み出してみせる。




同じ頃、ケンタは診療所で荷物の準備をしていた。


「えーっと、現実世界に持っていく物は...」


手元のリストを確認しながら、必要な物を一つずつバッグに詰めていく。


「医学書、検体採取道具、それから...」


フローラが手伝いながら、効率よく準備を進めた。


「健太様、こちらの薬品サンプルもお持ちになりますか?」


「ああ、それも必要だな。ありがとう、フローラ」


明日の準備を進めながら、ケンタは窓の外を見た。普段なら夜でも明るい商業区が、今夜は暗い。


「感染拡大の影響で、夜間営業をやめる店が増えているんですね」


フローラが心配そうに呟いた。


「ああ、テレジア様の報告通りだ。中間層にも感染が広がって、商人たちが営業を自粛し始めている」


街の経済活動に影響が出始めていることを、ケンタは実感していた。カインツが頑張ってくれているから、自分も全力を尽くさなければ。感染拡大を止めるために、一刻も早く解決策を見つける必要がある。

どうも、ケンタです。

今回は、ついに感染源が井戸水だと特定できました。疫学調査の成果ですね。現代医学の知識が役に立って良かったです。

カインツの複雑な心境は、正直よく分からないところもありますが、彼なりに頑張ってくれているのは確かです。テレジア様への想い? うーん、恋愛関係は複雑で難しいですね。

でも、彼の「負けたくない」という気持ちが良い方向に働いてくれそうです。競争相手がいると、自分もより頑張れる気がします。

次回は、いよいよ現実世界への買い出しです。2時間制限の中で、どれだけ有用な情報と物資を集められるか、勝負です!

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