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異世界転移した医師、成り上がりつつポーション革命を起こします  作者: アルゼン枕子
二章 ギルド抗争編 ──安価な奇跡を巡る戦い──
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エピソード022:診療所の拡大計画と試作第二号

先日、テレジア殿の巡察に随行していた従士が落馬し、右足を骨折した。緊急招集を受けた俺は、その場で骨を整復しながら止血と固定を施し、仕上げにポーションで回復を促した。術後の痛みもほとんどなかったらしく、従士は社交の席で「診療所では魔法に頼らず完治した」と自慢げに語ったという。その噂は貴族の従者から武具職人へ、さらには兵舎へと瞬く間に伝わり、剣稽古や荷役で負傷した兵士たちが診療所へ押し寄せている。おかげで俺たちは、文字通り息をつく暇もない。



「ケンタ様、もう寝台が足りません! 廊下で待っていただいている方も……」


フローラが申し訳なさそうに報告する通り、待合室は患者でごった返し、簡易的なベッドもすべて埋まっている。


「こりゃ、本格的に拡張を考えないといけませんぜ」


帳簿を眺めていたオットーが、にやりと笑う。彼の商人としての勘が、この状況を好機と捉えているのが見て取れた。


「ええ、オットーさんの言う通りです。このままじゃ、せっかく来てくれた患者さんを断ることになりますよ。それはケンタさんの本意じゃないでしょう?」


ココも腕を組み、鋭い視線で診療所全体を見渡しながら同意する。彼女の頭の中では、すでに具体的な事業計画が組み立てられているのかもしれない。


「だが、拡張するとなると、場所も資金も必要になる。今の俺たちにそこまでの余裕は……」


俺が懸念を口にすると、ココは「甘いわね」とばかりに首を横に振った。


「ケンタさん。あなたの『医療』は、もはや単なる慈善事業じゃないんです。立派な『事業』ですよ。そして、事業を拡大させるのに、自己資金だけでやろうなんて、それこそ素人考えです」


彼女は一枚の羊皮紙を取り出すと、テーブルに広げた。そこには、診療所の収支報告と、それを基にした今後の事業計画、そして投資家への提案書までがまとめられていた。


「……いつの間にこんなものを」

「あなたが薬草と格闘している間にですよ。オットーさんと組んで、少しばかり市場調査をさせてもらいました。結論から言うと、あなたの診療所には『投資』する価値がある。そう判断する富裕層や貴族は、このグライフブルクにだっているはずです」


ココの計画は、診療所を商業ギルドに登記し、出資を募るというものだった。それは俺の想像を遥かに超えるスケールだったが、確かに理にかなっている。


「なるほど……。その手があったか」

「でしょう? 具体的な交渉は、私とオットーさんに任せてください。あなたは、目の前の患者と……そう、例のポーション開発に集中してください」


頼もしい仲間たちの言葉に、俺は深く頷いた。


診療所の拡張計画が動き出す一方、俺とアウレオルスは、廉価版ポーションの試作第二号に取り掛かっていた。


「前回の失敗は、薬草の配合比率と、魔力注入時の安定性でした。特に、複数の薬効成分を一つの溶媒で安定させるのが、これほど難しいとは……」


アウレオルスは、山のような資料を前に、うんざりしたようにため息をつく。天才錬金術師である彼ですら、この世界の常識から外れた俺の要求には手を焼いているようだ。


そこへ、フローラとココが、それぞれの調査結果をまとめた資料を手にやってきた。


「ケンタ様、アウレオルス様。村の薬草師たちに古くから伝わる配合の記録を写してきました。もしかしたら、何かヒントがあるかもしれません」

「こっちは、市場に出回っている低品質なポーションの成分分析です。どうして『安かろう悪かろう』なのか、その理由を探るのも一つの手でしょう?」


フローラの地道な聞き取り調査と、ココの商人ならではの視点。二人の協力は、技術的な壁にぶつかっていた俺たちにとって、まさに光明だった。


「……なるほど。この薬草は、こちらの薬草の毒性を中和する効果があったのか」

「ふむ、安物ポーションは、安定化溶媒の代わりにただの水を使っている……それでは有効成分がすぐに分解してしまうのも当然ですな。だが、コストを度外視すれば、この触媒の使い方は参考にできるやもしれません」


アウレオルスが、子供のようにはしゃぎながら分析を進める。その隣で、俺も現代の薬学知識と照らし合わせながら、新たな配合の可能性を探る。


「よし、フローラ、ココ、ありがとう。二人のおかげで、次の道筋が見えてきた。アウレオルス殿、試作第二号、始めるぞ!」

「ええ、ええ! 今度こそ、あの忌々しい治癒術師ギルドの連中の鼻を明かしてやりますぞ!」


俺たちは顔を見合わせ、不敵に笑った。診療所の未来も、ポーション開発の未来も、まだ不確定要素だらけだ。だが、信頼できる仲間たちと共に、一歩ずつ着実に前進している。その確かな手応えが、俺の心を奮い立たせていた。

ケンタです。

診療所が手狭になるなんて、うれしい悲鳴とはこのことですね。ココとオットーのコンビは本当に頼りになります。まさか投資を募るなんて、考えもしませんでした。

そして、ポーション開発も、フローラとココの協力で新たな一歩を踏み出せそうです。アウレオルスのやつ、なんだかんだ楽しそうなんだよな。

さて、試作第二号は成功するのか? 次回をお楽しみに!

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