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異世界転移した医師、成り上がりつつポーション革命を起こします  作者: アルゼン枕子
二章 ギルド抗争編 ──安価な奇跡を巡る戦い──
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エピソード021:テレジアとの偶然の再会

都市の東地区は、西地区の華やかさとは対照的に、古びた建物がひしめき合い、人々の活気もどこか沈んでいた。ポーション開発に必要な珍しい薬草を探し終えた俺は、診療所への帰路、小さな広場から立ち上る湯気と喧騒に足を止めた。


人だかりの中心にいたのは、意外な人物だった。辺境伯の娘、テレジアだ。普段の華やかなドレスではなく、動きやすい質素なローブをまとい、額に汗を浮かべながら、大きな鍋をかき混ぜている。炊き出しだった。


「はい、どうぞ。熱いから気をつけて」


彼女が差し出す木の椀を、汚れた手の男がひったくるように奪っていく。感謝の言葉はない。周りからも「早くしろ!」「こっちが先だ!」と怒声が飛ぶ。誰もが我先にと椀を突き出し、中には割り込もうとして小競り合いを始める者までいる。まるで、飢えた獣の群れのようだった。


だが、そんな状況にあっても、テレジアの表情は穏やかだった。文句一つ言わず、一人ひとりの顔を見て、にこやかに、そして手際よくスープを配り続けている。その姿は、まるで聖女のようにも見えたが、それ以上に、強い意志を感じさせた。


しばらくその光景を眺めていた俺は、意を決して彼女に近づいた。


「テレジア殿」


俺の声に、テレジアは驚いたように顔を上げた。


「ミッテルフェルト殿! どうしてこのような場所に?」


「薬草の買い出しの帰りです。それより、これは……」


俺が人々のほうに目をやると、彼女は少し困ったように、しかし誇らしげに微笑んだ。


「見ての通り、炊き出しですわ。私にできることは、これくらいしかありませんから」


「ですが、彼らは……」


感謝のかけらも見せない人々の態度に、俺は思わず言葉を濁す。貴族の令嬢が、なぜここまでできるのか。その問いが顔に出ていたのだろう。テレジアは、鍋の底をさらいながら、静かに言った。


その時だった。群衆の中から「きゃあ!」という悲鳴と、「誰か! うちの子が!」という母親の叫び声が上がった。人垣をかき分けると、そこには顔面蒼白でぐったりとした幼い少年が倒れていた。


「どいてください!」


俺はすぐさま少年に駆け寄り、脈拍と呼吸、意識レベルを確認する。橈骨動脈は、、、弱いが、ちゃんとある。レベルは2桁。聴診器で心音、呼吸音を確認し、触診。熱中症ないし低血糖発作と仮診断した。


「大丈夫、俺は医者だ。すぐに楽にしてやる」


俺は持っていた水筒を少年の口に含ませ、ブドウ糖キャンディーを与えた。テレジアが心配そうに見守る中、俺は冷静に応急処置を施した。その姿を見ていたテレジアの瞳に、驚きと、そして深い尊敬の色が浮かぶのが分かった。


「……すごい。なんて迅速で的確な処置なの」


しばらくして、少年の意識がもどる。


「ママ」


母親が泣きながら抱きしめる。俺は母親にいくつか注意事項を伝えると、立ち上がってテレジアに向き直った。


「貴族も庶民も関係ない。目の前にある命は、すべて平等に救われるべきだ。俺はそう信じています」


俺の言葉に、テレジアははっとしたように目を見開き、そして、これ以上ないほど優しい微笑みを浮かべた。


「……ケンタ殿。あなたの、お名前ですわよね?」


俺はこくりと頷く。


「ありがとうございます、ケンタ殿。あなたの診療所が、この都市でどれほど多くの人々を救っているか、私も耳にしております。あなたの理念には、私も深く共感いたします」


テレジアの言葉は、俺の心に温かい光を灯した。ギルドからの妨害や、ポーション開発の難航で、心が折れそうになることもあったが、彼女の言葉が俺を奮い立たせてくれた。


「ところで、ケンタ殿は、なぜこのような薬草を?」


テレジアが、俺が手に持っていた薬草に目を向けた。


「ええ、これは安価なポーションの開発に必要でして。多くの人に医療を届けたいと思っているのです」


俺がそう説明すると、テレジアの瞳が輝いた。


「安価なポーションですか! それは素晴らしいですわ! この地区の子供たちも、きっと喜ぶでしょう」


彼女は心からそう言っているようだった。その純粋な反応に、俺は改めてこのポーションを完成させる決意を固めた。


薬草店を出て、テレジアと共に街を歩く。彼女は、貧しい地区の現状や、子供たちの抱える問題について、熱心に語ってくれた。その言葉の端々から、彼女の深い愛情と、この都市への想いが伝わってくる。


「テレジア殿、もしよかったら、今度また診療所にも遊びに来てください。フローラも、きっと喜びます」


「ええ、ぜひ! 私も、ケンタ殿の診療所がどのように運営されているのか、とても興味がありますわ」


別れ際、テレジアは深々と頭を下げ、感謝の言葉を述べた。その背中を見送りながら、俺は新たな決意を胸に刻んだ。


この都市には、テレジアのように、人々のために尽くす心を持った人間がいる。そして、俺もまた、この世界で医師として、できる限りのことをしたい。廉価版ポーションの完成は、その第一歩なのだ。


夕日が都市の建物を赤く染め上げ、人々の影が長く伸びていく。俺は、ポケットの中の薬草を握りしめ、診療所へと足を向けた。

皆さん、こんにちは!ケンタです。

今回はテレジア殿との偶然の再会でした。彼女の慈善活動には本当に頭が下がります。一人の医師として、そして一人の人間として、彼女の信念に触れ、俺ももっと頑張らないと、と改めて思いました。

廉価版ポーションの開発も、彼女のためにも、必ず成功させます!

次回は、診療所の拡大計画と、試作第二号の行方です。お楽しみに!

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