真夜中の電話
真夜中に突然携帯がリリリン、リリリンと鳴った。
僕は驚いて目を覚ましたが、すぐに間違いだと思った。
なぜならこんな時間に連絡をよこす友人などいやしないし、だいち僕に友人などいない。
僕は五度目のベルが鳴ったら、携帯を取ろうと待ち構えていたが、ベルはリリリン、リリリン、リリリンと三度鳴ったところで切れた。
僕は、少しの寂しさを感じながら、ベッドから起き上がり、電気を点けるとトイレに向かった。
用を足し終えて、トイレから出た僕は何時もの虚しさに襲われ、そこで寝ることをやめてしまった。
枕もとの時計を見ると、まだ夜中の一時を少し過ぎたところ。
僕はタバコを手に取ると、禁煙中であることも忘れ、タバコの箱から残り一本しかないタバコを取り出し、吸い始めた。
誰も注意してくれる人間などいない。
僕は一人暮らし。
ベッドに横になったまま、タバコを吸いながら、ベットの端の小さなランプを点けた。
タバコの煙がユラリ、ユラリと舞い上がるのを見つめながら、枕もとに置いていた先日からの読みかけの小説をまた読み始めた。
しかし3分ほど読んだところで寝てしまっていた。
それはいつものよくある出来事だった。
次の朝、少し気怠さを感じながら、ベッドから起き上がると、いつも通り食事をした。
食事と言っても、パン一枚とコップ一杯のミルクだった。
それ以上食べる気がしなかった。
というよりそれ以上食べることが出来なかった。
体調的理由からではなかった。
体は食べることを要求していた。
それは経済的理由から。
だからといって物を盗んできてまで食べる気もしなかった。
仕方なくパン一枚とコップ一杯の食事を終えた。
そして僕は散歩に出かけた。
何時もの通り帽子をかぶり、俯いたまま僕は散歩に出かけていた。
天気の冴えわたった気持ちのいい冬の空だった。
あの子の笑顔の様な青空だった。
おわり・・・・・。