22/24
呼吸の奥にいたひと
風が吹いても
名を呼ぶ声は もう聞こえない
でも
波打ち際に立つとき
光の縁に触れるとき
かすかに あなたの気配が 肺の奥でほどけていく
あの時 言えなかった言葉は
もう 声ではなく
私の歩き方に滲んでしまった
あなたが 笑った日の午後
私が 黙っていた夕暮れ
すべての沈黙が
今でも 呼吸の隙間に宿っている
過ぎ去ったものに
指先は届かない
それでも私は
今も あなたのいない季節に
一輪の 余白を差し出している
この詩が届かなくても
あなたが あなたで在り続ける世界で
今日という日が 少しでも優しくあることを
ひとつ 風に願っている




