チワワが2匹いる
怪しいけれど、素通りする訳にはいかない。
多分何かの引き金になるやつだ、これ。
私は二人を振り返る。
「私が中に入って調べるので、アルは廊下の警戒、サーフは私に何かあったら魔法で援護して下さい」
「ああ」
「分かりました」
「良いと言うまで部屋には入らないで」
とりあえず罠らしきものはない。
ちょっと横長の部屋だが、綺麗なものだ。
迷宮内なのに、足元の石畳には植物らしい緑も見える。
苔かな?
床を調べる序でに、石畳の縁に短刀を当てて、緑を少し削り取る。
匂いを嗅いでみたが、植物独特の青臭い匂いだ。
女神像の周囲には、幾つかの白い花が咲いている。
見たことのない花だ。
うーん?
ちょっとこの部屋はおかしいな?
北と南はさておき、東西の迷宮は再配置が基礎にある。
だから、当然、道具も罠も宝箱も魔物も人が踏み入ったらリセットされて、再配置するのだ。
だから成長する植物があるというのが、おかしい。
時間の経過があるという事だからだ。
まあいっか。
悩んでも分からないし。
女神像を調べても何も出てこない。
罠も無い。
とりあえず周囲に咲いた白い花は根っこごと引き抜いてみる。
うん、消えない。
薬草袋に、採取した花を保管していく。
これはおうちで育ててみよう。
後は、何をすればいいのか……。
罠も無い、何も見つからない。
でもここに女神像がある意味が必ずある。
一応、二人にも意見を聞いてみよう。
「……という訳なんですけど、どう思います?」
「うーむ……女神像……」
廊下を警戒しつつ、王子が女神像を振り返って見つめる。
「我が国には女神信仰は無かったからな。もしかしたらこの地の神なのかも知れん」
王子の言葉にメガネも頷く。
「私も隣国の古き神についてまでは知らないです。申し訳ありません。これは、情報収集が必要ですね」
メガネはメガネをくいっとした。
「祈りの言葉でも知っていれば良かったのでしょうが」
「……祈りの言葉、祈りの言葉は私も知らないですね。……でも、もしかしたら」
祈りとは神に捧げるものだ。
それは古今東西に通じる、信仰の要だろう。
祈りの言葉は変わっても、変わらないものがある。
それは。
私は女神像の前で膝を付いて、胸の前で両手を握って女神を見上げる。
人は祈るとき、像の前で跪く。
信仰心を示す為に。
見上げていた女神の石像、私からみて右の目に異変があった。
すうっと一筋の涙が流れる。
そして顎の辺りでその雫がぽとりと落ちて、床にコツン、と何かが落ちた。
銀色の鍵だ。
それを手に取る。
手の上に載せても消えたりはしない。
立ち上がって振り向くと、王子とメガネが口を開けて私と女神像を見比べている。
「ななっ、なんっ……ミア……君は聖女だったのか!!」
「あ、あ……可愛くて美しいだけじゃなく、その清廉さで奇跡まで起こせるなんて……何という……」
は?
え?
違うでしょ。
これは単なる仕掛けです。
二人は涙さえ浮かべてふるふるわなわな震えている。
チワワかな??
どうする~ア~イ~〇~ル~♪
(別のサイトで頂いた感想)




