戦闘スタイルを考える
昼食を食べ終えて、私達は武器屋に向かう。
ノーツも時間があるから、と一緒に来ていた。
二人の為の短刀と私の投擲用の短刀も追加。
身体に身に着ける為のベルト等も買う。
ついでに、どれでも10銀からメガネにも剣を選ばせた。
「え……私は魔術師ですが……」
「相手はそんなの考慮してくれないので」
くいっと顎で剣の詰まった樽を指し示せば、メガネは大人しく選び始めた。
「ミアちゃんはいいお客さんだなぁ」
「そうでしょう?今日もオマケしてくださいね!」
メガネに対して塩対応だが、オマケしてくれるおじさんには笑顔です。
おじさんもにこにこしている。
「いいよいいよ。あ、そうだミアちゃんにお勧めの品があるよ」
ほくほく顔でおじさんは、奥から箱入りの短剣と短刀のセットを持ってきた。
両方とも刀身が黒い。
何これカッコイイ。
「これは黒鋼と言ってね、エルド地方で取れる黒い鉱石から作られた武器なんだ。通常の鉄よりも丈夫で、錆び難い特性があってね」
「へぇ…凄いですね」
幾らなんだろう?
高いのかな?
高いよね。
「本当は金貨1枚だが、ミアちゃんだから半額に……しちゃう!」
「えっ?それ逆に儲け大丈夫?」
後ろでノーツがぶはっと噴出した。
「何ですかノーツさん?」
「いや、店の心配するのか、と思ってな」
「そりゃしますよ。良い品売ってくれるおじさんですもん。ねー?」
おじさんに笑いかければ、おじさんは目頭を揉んでいる。
「天使だなぁミアちゃんは、天使だ!」
「もー大袈裟ですよ。じゃあ、ここはね、折衷案として。今日買う物全部で1金でどうです?そしたらおじさんも少し儲かるでしょ?」
「うんうん。ありがとうなあミアちゃん」
嬉しそうなおじさんに笑顔を返して、優しく笑顔で見守るノーツにも微笑みかける。
王子は割りと真剣な顔で盾を見ていた。
「ノーツさんは盾は使わないのか?」
「ん?ああ。盾があれば手数は増えるが、両手で力を込めたい事も多いからな」
「ふむ……そうか。参考になる」
あらこの子。
戦闘スタイルを模索し始めてる。
成長したのね……。
私は思わずママ目線になった。
実際に戦闘スタイルはなるべく早めに構築した方が後々安定するだろうけれども。
だが、いかんせんまだ王子は力が弱い。
女の私よりは力もあるけれども、片手で振るう剣なら私の武器でもいなす自信はある。
もっと攻撃力自体が上がれば、盾という手段も生きるかもしれないが。
メガネに至っては専門外の武器を選ばされている訳で。
「あ、おじさん。鍛冶屋さんに知り合いいる?よね?」
「おお、いるぞ。特注品でも作るのかい?」
寂しそうな顔をするおじさん。
いや、別にこの店を捨てるとか鍛冶屋に直行じゃないよ。
「料理の道具を依頼したくって。あと、この黒鋼の鶴嘴とか小さいのでいいから欲しいなぁ」
「鶴嘴かぁ……」
だって、もし貴重な鉱石とか見つけても、道具がないと採れないじゃない?
流石に素手じゃ無理だし、薬草と違って。
「鶴嘴は知り合いの道具屋に聞いてみるよ。鍛冶屋には紹介状を書いてあげるからね!」
うきうきした足取りで奥に行くと、紐で括られ丸めた紙をくれた。
紹介状……鍛冶屋ってこんなの必要だったっけ?
まあいいか。
「ありがとうおじさん」
漸くその頃、メガネは一振りの剣を持ってきたので、全部含めて金貨1枚で買い取った。




