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ざまぁ返しを全力回避したヒロインは、冒険者として生きていく~別れた筈の攻略対象たちが全員追ってきた~  作者: ひよこ1号


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70/90

止めてやれ・・そいつらのMPはもうゼロだ・・

ノーツにも是非クレープを食べて貰いたい。


たいと思っていたんだけど。

めちゃくちゃ混んでるううう!?

どのテーブルの上にも、クレープが鎮座していますね。

ああ、原因よ。


「あ、ああ、ミアちゃんごめんなさい、今空いてなくて」


リサさんが私を見つけて、必死で謝ってくるけど、返って悪い事したなあ。

そんなに謝る事ないのに。


「大丈夫ですよ。厨房の方は平気です?もし平気ならお部屋に自分で運ぶので、お料理お願いしてもいいですか?」

「え、そんな、悪いわ?」

「全然大丈夫です。自分の食べる分くらい運ばせますよ」


にっこり言えば、リサさんもこくんと頷いて笑顔を浮かべた。

煮込み料理は既に出来ているし、サラダとパンを盛り付けるだけなので用意は早い。

クレープだけは出来上がったら運んでくれる事になった。

それぞれに料理を持たせて、私が先頭で部屋に戻る。

鍵を開けて部屋に入ったが、まあ狭いよね。

四人もいたら狭く感じる。

王子の部屋から持ってきた、鞄に布を敷いて即席のテーブルにした。

全部は載せられないけど、煮込み料理くらいは載せられる。


「さー食べましょう。頂きます」

「「頂きます」」


ノーツさんだけ大盛り。

もぐもぐほっぺを膨らませて食べている。

男らしい頬と、もぐもぐ動くほっぺは何だか触りたくなるんだよね。

流石にそんな事したら、王子とメガネが変に騒ぎそうだし、しないけど。

それに、冒険の話は楽しい。


王子やメガネも質問したりして、ノーツは快くその問いにも答える。

和気藹々と話をしていると、ノックをする音が聞こえた。


「クレープかな?」


扉に近かったノーツが戸を開けると、リヤちゃんがお皿を差し出した。

それに、ちょっと困ったように、付け足す。


「クレープだよ。ミア姉。あと、ミア姉に贈り物届けたい人が来てる」

「何だろう?心当たりが無い……」

「呼んでもいい?リヤじゃ運べなさそうだから」


ああ、だから困ってたのか。

私は頷いた。

うん?

一体何だろう。

部屋が余計に狭くなるんだが?


「手紙も預かってございます」

「……はあ。どうもご苦労様でした」


壮年のお仕着せを着た男性は、ぴしっと挨拶をキメて、姿を消した。

リヤちゃんも、気になるようだが今日は忙しいので、またね、と言って階下に戻る。


「な、何だ?贈り物とは……」

「誰ですか?相手は」


思ったとおり王子とメガネが騒ぎ出す。

知らんがな。


「はあ……さっきも言ったけど心当たりなくって……」


私は受け取った手紙を読む。


「直接届けに行くと受け取ってもらえないかと思い、供の者を遣わしました。喜んで頂けると信じて。貴女の信奉者より」


誰だよ。

こんなんじゃ分かんねぇよ。

私は手紙を封筒の中に戻した。


「分かりませんねぇ。何か貴族っぽいですけどねぇ」

「むう!名を名乗らぬとは無粋な!」

「受け取らないと分かっているのに送ってくるとは不埒ですね!」


げきおこじゃん。

二人が怒っているのを、ノーツはもりもり食べながら困ったように見ている。

仕方ないので、私は贈り物が入っている箱を開けた。


本だ。

送り主が分かった。

あの野郎か。


「うん、贈り主分かりました。多分、マティアスですね」

「なに?あの執事か?」

「多分?この本読んでたの今日ですし、高いから諦めたんですよね」

「そんなもの、幾らでも私が買ってあげるのに!」


王子が言うけれど、お前稼げてないじゃん。

二人とも、ギルドでしょんぼりしてたよね?

言いたくないけど、言う。


「今日の稼ぎ、銀貨三枚でしたよね」


びくり、と二人が肩を震わせた。

現実を突きつける。

だって、親の金で買ってあげるのに!とかかっこ悪いことこの上ないでしょう。

預金した白金貨達は、あくまで親の金ですもんね。


「この本は金貨五枚です。毎日働いて、半年かかりますね」

「ミア、もうその辺で許してやってくれ……」


先に音をあげたのは何故かノーツだった。

二人は拳を握り締めて、眉間に皺を寄せてふるふる震えている。

かわいそう。

追い詰めたの私だけどな。


「だから、頑張って成長して下さいね。これは冒険に必要な物なので、貰っておく事にしますけど、別に高いものがいいとか私は思ってないですし、二人が努力してるのはちゃんと分かってますから」


二人の頭を順番に撫でると、感極まったのか、二人は涙を流し始めた。


「ミア、必ず強くなると誓う……!」

「私も頑張ります……!」


えらい、えらい。


ついでに私はノーツの頭も撫でた。


「ノーツさんも。無事帰ってきてくれて嬉しいです。約束守ってくれてありがとう」

「いや……うむ、……うん」


本当に、フラグ立ってると思ったし、無事で良かった。

照れ臭そうに笑うノーツを見て、ほっとする。

王子とメガネも何か言いたそうにはしていたが、冒険の話が楽しかったからか、師匠だからか何も言わない。


「さ、クレープ食べましょう」


私が言うと、三人はクレープを手に取って食べ始めた。

今日も美味しいね。

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― 新着の感想 ―
保育士さんミア、すごい! 魔法の言葉遣い! 落として褒めてが絶妙!見習いたいです。 ミアがそのうち、新人保育園(ギルト)経営とか? 魔法使い部門の育成とか?将来か広いね。
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