可哀想な王子様
「はぁ、疲れた~」
漸く脱ぎ終わった王子と、ベッドの上に座る。
「済まなかったな、ミア」
「いいよ。これは仕方ないよ。いきなりアルクには無理だよこんなの」
てか、王様よぉ!
あと側近よぉ!
嫌がらせか?おおん?
多分、傍にいたら私はそう聞いていたと思う。
どう考えても無理。
目玉焼きも作れるかどうか怪しい人に、フランス料理のフルコース作れって言うくらい無理。
悪戦苦闘して1時間位は経ってそう。
リサさんに宿を出る前に声かけてはあるけど、心配もされてそう。
「とりあえず、朝食食べに行きましょう。ベルト着けて剣だけさして、足は革靴でいいですよ」
王子を連れて宿に帰ると、リサさんがほっとしたような顔で出迎えてくれた。
美味しい朝食を食べて、ギルドへと向かう。
一応、アルトさんにも王子を紹介した。
「故郷の友人でアルクっていいます」
「宜しくお願いします」
「ああ、……そういやノーツは今大迷宮か」
視線の先を見れば、別の人が訓練をやっているようだ。
「そうです。一昨日挨拶しましたよ。お土産持って帰ってきてくれるって言ってました」
「ほお。そりゃ楽しみだな。で、コイツはどうするんだ?」
「その辺で素振りでもしてて貰います。アルク、素振りしてて」
分かった、と素直に頷いて、王子は素振りを始めた。
その横で、私とアルトは模擬戦闘を始める。
だが、一撃を回避する前に、割って入った影があった。
王子だ。
ちょっとおぉぉ!
何してんの!
「何の真似だ?」
アルトの機嫌が急降下する中、私を背に庇うように両手を広げたアルトが立っている。
「女性に暴力を振るうな」
「いや、これは訓練だからって言ったでしょう?」
退かそうと手を肩に乗せたが、その前に王子が崩れ落ちた。
腹部にアルトの膝蹴りを食らったらしい。
蹴り上げた足を、アルトが元の位置に戻した。
「だったら、守ってみろ。ほら、一撃で立てなくなったのか?お坊ちゃん」
「くそ、卑怯、だぞ」
「戦いに卑怯も糞もあるかよ。卑怯な手を使われたから守れませんでしたって言い訳すんのか?」
いや、お前も煽るなよ!
アルトを見るが、止める気はないようだ。
これはもう、痛い目見せて勉強させてやるマンだわ。
「うおお!」
王子は雄叫びを上げて、アルトに殴りかかったが、大振りなので簡単に避けられて、お腹を蹴られる。
崩れかけた所に、横からまたも蹴りを食らって体勢を崩した。
けれど、容赦のないアルトの踵落としを背中に入れられて、地面に叩き伏せられる。
丁寧に、頭まで踏んで、アルトは言った。
「おい、お前。今、俺は足しか使ってねぇの分かったか?お前は俺の足一本に負けたんだよ。粋がるなら実力で示してみろ、糞餓鬼」
「……くっ……まだだ……!」
王子はアルトの足を振り払うように、腕を振って、アルトを睨んだ。
顔に蹴りを食らいつつも、何とか起き上がったが、もう一度頭に蹴りを食らって横転した。
気絶したようで、そのまま横になっている。
剣術訓練していた人も、息を呑んでこちらに注目していた。
「アルトさん、やり過ぎ」
「善人面した無能を見ると腹が立つんだよ」
「私情だけで動いたのなら、教師失格ですよ」
王子の横に膝を着いて見上げると、アルトは真剣な目を向けている。
「私情だけじゃねぇ。痛みも敗北も知らねぇ餓鬼に教えてやったんだ」
「……ならいいです。必要な事だから」
私は、汚れた王子の髪を撫でる。
可哀想な王子様。
温かい絹に包まれた生活の中では味わう事のない痛みと挫折だろう。
「アルトさん、運んでください。手当てするので」
「……はぁ、分かった」
面倒そうに言うと、アルトは王子を担いで部屋に運んでくれた。
ボロボロ……
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