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ざまぁ返しを全力回避したヒロインは、冒険者として生きていく~別れた筈の攻略対象たちが全員追ってきた~  作者: ひよこ1号


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37/90

見た目は王子様なので

スライム戦闘を横目に、私は薬草採取をする事にした。

暇だからね。

一応、王子も考えながら戦闘をし始めたみたいで、段々コツを掴んできてる、気がした。

ノーツに訓練をしてもらうにしても、ある程度は基礎がないと教え辛そうだし。

夜は私と同じく素振りの練習も追加かな。

でもあれか、部屋狭いのか。

庭か公園?

うーん。

それだったら部屋の中で出来る筋トレの方がいいかもしれない。


色々考えつつ、薬草を引っこ抜いていたら、夕方の鐘が鳴る。


「お疲れ様、アルク。じゃあ夕飯食べに行きましょうか」

「ん、ああ、分かった」


肩で息をしているが、何だか清々しい顔してる。

もっと不貞腐れると思ってたけど、意外。


「じゃあ、今日は私が綺麗にしてあげますね。清潔クリーン……はい、よく頑張りました」

「……あ、ああ……ありがとう」


魔法をかけるついでに頭を撫でて上げると、頬を赤くして照れている。

ノーツみたいで可愛い。

ノーツというか、子犬だけど。


「明日ギルドで清潔クリーンの魔法書と、能力開示ステータスの魔法書買ってあげるから、覚えましょうね。それである程度、自分の技能スキルや熟練度を把握できるので」

「ほう、それは心強いな。清潔クリーンも便利だが、何故貴族は使わないのだろうか?」


不思議そうに首を傾げる王子を見て、私も考える。

そりゃ、魔法は便利で有り難い。

かければ、すぐに効果も出る。


「それはですね、贅沢だからですよ。だって、そうでしょう?浴槽一杯に入ったお湯に浸かるのって気持良いじゃないですか。汚れも取れるけど、体中温まるし心地いい。洗髪剤や石鹸は良い匂いだってするし。魔法で短縮する意味、あります?」

「……そうか、贅沢か…」

「だって、普通に生活してたら、お湯か水を用意して、布で体拭くだけですよ。時間もかかるし汚れも取りにくい。それだったら魔法の方がいい、ってなるでしょ?貴族がもし魔法で全部済ませたら、使用人の仕事もなくなっちゃいますしね」


ギルドに薬草を納品しに行き、私の定宿まで歩きながら、色々な他愛ない話をする。

王子は感心したように頷いていた。

素直な所は良い所だ。

色々学べば、価値観も変わっていくだろう。


「夕食は慣れるまで、私の宿で食べましょう。ここです。黄金の野兎亭」

「ほう、私もここに移ろう」

「あ、駄目です。ここは女性専用の宿なので」


駄目です、と言った途端ショックな顔をしたが、女性専用と聞くと、納得したように王子は大きく頷いた。


「そうか。女性専用ならば安全か。うむ、分かった」

「すごい可愛い女将さんと娘さんがいるので紹介しますね。くれぐれも、偉そうにしないで」

「……う、分かった……」


そんなに偉そうか…?と首を捻る王子を連れて、宿に入る。

まだ夕方の鐘が鳴ったばかりなので、店はそんなに混んでいなかった。


「おかえりなさいミア姉」

「あら、おかえりなさいミアちゃん。またお客さんを連れてきてくれたの?」


リヤちゃんの声を聞いたリサさんが、奥の方から出てきて、王子を見て微笑んだ。

私は挨拶を返して頷く。


「はい。故郷の友人で、多分彼も暫くこの町に滞在するので、宜しくお願いします」

「アルクだ。…宜しく頼む…みます」


私の顔色を伺って、王子は丁寧な言葉に直した。

にっこりと微笑むと、王子もぱあっと笑顔になる。

子犬の躾は大事なのだ。

王子を席に着かせて、壁に貼ってあるメニューを指差して選ばせる。


「煮込み料理がお勧めのお店なので、そのセットでいいですか?」

「ああ、それでいい。ミアと同じ物を食べたい」


にこにこと邪気なく言う王子。

学園でも人気はあったのだろう。

馬鹿なところもあるけれど、割りと素直、割りと優しい。

何より顔は有能そうな王子である。

まあ、スライムと同格ですがね、今のところ。

お水を置きに来たリヤちゃんのほっぺが赤い。

あら?

もしかして、もしかしますか?

中々いないもんね、こういうタイプ。

この街には。

まだ鍛え始めたばかりで、線も細いし王子様然とした雰囲気。

育ったら育ったで、聖堂騎士団テンプルナイツのアウリスみたいになりそう。


「あ、この子がさっきお話したリヤちゃん」

「よろしく」


一応、冷たくあしらわれたくないので、嫁云々という冗談はやめておく。

リヤちゃんは王子スマイルに、はわわ、となってぺこっと頭を下げて奥に逃げて行った。

おやぁ??

お父さん嫉妬しちゃいそう。

これは王子を殴らねばならんな??


「ちょっと。アルク。色目使わないで下さいよ?リヤちゃんは純真な子なんですからね?」


完全な八つ当たりの苦情に、王子はきょとんとしてから言い返した。


「……なっ!私はそういうつもりじゃ……私はミア一筋だ!」


声、デケェ……!

ハッとしてリヤちゃんを振り返ると、泣きそうな顔をして……などいなかった。

逆にニマニマしている。

あれ?さっきまでここにいた恋する少女は何処行ったの?

行方不明ですか??

女子ってそういうとこ、あるよねぇ。

まあ、早目に砕け散った方が傷も少ないのかもしれないけど。


「そういうのは、もう少し強くなるまで取っておいてくれますかね?」

「……それは、まあ……そうだな」


冷たく言えば、王子は耳を伏せた子犬のように俯いてしまった。

かわいそう。

私が原因か。

でも事実だからしゃーない。

そもそも実力が無ければ生きていけない世界で、愛だ恋だと叫びたいならそれ相応の力が必要だと思う。

貴族として必要だったのは、爵位と財産だったけれども。

その頂点からは、自ら転落したのだから。


「でも、今日はちゃんと頑張ったので、沢山食べてぐっすり寝てくださいね」

「……ああ、そうする……!」


笑顔を見せれば、ぱあっと笑顔になる王子。

変に拗ねたりしないところは、扱いやすくていいのかも。

小さい子には素敵……と持てそうですが、冒険者の女子にはどうなんだろう?

頼りなく見えそう。


読んでくださり、ありがとうございます。

誤字報告も感謝です。

少しでも、楽しんで頂けたら嬉しいです。

ブクマ・いいね・★もとても嬉しいです。励みになっております。

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