旅立つ君への贈り物
ぐつぐつ煮たら、カクテルか??と聞きたくなるくらいのどピンクになってしまった。
こっちも何だか光沢があるような。
まあ、綺麗な色ではあるんだけれども。
飲んだら頭がおかしくなりそうな色ではある。
媚薬です★って言われた方がまだしっくりくるね。
大きな瓶を蒸留水で洗って乾かしてから、真新しい漉し布を括り付けて薬を漉す。
うむうむ。
こちらは回復薬と違って、細長いガラス瓶に入れる。
容量は回復薬の五分の一程度。
つまり、一つの薬草から25~30本くらいの薬が取れるのだ。
利幅が大きいように見えるが、この辺りで採取するならば森の中になるので草自体の単価は上がるから、そう変わらないかもしれない。
あと、回復薬は薬効が、身体回復という分かりやすい形で出るのと違って、毒消しはどうなんだろう?
即効性とどこまでの毒に対抗できるか、だろうか?
一般の毒消し薬で、どの程度の毒が防げるのかはよく分からない。
その辺りは要研究、ではあるものの。
あ、そうか。
ひらめいたぞ。
薬屋さんに持ち込んでみればいいんだ。
そしたら専門家が成分を調べてくれるよね!
……多分?
でも大騒ぎされても困るから、暫くはちょっと隠しておこう。
いつの間にか、見守りわんこのノーツが、細瓶へのラベル貼りを手伝ってくれている。
えっ、このわんこ、賢い!
思わず、私はノーツの頭をナデナデしてしまった。
ノーツの顔がかあっと赤くなる。
「あ……何か出来ないかと思ってな」
「退屈かと思って心配してたので、助かりますよ」
一緒に細瓶のラベル貼りを終えて、てか、これシールとか欲しいよね。
いちいち糊でくっつけるの、だるい。
二人でちまちま作業するのは楽しかったけど、一人でやってたら内職みたいになるもの。
実際そういう職人さんいそうだな?
「じゃあ、一応これも。あげますね。効果の程は分かりませんが、毒に効く筈です。どうぞ」
とりあえずこちらも、三本渡しておく。
だって、ヘボかったら申し訳ないからね。
「むう。すまん……貰うばかりだな」
「え、いやいや。この前も今回も、ノーツさん放っておくとただ働きしようとするじゃないですか。私だって助けて貰ってるんですから、遠慮しないで下さいよ。あとお土産期待してます」
ニコニコ言えば、ノーツは顰めていた眉を解いて、苦笑した。
「それは、責任重大だ」
「そうですよ。気をつけて行って来てくださ……あ、という事はもしかしてアルトさんもいなくなる系?」
「うん?いや、今回は大規模攻勢でもないから分からんな」
それならよかった。
私がふむふむ、と頷くと、ノーツが少し心配そうな顔をしている。
何だか、病院に連れて行かれそうになってるような、ちょっと悲しげな犬。
「最近アルトさんには、街での安全確保とかそういう技術習ってるので、大丈夫ですよ?」
「そうか。それは少し安心だな」
ぱっとノーツは明るい顔になる。
心配してくれてたのかな?
最近変な人も多いですもんね。
アーヴォとかアーヴォとかアーヴォとか。
「いずれは何でも一人で出来るようになりたいですしね」
いちいち護衛をつけるというのも、何だかこう……自立できていないみたいで嫌だし。
実際今日だけは、仕方なかったんだけど。
荷物も多いし、行き先は錬金術工房だし、アーヴォに狙われないとも限らない。
「俺は別に、頼ってくれても、問題ない……」
「ありがとうございます。何かあれば相談します」
ノーツの申出は有り難い。
めっちゃいい人。
大体さ、休みとはいえ、報酬もなしに色々手伝ってくれるって、ほんと神。
出来るだけ私も返せるようにはしてるけどさ。
それでも、そういう優しい気持ちって大事だし、嬉しい。
私はポーチに薬を全部詰め込んで…詰め込めるのすげえな。
改めて私は収納魔法の偉大さに感心する。
しかもこれ、ロック付きだから、私じゃないと開けられないし。
使用者登録できる機能がついてるっていいよね。
仕組みが全然分からんけども。
「じゃあ、終わったので帰りましょうか」
「ああ」
蒸留水は部屋でも作れそうだから、作り溜めておけば次回以降の製作に役立つなー
なんて思いながら、部屋を片付けて道具をしまって、ノーツに木箱で運んで貰う。
ついでにその日は、ノーツと一緒にリサさんの美味しい煮込み料理を夕飯に食べたのである。
無事に帰ってきて欲しいミア
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