初めての錬金術
宿屋に迎えにきたノーツの手を借りて、機材を錬金術工房まで運び入れる。
材料の買い足しは済んでいるので、あとは薬を作るだけ。
ノーツが軽々機材も材料も木箱のまま運んでくれたので、私は楽だった。
やっぱり頼りになる人がいるっていいね。
借りてきた鍵で扉を開けて、材料を並べる。
そして、本で見た通りに、作業を始めた。
まずは、水の蒸留から始める。
市場でも精製水は売っていた。のだが、ただの水と一見区別はつかない。
出来るだけ不純物の少ない水が良いとされているので、蒸留した水を使いたいのだ。
蒸留するのに足りない道具を市場で買っておいたので、その道具と水を使って蒸留水を作る。
その間に、青い薬草と、数種類の薬草、鎮痛効果のある草や消炎効果のある草、化膿止め、胃腸にも優しい草等々、回復に必要な薬草の効果を邪魔しない草達を一緒に刻んで、布袋で縛った。
布袋は解けるのが心配で私が裁縫で作った物だ。
おかげで裁縫レベルもあがりました。
いいお嫁さんになれるね。
そして、蒸留水が溜まったら、別の水をセットして引き続き蒸留水を作りながら、出来上がった蒸留水で薬草を煮る。
「おぉ……」
青い……青の洞窟の青!
光を孕んだ美しい青だ。
購入した砂時計で大体の時間を計って、大きな瓶に漉し入れる。
それを小分けの瓶に注ぎ入れて、封をする。
ラベルも夜なべして作りましたとも。
嘘、夜なべまではしてない。
特徴が欲しいし、ミアって響き、何か猫っぽいから猫と足跡のマークもつけた。
あと髪の色がピンクだから、ピンクのラベル。
それをペタっと瓶に貼り付けて、じーっと賢いわんこが主人を待つみたいになってるノーツを見る。
「はい、ノーツさん。これあげます。2つ」
「え」
「回復薬ですよ。多分、市販の位は効果あると思うんですけど、もしヘボかったらごめんなさい」
「いや、そんな高価なもの、じゃないか」
確かに高価だ。
一本10銀貨だもんね。性能が良かったと仮定して。
奢って貰った食事代は1銀貨にもならないのを比べたら確かに。
でも元ではただです。
無料!
ノーツは慌てたように、掌を立てて拒否するけれど、私はその掌にぐいっと薬瓶を押し付けた。
「無事戻ってきてくれるんでしょう?必要になったら使って下さい」
「う……わかった。じゃあ、代わりになるような物を、持って帰る」
本当なら全部渡したい所だけど、他にも高価で高品質な薬も持っていくだろう。
それどころか、仲間に回復職がいれば、完全なお荷物でしかない。
でもまだ、この程度の事しか私には出来ない。
もっと、良い物が作れるようになりたいなあ。
暢気に、そう思っていたこの薬が、後々の騒動に結び付く事を私はまだ知らなかった。
全部の薬草を回復薬に使った後、最後は本を見ながら毒消しの薬も作る。
こちらは鑑定で毒消し草と判別済の薬草ちゃんだ。
材料も、きちんと本の通りに集めてある。
ただ、メインである毒消し草は、紫っぽい色なのに、私が育てている内に何だかピンク味が増していた。
多分、色もその色に反映されるのだろう。
うん。
どピンクだ。
可愛い色です★
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