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いつもの日々に  作者: ルウ
異郷の逃亡者
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逃亡者は檻の中

今回も少ないです。咳が治まらないので、暫くはこの量となります。

公園のベンチでクレープを食べ終わり、包み紙を丸めてゴミ箱に捨てようとした時。斎は後ろの茂みからガサガサと何以下が出てくる音に反応して振り向いた。そこには倒れ込むようにして茂みから出てきた異国情緒あふれる少年と、その少年に抱きかかえられた3・4歳くらいのアッシュグレイに薄い茶色の瞳をした可愛らしい少女だ。


「うおっ!? なんだお前は!?」

「早く逃げろ、巻き込まれる…ぞ。」


斎は突然の事に驚くが、少年が日本語を話せた事もだが突然の不穏な言葉に絶句してしまう。しかし、ここ最近の物騒な事件に妙なセンサーが反応したのか、ただ事じゃないのを察知して斎は踵を返して逃げようとしたが…足を止めてしまった。

この時、斎はちょっと魔が差した…いや予感がしたのかもしれない。ここで彼らと話をしたら東哉達の何かの役に立てるかもしれない、彼らの為になるかもしれない。そして、彼らが自分を見てくれるかもしれないと。

危険なのは解っていた、わざわざ自分からそっちの方向に踏み込むなんて馬鹿な事だと解っていた。

それでも斎は妙な孤独感に耐えられなくなって、魔が差したのかもしれない。

だから…。


「…こっちだ。」

「おっおい!?」


とっさに斎は少年の手を取ると、彼らが出てきた茂みとは別の茂みへと入り蔦が絡まり洞の様になっている場所へと入る。

中は暗く腰をかがめば入れる程の場所で、入ってみればスロープになっていてゆっくりと広くなっている。


「ここは?」

「元々ここは公園の遊具があるエリアだったんだ。この町の行政はいたるところから出て切ってもすぐに伸びる樹を切る仕事を斡旋しているんだが、ここだけ手配し忘れたらしく遊具を覆う様に樹が伸びてこんな空間になったらしい。この場所は地元の人間もあまり知らない場所だ。」

「…それで、俺たちをここに連れてきてどうするんだ。」


そう言われると、斎は言葉に詰まる。魔がさして、衝動的に連れてきただけなのだ。はたから見ればかなり怪しい女である。ただ、理由があると言えばある。


「なんかほっとけなかったんだよ。」

「はぁ? なんだそれ。」

「知り合いに!! 似てたんだ、大事な奴の為に頑張って強くなろうとする友達に。」

「…。」

「だから、何か追われている様なお前らを助けようと思ったんだ。」


そこまで言うと恥ずかしくなったのか斎は唇を噛んで余所を向いた。それを見て少年は毒気を抜かれたように茫然とすると、噴き出し笑った。


「笑うな!! 恥ずかしいだろうが!!」

「悪い、馬鹿にするつもりじゃないんだが。なんか、おかしくって…。」


笑いが止まらなくなってしまい、少年は声を抑えて笑い続けた。腕の中の少女が不思議そうに少年を見つめていた。




「中東から誘拐されて売られてきた!? 研究所に売られて、実験動物あつかい…ううん。」

「ああ、そうだ。」


簡単に今までの経緯を聞いた斎は思ったより大きな話で動揺してしまう。中東の話はともかく、研究所の話は東哉経由で聞いた桂二の話と一致するからだ。何処から来たのかと聞けばあっちの方と大雑把に答えてきたが、方向とおおよその距離を聞き携帯のMAPアプリを開いて予測すると。


「やっぱり、工場区画。」


単純に地図でみれば直線距離で約10km先の工場区画に行き当たる。

桂二から東哉に関係した人間に、何かあった場合対処が出来ないとマズイという事で最近の近況をざっくりと話してもらっていたのだ。

その中の一つ、工業企画の調査の話と顛末から考えると話がつながった。

話が大きい。経験不足の自分ではどうしたらいいか判断がつかない。

だから斎は迷わず電話をかけるべく携帯を取り出すが愕然とする。


「どうした?」

「携帯が通じない!? 通信状況…切れてる? なんでっ!?」


画面を見れば電波が来てないとの表示。慌てていると突然聞こえる鐘の音に斎は顔を上げる。


「鐘の音?」

「これ…研究所に連れていかれる地下通路で聞いた事がある。たしか忌避の鐘って無意識で人払いをする鐘の音だって。」

「それが本当の話だとしたら…拙い。」


斎の顔が引きつる。

今いる場所、中央通り公園は繁華街の真ん中にある大きな公園だ。広さは約30ヘクタールと斎たちが通う学校の約三倍と言うかなりの広さだ。中には野球場やテニスコート、ラグビー場も入っている多目的で使える公園である。

斎のいる場所はその中央にある芝生広場の近く、そんな所で電波が通じない状態で人が居なくなったと言う事はどういう事かと言えば。


「閉じ込められた…。」

「おい、どういう事だ!!」

「この公園は中央の芝生広場とレクリエーション施設や運動する場所以外に、高い柵で囲まれているんだ。しかもその柵は樹でさらに高い壁になってるんだ。そんな場所で人払いの鐘と電波の通じない状況。」

「…閉じ込められたって事か…。」

「間違いないと思う。この公園は約六か所、そこからの出口は間違いなく監視されてる。少なくとも、私ならそうするな。」


三人は人工物と緑に囲まれた檻に囚われてしまった。


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