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いつもの日々に  作者: ルウ
幕間 修行
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インターバルと言う名の修業回 前篇


「ふうううぅぅぅ!!」

「もっとよ!!身体強化は励起法だけじゃない、呼吸による代謝の亢進と身体効率化のルーティーンを合わした気功は励起法と合わさる事により更に強力になる。」


高見原市 桜区石上町 石上神社境内。


誠一は思惟の指導を受けていた。前回の戦いの後、彼は自身の力がまだ弱い事に気付いていた。確かに彼は励起法と固有能力により攻撃力と耐久力は異常なほどに高いが、それ以外は勝てない事が多い。スピードは天子に劣り、技の切れは彩に負け、情報収集は桂二に頼りっぱなし。何もかも自分一人で出来るとか、そんな傲慢な事は考えてはいない。ただ、経験が足りないのか決定打に欠ける気がするのだ。

速さがあれば天子に並べる、技の理解が深ければ彩の背中を護れる、もっと知識があれば桂二の策がスムーズに動く。

だから。


「はっ!!」


腰を落とし馬歩站椿、手で組んだ印と共に気合を発すると丹田(下腹部、臍と股間の約中間ほどの高さでそこの体内)の中へと熱が入る。


「これは…身体を巡る力が強い?」

「その『儀式』拳印、上手くいっているみたいね。その印は気の流れを掴みやすく、放出しやすくする印よ。」


中指を立てた示指にかけて手を組む、大金剛輪印と呼ばれる修験道に伝わる特殊な伝統儀式だ。その効果は思惟が言った通り身体のエネルギーを出しやすくなり、身体の力を調節しやすくなる。

それによって誠一は励起法の出力が強く、そして繊細に扱えるようになっていく。


「さて、その状態を維持したまま、組手を始めるわ。今までは戦闘のみ励起法を使っていると思うけど今から切らさない様に。」

「えっ、結構きついんですけど。どれくらいやるんですか?」

「一時間を五セット、間に休みを十分挟むけど休みの間も励起法は切らしちゃだめよ。」


マルチタスクに高速演算・固有能力発動を行いながらの戦闘と言うキツイ訓練内容に誠一は顔を引き攣らせる。


「さあ、やるわよ。能力者が得意の超高速戦闘を教えてあげる。間合い・駆け引き・組み立て、一つでも間違えれば大怪我よ、安心しなさい私も本気じゃないけど全力でやるから!!」


それのどこに安心するところがあるんだと、ちょっと及び腰になりながらも始まる組手。

目の前にいたはずの思惟の姿が一瞬で消えたかと思ったら、白く綺麗な手が誠一の胸に添えられた。


「『水波すいは』」


基礎技『水波』、単純な突きだが思惟程の達人で有ればとんでもない衝撃が誠一の身体を突き抜けた。

それを誠一は固有能力と胸郭を瞬間的に動かす事により筋肉の締まりを利用した衝撃を逸らす『龍息りゅうそく』で対抗する。同時に右腕を掌底で薙ぐように振り上げるが、思惟はもうそこにはいない。振り上げた腕の半歩向こうにいて避けていたのだ。慌てて肘打ちで右腕を振り下ろすが再び空振り。それどころか肘にそっと触れられて反らされる。


「ふっ!!」


誠一はそれに合わせるように、身体を沈め伸びる力を利用して背中を使った体当たり貼山靠を打つ。


「甘いわ。」


誠一の視界の外から聞こえた思惟の声、誠一の固有能力と励起法で強化された10tトラックでさえ吹き飛ばす威力の貼山靠は少し打点をずらした同じ貼山靠によって反らされる。

同時に足を払われ空中に浮いてしまった誠一は、自分の顔を掴む白い手を見た。


「もっと自分の得意な間合いに持っていく事を覚えなさい。自分の土俵に持っていくのが駆け引きと組み立てよ。」


誠一は衝撃と共に頭から叩き落され気を失った。


「…やり過ぎた? やれやれ、先が思いやられるわ…。」


誠一は叩き起こされて鍛錬は続く、気絶ぐらいでは終わらないのだ。




高見原市 祝子区 多々良町


そこは学校からやや西寄りの田んぼや畑が広がる平地、近くには東哉の家がある。そこから暫く西に行くと森の入り口があった。そこには最近熱くなってきた気温と相反する格好をした二人組があった。

上下が長袖長ズボンの迷彩服、足は軍用の鉄板入りのブーツにタクティカルジャケットには色々な物を付けている。

さらに大きなバックパックを担いでいたのは、東哉と桂二の二人だった。


「なあ、桂二。これ滅茶苦茶重いんだけど。」

「だろうな、それ重さが俺の三倍あるから。こっちが40kgでそっちは120kgだ。」

「えっ!?」


桂二は立っているが東哉は辛うじて背負えているが立てていない。実はバックパックの中に鉛と鉄板が仕込まれていりする。その話を聞くと東哉は信じられないような者を見る目で桂二を見た。


「なんでだよ!!」

「今回最初に言っただろ? お前の地力を伸ばすって。今回の訓練では基礎体力の向上と励起法の深度を上げる予定だ。」

「どうしてこれで基礎体力を上げるってんだ!? 動けないって。」

「だから励起法を使うんだよ。お前の励起法は深度が低いから、もっと深度を高めるために長時間使い続けるんだ。そうする事によって、深度を高めるんだ。」

「マジか………ん?」


そこまで聞いて東哉には疑問がでた。


「…長時間?」


長時間に渡って励起法を行うという事に疑問が出たのだ。誠一も言っていたが、励起法は基本的に脳の演算能力がモノを言う、深度が高いほど高い演算能力が必要になってくる。演算をすればするほど脳が疲労して酷くなると頭痛などがおこるのだ。


「マジで?」

「マジもマジ。これからこの荷物を持って三日間の行軍をする。お前はその間ずっと励起法を切らすなよ。」

「三日間!?」

「明日から夏休みだ、行けるだろーが。強くなりたいんだろほら行くぞ!!」


強くなりたい、それは東哉が今一番望む事だ。

先日の一件で、自分の目の前で人が一人死んだ。あの時の事を今でも東哉は思い悩む。

もし、あの時今より強かったら殺すまでもなく制圧できたかもしれない。そう思っていたのだ。

自分が弱かったせいで…力が足りないせいで、誠一に要らない覚悟を抱かせたかもしれない。誠一のあの覚悟を決めた目が東哉の頭にちらつく。


「おおっ!!」


気合一閃、東哉は励起法を限界深度まで高めると軽々と荷物を持ち上げる。


「強くなるなら何でもやってやる。桂二、どうするんだ?」


そう言うと桂二はニヤリと人を喰ったような笑顔で頷いた。

見る人が見れば彼の上司に似た笑顔に東哉は引いてしまう。


「そしてやる事は簡単、どんな方法を使っても直線で、三日間100km移動するだけだ。」

「直線で!? 三日間!? この装備を担いで!?」

「そう。こっちの方向に三日間で100kmな。」


桂二が指さすのはこの地域では珍しくもない切り立った岩山だ。この近辺は切り立った岩山が多く、フリークライミングの練習になる場所が多い。


「マジか。」

「マジだ。」

「…桂二、これで俺は強くなるんだよな?」

「ああ、この訓練は能力者の基礎能力と、長時間の演算を行う事により励起法に慣れて更に高深度の励起法を習得させる事を目的としている。」

「………よしっ、覚悟は決まった!! 行こう!!」


良く解らないが覚悟が決まったらしい東哉に、桂二はヤレヤレと溜息を吐いた。




内心ではこの訓練は莉奈もやったんだよ、これ知ったら逆に燃えるんだろーなー…めんどくさいわ、と思ったり。


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