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いつもの日々に  作者: ルウ
女の子の冒険
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女の子の冒険 弱いなりの戦い方

グリホサートイソプロピルアミン塩製剤、今現在において国に使用禁止されている除草剤の成分である。この薬剤の恐ろしさは、吸収した細胞が生産するアミノ酸の合成を阻害し正常なタンパク質が出来なくなり細胞分裂を阻害するのだ。

莉奈はサイファ学園都市での能力者学での講義を思い出していた、それは能力者の細胞についてだ。能力者の細胞は基本励起法によって強化されて様々な恩恵を持っている。一つ代謝の最効率化と強化、これは細胞内による代謝のロスがゼロに近くなり更に強化されている。二つ細胞内のDNAの保全と校正の強化、内容の一つでは分裂におけるテロメアの短縮をなくしたりコピーミスがほぼなくなる、これは老化の原因の一つを消すのと等しい。(

専門的な話は省きます)

ただこれにはちょっとした穴がある、励起法の深度と生得の特性でこの機能は大きく個人差を起こす。どういう事かと言えば、励起法の深度が浅いとあまり機能せず、生まれつき持っている特性によって励起法の強化がうまく機能しない場合がある。


「植物と同化しているのが仇になったわね!! 植物には基本的に排泄する機能がない。人間であれば励起法で排泄、解毒できるかもしれないけど植物部分にはため込むしかない!!」


植物には基本、排泄や解毒が出来ない。もし毒物が体内に入ってしまうと植物は液胞と言う部分にため込むしかできない。今回の場合、木の中央に人が埋め込まれるようにしている場合、人の部分はともかく植物の部分は毒をため込む事となる。


「毒はそう簡単に抜けないわ。天子の為に決めさせてもらう!!」


再びポーチから瓶を取り出し、脳内で必要な構造式を思い浮かべ投げつけようとしたが…。


「うわっ!!」


後ろから近づいていた上半身だけのゾンビが莉奈の足を掴んでいた。目の前の敵だけに集中していた莉奈は驚いて体勢を崩してしまい、瓶を落としてしまう。


「ととって、ウヴァー!!」


何があったか見ると、上半身だけのゾンビと目が合い叫ぶ。驚いて気付かないが、上半身だけの切り口は何か大きな刃でぶった斬られた様な痕、天子に斬られたのだろう。

叫んでいたらゾンビのその奥、天子のいた方向から、どこかしら身体のパーツが描けたゾンビが何体も来ていた。


「何この数、まさか天子にやられたやつ!?」


どんどん増える。こうなってしまうと直接的な攻撃手段に乏しい莉奈では囲まれれば終わり、詰んでしまう。

どうしたらいいと考えるのは一秒未満、落とした瓶を拾い上げる木に投げると、別の瓶を取り出す。

足に縋りつくゾンビに新たに出した瓶の中身を能力発動と共に振りかける。

振りかけたのは金属の光沢を持つ灰色の粉。


「燃えろ!!」


瞬間、ゾンビが爆発的な炎に包まれる。莉奈が振りかけたのはアルミニウムの粉、鉄を溶接する時に使われるテルミット反応の炎だ。普通はアルミニウムの粉だけではなく、酸化剤と還元剤が必要なのだが莉奈の能力があれば違う。結合の能力『ボンド』の力を持つ莉奈であればその様な物は必要としない。

一気に燃え上がったゾンビはボロボロと崩れ落ちる、がそれどころではない目的は木の方だと振り向けば悍ましい事になっていた。


「うっわ、気持ち悪い。」


ゾンビは一体だけでなかった、首がないもの両腕がないもの下半身だけそんなゾンビが木に集まってきていたのだ。そして吸収、いや同化と言うほどの現象でゾンビ達が木に吸収されていく。

そして莉奈は推測した、このゾンビ達を生産して操ってたのはこの木ではないかと。


「だとしたら、なおさら早くしないと!!」


莉奈はゾンビが木に向かう事を好機と考え、地面に手をついて能力を発動する。その能力の効果範囲は木の根元から上。


「とりあえずはこれ!!」


能力を使い強引に構造を変える、狙うのは空気中の炭素と酸素と水素。今さっきのテルミットで燃えた死体から発生したのとゾンビから無理やり炭素を引き出すと、木の根元から上にそれを作り出す。

出来たのは超高分子で作られたポリエチレンで出来た、土から生えた網目の籠。ゾンビを次々と吸収して膨張している木にはそれは致命的だ。木が網の目からはち切れんばかりに膨らんで動けなくなっているからだ。

そしてこの状態で莉奈は困った、なぜならば攻撃手段が尽きたのだ。元からの作戦は毒による打倒もしくは行動を鈍化、そおして拘束してからのテルミット反応による焼却という作戦だったからだ。

しかし、攻撃手段が尽きてしまった。こうなったら直接攻撃だけだが拘束に使っている超高分子ポリエチレンが拘束と同時に鎧の様になっている。自分の攻撃が通るかどうかわからない。

とそこまで考えて、再び思い出す浄教授の言葉だ。



『能力には優位性がある。絶対とは言えないが、単純な所で導士は識者に強く、法師は導士に強く、識者は法師に強いとされる。これは能力者の性質と励起法の強さと関係していると言う。識者は導士の固有能力に封じられ、導士は法師の空間支配能力に屈し、法師は識者の目に見抜かれる反撃される。という言葉が作られるぐらいだ。まあ、その逆もあるので指針の一つとして見てもらえるといい。そしてもし同系統の能力者であれば、優劣はどうつけるか、それは…。』



目の前の木もしくは取り込まれている人間の能力は、系統的に導士だ。木を動かしたり人を吸収して同化しているならば導士か法師、法師であれば空間支配能力でとっくの昔にやられている。だから消去法で導士になる。

導士ならば同じ導士の系統能力者の自分が優位になるには…。


「それはぁぁっ!!」


莉奈は飛び込む様に木に肉薄する、その両手には何も持たずに。

ところで、莉奈が東哉と別れる原因になった鉄骨の落下、それを彼女はどう切り抜けたか。東哉が見たのは『粉々になった鉄骨』だ。折れたでも斬れたでもなく、『粉々になった』だ。

それが意味する事の答えは、莉奈が木を直接手で触れた。と同時に固有能力を全開で使う。


「酸化しろ!!」


莉奈がとった手は能力による強制酸化だ。この力は恐ろしく、落ちてきた鉄骨に使った時は一瞬にして鉄を酸化鉄に変え脆くした状態にして手で打ち抜いたのだ。それと同じように、莉奈は木を酸化させるべく直接触ることにしたのだ。

普通はこんな攻撃はあまり通らない、それよりも前に固有能力で阻まれ出来ない上に、神域によって阻まれるからだ。しかし導士は言う広範囲かつ低支配の神域しか持たない為に、今回の莉奈の機転が上手くいく。そして良かったのは木の部分に能力を使った事だ。木を酸化させると、分子結合が甘くなりその隙間に酸素が入り込むと最終的に起きるのは『燃焼』だ。

その結果、木は燃え始めた周りのゾンビと同化した個体ごと。

同時に能力を限界まで使ったせいか莉奈は、後ろ向きにひっくり返る。


「流石に神域持ちに能力を突破させるように使うのは、きっつー。」


肩で息をしながら空を見れば、少し白みだしていた。


「大丈夫?」


顔を横に向ければ心配そうにのぞき込む天子がいた。


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