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いつもの日々に  作者: ルウ
女の子の冒険
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女の子の冒険 発見

気付けば薄暗い空間、記憶の最後にあるのは穴に足を取られたと思ったら変哲もない地面に飲み込まれた事だけ。

周りを見渡せば、ただ黒い空間と蒼い顔をした金髪碧眼の少年。


「…ん? 君ってもしかして。」

「だっ大丈夫ですか!?」


少し震えながらも莉奈の安否を聞いてくる少年には見覚えがある、確かここの調査に来る前に見せられた写真の…。


興水治孝おきみずはるたか15歳。生まれはK県Y町イギリス人の父親と日本人の母親の長男。中学校三年生で父親譲りの容姿の為、周りから少し遠巻きみられている、ややグレ気味の少年!!」

「え゛…グレてないっす。学校じゃちょっと目つきが悪いから…そう見えるだけで…。」


現状確認の為、知りえている事を言って見れば、何ともしどろもどろな返答が返ってきた。ああ、彫りの深さと目つきの鋭さで悪く見えちゃったんだねと納得しながら本人確認が出来た。


「ここは何処なの? 二週間もここに居たの?」

「えっ? 二週間? 俺この空間に逃げ込んでからまだ一週間程だけど?」

「ちょっと話を聞かせてもらっても良いかな? あ、私の名前は莉奈、菊理莉奈きくりりな君より二つ年上の17歳!! よろしく!!」


不安が吹き飛ぶように自己紹介をする莉奈、目の前の少年の不安をかき消すよう笑った。すると少し肩の力が抜けたのか、座り込んでポツリポツリと話し始めた。

興水少年の体感時間の一週間前、彼は趣味のサイクリングを楽しんでいたらしい。そんな時、いつもと違う道を走っていたら無意識にこの神社の入り口に吸い込まれるように入ってしまったと言う。

その後は身体を操られて、襲われて、ここに落ちて、自分がこの空間を作ったのを気付いた一週間という事らしい。


「完全に時間の流れが違う…そんな事があるの?」

「本当だって、俺来たのは二日前なんだ。その証拠にほら、二日前にかって食べようと思ってたチョコレート、ここに来て出られないから分けて食べてたんだ。一列ずつ食べて八列目だから二日と半だ。」


興水少年は誇らしげにチョコレートを包んでいる銀紙を見せてくる。銀紙は五枚分のうちの四つは全部食べられており、もう一枚は四列ほど残っている。

成程と納得しながら、莉奈は言っていることが本当ならばこの結界内と外では時間の進み方が違うのかもしれないと推察する。二週間で336時間、一週間で118時間、単純計算で二倍の時間のズレがある。


「これは一体どうい事なんだろう………ってそれどころじゃない!! 出られないなら、この状況をどうかしないと!!」

「どうかするって、どうすればいいんだ?」

「私達はこの状況を何とかする為に来たの、目的はこの結界の起点を探す事なんだけど。」

「結界? 起点? …結界って漫画とかアニメでやってるあれ?」

「そうアレ。」


興水少年の疑問に莉奈は肯定しながら、第三部隊の初老隊員の『最近の子は漫画やアニメで不思議な事が起こっても受け入れやすい』と言っていたのを思い出した。

普通ならば隠蔽工作が難しくなるところだが、今回に至っては話が簡単に進みそうだ。


「あの、俺心当たりがる。」

「心当たりがあるの!?」


うんと頷くと少年は説明を始める。

それは丁度、五日程前の前の事。今いる空間が自分の力が引き起こしていると知った彼は、最近の少年よろしく自分が特殊な力を持っていると確信した途端、今の状態を忘れてはしゃいでしまったのだ。そこからは自分の能力を検証する事四日、この空間を動かせるようになったらしい。


「と言っても、限られた範囲しか移動できないんだ。多分それが結界ってやつなんだと思う。でさ、この空間に隠れたまま歩き回ってたら、あっちに気持ち悪いものが…。」


そこまで言うと興水少年の顔色が少し悪くなる。何かとんでもないもの見たのだろう。少し気の毒だが、今は緊急事態…案内してもらう様にお願いする。少年は少し顔色を悪くしながらも頷いた。




地下に潜った空間からゆっくり歩くこと五分、それはあった。天子が予想していた本殿よりさらに奥、そこには周囲の木とは違う一際大きな木が立っていた。


「なに…あれ。」


それはとても太く大きな木だ、しかし問題はそこではない。その太い幹の真ん中に人が埋め込められた、その人は木と同化したかのように上半身が外に出ており埋め込まれた箇所は硬質化して樹皮の様になっている。更に恐ろしい事に、その木の前には祭壇がありその上には…。


「うっぷ…死体を飾ってる…いや祭壇に捧げてるの? 解体して…。」


祭壇は赤黒くテラテラと光っていた、腑分けされた何かが木の前に肉屋の様に綺麗に並べられていた。

余りのグロさに莉奈も気持ち悪くなり吐きそうになるが、グッと我慢して見る。今、彼女に結界の起点を破壊する為に囮になっている天子の事を考えると、吐くなんて事をやっている暇なんてない。

やる事は一つ。


「ねえ。貴方だよね、この空間に引き込んだの。」

「え…うん。」

「だったらお願い、私をここから出して。」

「危険だよ!!」

「それでも!!」


莉奈は興水少年の目を強く見つめる、それは引くことない決意の表れ。それに押されたのか、興水少年は少し退きながらも頷く。

莉奈は接敵する為、今一度装備を確認する。手袋を付け直し、戦闘服の各部を確認すると腰のタクティカルベルトにつけられたポーチの中を取り出す。


「どうやって出れるの?」

「上へ飛んだ瞬間に俺が何とかします。」

「ありがとう。」


莉奈は腰を落として跳ぶ準備をする。


「おねがい。」

「解りました…俺にはなんだか解んないし、手助けも出来ないけれど頑張って!!」

「…っ、ええ!!」


そう言って、莉奈は跳ぶ。水面から飛び出す魚の様に。

飛び出した先は木の前、外に出た瞬間から香るのはむせるほどの錆びた血の匂いとそれが腐った臭い。再びこみ上げるが、グッと我慢して取り出した瓶を空中で投げつけた。

と同時に、莉奈はガスマスクを被り能力を全開にして発動。

瓶は空中でぶつかり、空中で混ざり木の根元に広範囲にかかった。

それに何か危機を感じたのか、木が動く。枝葉をしならして鞭のように薙ぎ払った。


「危なっ!!」


一撃目は着地と同時に座り、縄跳びの様に避け、身体を引いて避ける。すべてギリギリで避けれたが、目の前を通った枝が風切る音で逃げそうになる身体を心で必死に引き留める。

そして木が風を数回斬った数分後、突然木の動きが遅くなってきた。


「やった、予想通りだ。人が融合してるけど大部分が木ならやっぱり効くみたいだ。」


莉奈が最初に蒔いた液体、それは一つ一つはなんて事のない物だが、分子結合を操れる彼女はあるものを合成していた。


「グリホサートイソプロピルアミン塩製剤。今は使用禁止とされている『除草剤』よ!!」


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