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いつもの日々に  作者: ルウ
女の子の冒険
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女の子の冒険 探索

動けると思った瞬間は、すでに古ぼけた神社の境内にいた。身体が自由になったと言うのに、興水治孝は動けないでいた。なぜなら神社の鳥居をくぐった途端、身体の自由と引き換えに途轍もない吐き気が彼を襲ったのだ。理由は解らないが、恐らくくぐった時に感じたエレベーターが動く時に感じる浮遊感にも似た揺さぶりが原因だろう。そしてひっくり返りそうな位の気持ち悪さを落ち着かせていると、治孝は気付いた。


目の前の古ぼけた神社の前に男達がいた。


人数は良く解らない、沢山とだけしか解らない。


男達は全員、頭に猪の頭蓋骨を被っていた。


そして男達はその手にそれぞれ、赤錆びたモノを持っていた。


鎌を、鍬を、鋤を、鉈を、鋸を。


持って見ていた、今織の中に入り込んだ獲物を。


治孝は悲鳴を出しそうな口を無理やり噤み、後ずさりをする。しかし下がれなかった、頭を動かさず目だけを来た道を見れば、道は見えるが向こうへと行けない。慌てて前を見れば、目の前の男達がゆっくりとこちらに向かってきていた。

薄暗い神社、猪の頭蓋骨を被った男達、そしてその手に持った赤黒い凶器。

マズイ、明らかにマズイ状況に治孝はパニックになりながら走った。

更に畳み込むように、効いてしまった男達の恐ろしい声が。


「くれ、お前の腕を。くれ、お前の足を。くれ、お前の口を。くれ、お前の目を。くれ、お前の耳を…くれ、くれ、くれ!! おまえの、おまえ頭を!! 脳を!! よこせーー!!」


治孝は恐怖で逃げ出した、男達と見えない壁を左右にして走る。見えない壁は動かないが男達は走って迫ってくる。

後ろから迫る足音に必死に逃げるが、古ぼけた神社の境内は走るのには適してないほどに荒れていた。その結果、地面の窪みに足を取られて治孝はスライディングの様に頭から転んだ。


「ひっ」


振り返れば、真上に振り上げられた赤錆びた鉈をみた。




「うーん…手掛かり、ここにはないね。」

「そう簡単には見つからないよ。とは言え、これで行方不明者の四人全員の痕跡が消えた場所付近は回った。解った事はただ一つ。」

「だれも抵抗していないって事。だよね。」

「ええ、事前調査の画像と寸分変わらない状態だからね。」


日の暮れた山道、二人は軍用の懐中電灯を片手に地面を照らしてスマホに映った事前の調査で映した画像と現地を見比べていた。ところが、全然差がない。しかも四人全員だ。

ただ何もないという事は、それが拉致や暴行ではないという事だ。


「だったら、どこに行ったんだろうね。捕まったにしては痕跡ないし、消した後もない。」

「…だったら、莉奈ちゃんちょっと静かにしてて。」

「何するの?」

「頼んでいた新装備の試運転を兼ねてやってみようかと思って。」


そう言うと天子は、ポケットの中からストラップにつけられた小さな正方形の物体を取り出した。

天子は物体が付いた逆の方のストラップを持つと、くるくると回し始める。

あれ?と言う顔をした莉奈はその動きでそれが何か気付く。


「それって、空を飛ぶヒロインが虫を落ち着かせる奴だ!!」

「え、ああ、そうよ。と言うか古い楽器なんだけどね、私は知らないけど歌舞伎とか使うらしいし。」

「へーそうなんだ。…でも変ね、音が出ない。」

「それはそうよ、そういう風に調節してるからね。人が聞こえる音は基本的20Hzから20000Hz、これは調整して21000Hz以上にして犬には聞こえるけど人には聞こえない音に調整しているの。ただし、私の様な能力者は…感知できる。」


そう言って天子が更に回転を早くするが、目立って何も起こらない。あるとしても回す時の風切り音が少しするだけだ。しかし人には聞こえない音とは言え、音は音。音を視覚として感知できる天子には、周囲に音を波の様に広がる幾何学模様に見えていた。

波は周囲の物へとぶつかり、跳ね返り、反響していく。

反響し易いものとし難いもの、音を吸収するものにより天子の目には目で見るより細かな風景が見えていた。


「見つけた。」

「みつけた!? 何を?」

「こっち。えーっと。」


突然天子は藪に突っ込むと、しゃがみ込んでゴソゴソと何かを探し出す。何だと莉奈が見ている中で、立ち上がった天子の手には泥だらけの一本の釘。釘と表現したが、実際の大きさは天子の手より二回りは大きく、とても太い。

普通に考えればそれはただの釘なのだが、釘の側面にびっしりと文様が描かれていて、普通の釘とは思えないモノになっていた。


「なにこれ。」

「解らない。ただ、私が発した音がこれに当たった瞬間、変な周波数で反射していたのは間違いない。」


どういう事だと二人で頭を捻るが良く解らない。少なくとも側面に描かれた文様が何か解ればいいのだが。

悩んでも解らない、ではどうするか。


「こういう時は知ってそうな人間に聞くのが一番。」

「えー、こういう時は自力で苦労して何とかするんじゃないの?」

「餅は餅屋、出来ないものは出来ない。それにね莉奈ちゃん、人に頼る事は何も悪い事じゃないの。」

「うっ…。」


それを言われると莉奈は弱い。なにせ自分と東哉に降りかかる災いが来ると感じた途端、東哉達から離れる事を、躊躇なく実行して家出してしまう前科がある。

あの時、天子に拉致同然に連れられなければどうなったのか、今色々な事を知った後で思うとあれはとても無謀な事だったと良く解る。

だからこそ天子はあれからずっと怒っているのではないかと莉奈は思う。

それを少し頭から無理やり忘れつつ、話を続けた。


「莉奈ちゃん。一度フレイヤさんの所に戻ろう。」

「うん。」

そう言って二人は拠点に戻る。その二人を少し遠くの場所から見つめる複数の目に気付かずに。


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