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いつもの日々に  作者: ルウ
女の子の冒険
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女の子の冒険 二人と一体

田舎の学生が遊ぶ場所と言えば、大体が近くの商業施設に集まって遊ぶかスマホや友人宅で集まってゲームをするとかが主だ。なぜならば、都会と違って何もないからだ。

特に件の神社があるK県Y町は、北に日本有数の活火山がありその南に広がる裾野にある町であるため、本当に何もない。あるのは森林と畑と風光明媚な風景だけだ。

ただ何もない土地でできる事は他に一つある、それは総じてアウトドアと言う物である。




近くの街から東に走るスポーツタイプの自転車を走らせている少年が一人。

身体は大きく身長は180cm、顔は彫りが深い金髪碧眼の少年が緩やかな上り坂を上っていた。

暑い夏の真っ青な空の下、真っすぐの上り坂を上っている彼の名前は『興水治孝おきみずはるたか』と言った。

彼は世間では不良と呼ばれていた、原因はその日本人離れした見た目で周囲の人間に遠巻きにされていると言う事だ。名前の通り彼の戸籍は日本で、生まれも育ちもここだ。しかし母親は日本人だが父親はヨーロッパの人間らしく、その遺伝で彼はこの容姿になのだ。

とは言え都会では気にならないようなその容姿は、この田舎において迫害とまでいかないが少なくとも好奇や未知のものに対する目線になりやすい。

彼はその目にさらされ、遠巻きに見られ続けて荒れていたのだ。

その日はいつも通りの日だった、いつも通り遠巻きにされ居心地の悪い日々の週末。最近は遠巻きに見てくる人間の目を辟易していた彼は、憎みに染まりそうな心を振り切り、手を出したりしない様に人から離れる様に趣味に逃げていた。

去年、買ってもらったクロスバイクが強い日差しに蒸し暑い風を切って走る。

こうやって走っている時、治孝は嫌な事は全部忘れられた。

容姿に対する目、自分と違う異物に対する目、自分のコミュニティとは違うモノを見る目。

それを振り切るように走っていた。

暫く東へと走っていると、一際大きい森に獣道みたいな側道があった。いつもなら気が付いても気にしないようなその道に、とても強い日差しと蒸し暑さに頭が茹ったのか思考が纏まらないなかで妙に惹かれていた。

道の傍に自転車に鍵をかけて立てかけると、日差しから逃れるように道へと入っていく、何かに導かれる様に。




「最寄りの街から東に約15km程の森、そこにあった荒れた側道の入り口に自転車が置いてありました。両親に聞いた話によると昨年買い与えたクロスバイクで間違いないようです。鍵がかかっていた事もあり、興味本位で入って行った可能性もあるかと。」

「寄り道するような性格?」

「いえ、そんな人間ではない事は確認済みです。ご両親に聞いてみた所それはないと返答がありました。」

「フレイアさん。その子の能力は解ったの?」

「はい。学校の方に聞き込みをしたところ、恐らく『物体透過』か『物質潜行』の可能性が高いですね。」


高見原から西へ向かう山道、現場へと向かうトラック。その後ろに引かれているトレーラーに乗ったコンテナの中では、莉奈と天子ともう一人金髪の女性が調査報告をしていた。

金髪の彼女の名前はフレイア、緑のタイトなワンピースに白のジャケットを着こなす色気が漂うような美女だ。


「どうして解ったんですか? やってるところを見てたとか?」

「彼が不良と呼ばれるような事になった原因の一つだからです。どうも彼は覚醒する前に無意識に能力を使っていたらしく、壁や扉に肩や足が当たった時に透過してたらしく見られていたらしいですね。周りの人間は見間違い気のせいで済ませようとしたみたいですが、何度も続くせいで気味悪がって避けられてたらしいですよ。」

「うっわ、周りは気を使ったりして本人は知らない。改善出来たら上手くいくのに、本人が無意識だからどんどん険悪になって…荒れていって不良になるってパターンね…あるある、よくある。」

「あるの!?」


コンテナの中はちょっとした応接スペースのようになっており。固定されたテーブルと四脚の椅子、天井には明るい蛍光灯と壁のエアコン。ちょっとした居住スペースのようになっている。

テーブルに固定されたカップホルダーに入れていた甘めのカフェオレを飲もうとしていた莉奈は、驚きのあまり元に戻して天子へと向き直る。


「あるある。能力者が犯罪者になる定番よ。自分の能力のせいで社会から離されて、上手くいかなくなって犯罪に走るっていうね。」

「確かに。重金教授による全国統計によれば、社会との齟齬が一番多いと思います。」

「天子はあるあるが言いたいだけで、詳細が聞きたいわけじゃないのよ。」


莉奈は苦笑いでフレイアに返す。

実は彼女は人間ではない、指などの関節に目を凝らしてじっくり見なければ見えないほどの線が入っている。そう、彼女は古代遺跡から発掘され死蔵されていた所、風文によって修復起動された神代のアーティファクトである。最近再起動した為、以前の記録が残っていない。その所為で経験がなく、受け答えやがとても怪しい。


「申し訳ありません。まだ世間に疎いようです。」

「追々で良いんだよ。風文さんも私達について行って『勉強しろ』って言ってたんだから気にしなくていいよ。それで、他に情報は?」

「興水治孝の情報はそれだけですが。側道の先にこのような建物がありました。」


コンテナ内に取り付けられたディスプレイに出された写真を見ると、薄暗い森の中木漏れ日に照らされ、苔むした古い神社。趣を通り越して廃墟、ある意味雰囲気を持っている。しかし、次の写真がイメージを一変させる。


「ゔっ、フレイヤさんこれは…。」

「頭蓋骨、形からこれは人間じゃないみたいだけど…大きさからイノシシかな?」

「天子さんの言う通り、フトダマによるAIの画像分析によるとイノシシの頭蓋骨だという事です。」

「でも、この量は…。」


画像には祭壇の前に所狭しと積み上げられた、イノシシの頭蓋骨の山。普通の神社にはない異様な光景に莉奈は息を吞み、天子は動揺もなく冷静に分析していた。


「生贄? 量を考えるとかなり昔からある感じだけど…。」

「そちらは今、学園の方に問い合わせています。浄教授は『専門外だ』と言われまして、今学園内の人文学部へ依頼しています。」


流石の浄も専門以外では無理だった。莉奈はでしょうねーと呟きながら天子の方を向いた。


「それで、これからどうする?」

「最初の予定通りよ。」


そう話している内にトラックが徐々にスピードを落とし、目的地の到着する。そこは行方不明の被害者が消えた場所から等間隔で、大きめのトラックが駐車できる場所。

広い敷地、炊事場、管理棟、トイレ。

その場所の名前は歌川キャンプ場、事件のせいでキャンパーがほとんどいないキャンプ場である。




コツコツコツと曲がらない様にペグを打つと、莉奈はテントから伸びるロープを結ぶ。


「莉奈ちゃん、これどうするの?」

「下が芝生でも直に寝ると硬いから敷かないと眠り辛いらしいよ? とりあえずテーブル出して広げて。」

「はーい。」


テントがたつと天子がテーブルを設置、折り畳みの椅子を二脚テーブルを挟んで置く。

テーブルの真ん中は空いており、天子がそこに焚火台を置くと莉奈は薪を山の様に並べると手をかざし能力を行使する。


「ハイッと。」

「焚火ってこんなに早く燃えたっけ?」

「私の能力で急激に酸化させたの。燃えるのって化学反応の一つだから、私の能力を使えば簡単に火が付くんだよ。」

「便利ねー…。」


火が付く原理は大雑把に言えば、可燃物ここでは薪が酸素と結びつき熱を発生する事だ。莉奈の能力『ボンド』はあらゆる状況で使える能力だなーと、天子は少し羨みながら空を見た。


「どうしたの天子?」

「んー、仕事がなきゃいいなーって思ったー。」

「わかるー。」


荒事と仕事の合間、二人はちょっとした休息に肩の力を抜いた。


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