女の子の冒険 女子会は場所を考えましょう
「隊長!! どういう事ですか!!」
ドンッと重い音と共に吹き飛ぶ扉、飛んできた支社長室の扉を難なく片手で受け止める風文はマタかと溜息を吐く。
「何で東哉が!! …あれ? 天子? なんでここにいるの?」
「何でじゃないって、頭の横を扉が通り過ぎてビックリよ。いつもこうなの?」
「いや~いつもは違うんだけど。東哉がまた事件に巻き込まれてビックリしてつい…。」
「ついで毎度毎度、扉を飛ばされたら困るんだが…。」
「スミマセン直しておきます…。」
扉を吹き飛ばしてすごい剣幕で現れたのは莉奈である。毎度毎度と言われるほど彼女は扉を吹き飛ばす勢いで部屋に入ってきていた。内容はもちろん東哉の事である。
そして今は、天子に冷たい目で見られながら扉を修復している最中である。
「能力を使うのがうまくなったね~。修理業とかになる気?」
「そんな訳ないじゃない。一応ここの末席にいるけど、今の所私学生よ?」
「学園都市の能力者限定の育成コースだっけ?」
「そうそう。皆良くしてくれるわ…っと、修理終わりましたー。」
何度も壊しているから、朱里の手際が凄く良い。特に能力を使って修復をしているので早かったりする、修理工を目指してるのなんて言われても仕方がなかったりする。
彼女の能力『ボンド』は物質の結合と言う、東哉とまるっきり逆の現象を起こす能力だ。例えば化学実験で銅の酸化実験があるとする、普通はステンレスの皿の上で銅の粉末を熱すれば良いのだが莉奈の能力にかかればその実験は意味をなさない。彼女の能力はあらゆる結合を工程をすっ飛ばして行う強力かつ危険な能力だからだ。
彼女が同じ実験をするとするのならば、掌に銅の粉末があれば一瞬にして酸素を銅に結合できる。なんなら空気中の物質を使い、砂糖(ショ糖)だってアルコールだって油だって作れると言う規格外の能力なのだ。
扉の修理だって蝶番を上手く結合させることによって、元の形にだって形成できるようになってきた。
「たしかに今私の状況じゃ修理工って言われても仕方がないわよねー。最近の私に振られる隊の仕事は試薬の生成ばっかりだし。」
「ああ、なるほど…。」
「どういう事?」
最近の仕事、試薬の生成と聞いて天子は桂二が言った事を思い出す。おそらく高見原に入る試薬の流れから実験施設の割り出しをしようとしているなと天子は当たりを付ける。
「今に解るって~。それより聞いて聞いて、誠一君が昔を思い出したの!!」
「マジッ!? 良かったねー天子。昔から貴方彼のこと好きだったからね。」
「えっ………知ってたの?」
知られていると思っていなかった天子は顔を赤くして慌てる。
「いつから? あなた誠一君が711番って、知ったの最近でしょ!?」
「いやー最近思い出してみたら、ちょくちょくあなたが余所見をする時があったのを思い出したのよね。その時に貴方が見てた視線の先を思い出せば…。」
「ちょっとやめてよね…確かに見てたけど、そういう風に言われたら恥ずかしいじゃない。」
「私としては微笑ましいし、あの時見た二人が上手くいきそうですごく嬉しいわ。」
莉奈としては苦しみの思いでしかない研究所の中で、苦しみに必死に耐える女の子とそれを寡黙ながらも必死に背に庇う男の子。それが今じゃ女の子は強くなって、男の子の横に並んで立っている。それだけでとても嬉しくなったのだ。
「なんか、年寄り臭い笑顔よね。」
「なにおう!! うら若き乙女に年寄り臭いとか許さん。ここまでの経緯を洗いざらい吐いてもらうわよ!!」
恥ずかしさに思わず暴言を吐く天子。実際の所、したり顔でウンウン頷いている姿は年寄り臭い。そう言われてもしょうがないが、それはそれ乙女としてはいかんともし難いものである。言い合いながらじゃれあう二人に、執務机に頬杖をついて感情のない目を向けるものが一人。
「ここは女子会をする場所じゃないんだがね…。」
「あっ。」
「はっ。」
二人が動きを止めて見れば、風文がうんざりした顔をしている。バツが悪い顔をして二人が謝れば、風文はヤレヤレと話を始める。
「女子会をするなら下の個室を使うと良い。まあ、今回の仕事をした後でと条件はあるがね。」
気を取り直して分厚いカーテンを閉め電気を消して部屋を暗くすると、天井に設置してあるプロジェクターが光りはじめる。
「さて天子君、君を呼んだのは他でもない。依頼があるからだ。」
「依頼?」
「そうそう、報酬を対価にここの仕事をちょくちょく受けててさ。今日も莉奈に会うついでに風文さんが依頼だって事で来たの。」
「バイトか!!」
あながち間違いではない。天子と風文はツッコミを無視し、プロジェクターに映されたものを見た。
「今回の仕事は、K県にあるこっちの県との県境にある日本最古と言われている神社がある町だ。」
「…ここ町じゃなくて…村?」
「ここが中心部じゃない…この画像は町から数十キロ離れた場所だ。まあ仕事場はここだが。」
「どーゆー事です? 概要を教えてください。」
風文はパワーポイントを動かし話を続ける。
今回の仕事は、その神社の近くにある森林で、観光客が何人かいなくなっているという事で調査をしてほしいらしい。
近年、パワースポット巡りや御朱印集めなどで神社を巡る観光客が多い。今回の場所は日本最古と言われる神社でなおかつ有名なパワースポットであるため、休みになると癒しや開運・御朱印を求めて観光客が多いと言う。
「そこで行方不明者が出たと?」
「ああ、ほとんどが観光客で発覚が遅れた。行方不明の数は六人、内約は男四人女三人。」
「共通点はありますか?」
「特にはない。この三週間で六人が行方不明になっている。ペースが速すぎて、ワイドショーにでもなりそうでちょっと不味い事になりそうだ。」
「ワイドショーですか?」
「これを見てくれ。」
操作すると出てきたのはSNSの掲示板や動画による特集の一部が流れてくる。そこには行方不明の家族により捜索をお願いする投稿やニュースの切り抜きが流れている。更に変わると男二人の心霊系の配信動画が流れていた。
「この二人は?」
「行方不明の二人だ。どうも、行方不明の話を聞いて、収益を増やす為に来たらしい。結果は…。」
動画は深夜の森を懐中電灯の光のみで撮影している、何とも不気味な雰囲気を醸し出している。完全に三流ホラー仕立ての動画だ、天子は平然としているが莉奈は顔を隠して怖がっていた。動画は続いているが一人が唐突に消え、もう一人は怯えながら逃げ回り画面が暗くなって動画が終了すると言う物だ。
「一昔前のホラーかな?」
「こ、怖い。」
「とまあ、この動画のせいで話が広がりつつある。とまあ、話はここまでで依頼はこれの調査と早急の解決だ。」
「裏の世界がバレるわけにはいかないから?」
風文は首を振るとパワーポイントを操作し一枚の写真を映し出す。
「この子は?」
「興水治孝中学三年生。近隣の街に住む、不良の一人らしい。行方不明事件の数日前から居なくなったらしい。そして、追加調査で解ったのが『能力者』の可能性が高いらしい。そして、これだ。」
次の写真を出すとそれは、球形の緋色に光るソフトカプセルの錠剤の画像。それを見た事があった天子と莉奈は声を合わせて声を上げる。
「「偽神薬!!」」
偽神薬関連の事件だと解る今回の事件、天子は前回の学園を思い出して顔を曇らせる。
「ちなみに莉奈、お前も行くんだ。」
「えっどういう事ですか!?」
「今回の件は一貫として山の中の可能性がある。そこでだ、最近の能力を使ったサバイバル訓練の総ざらいだ。天子をきっちりサポートしてこい。」
「ええええええー!」
唐突な話に莉奈は叫ぶ。それを見て天子は、莉奈と一緒に戦える事と不安が入り混じったとても複雑な顔をしていた。




