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いつもの日々に  作者: ルウ
悪意の残響
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悪意の残響 時間稼ぎ

怪物や妖怪は世界中に目撃情報がある、重金教授曰く人型に近い化け物ほど元々能力者の可能性があると言う。

元々能力者とは人間をベースとした強化や能力が使えるものである。それに対してヒルコは能力者に何かしらの動物や昆虫が混じった状態に強化や能力が使えるのだ。

そう考えると能力者とヒルコ、どちらが強いのか解るし今、戦っている誠一と東哉がどれだけ危険な状況か解るだろう。




最初の一撃は誠一かと思いきや東哉の一撃だった。右手に持つ鉛筆を投擲する、虎人に命中する直前に霞のように消える。それは東哉の能力『分解』でマイクロサイズまで分解されたセルロースと黒鉛の霞だ。


「誠一、避けるか防御!!」


誠一の返事を聞くよりも先に東哉は二度の能力を発動する。分解時の放出エネルギーを使った着火だ。瞬間爆発、虎人を爆炎が包む。

誠一はトンファーを掲げ当然のように耐え、いつもの様に突撃するが…。


「ぐっ」


黒い爆煙の中から、伸びる人と虎の要素が合わさったような腕が伸び誠一の腹にめり込んでいた。

誠一の口に血の味が広がる、励起法の防御が破られた。自信があった防御が抜かれる、それが誠一を驚愕させた、動揺して思わず腹を押さえようとすると今度は頬に拳がはいる。

余りの威力に後ろに吹き飛びながらも、誠一はなぜこんな事になったかと考えると、師匠との会話を思い出す。


『誠一、能力と励起法だけだと厳しいわよ。』

『どういう事ですか?』

『能力と励起法は自分の身体能力を強くできるけど、防御の面じゃ不安定なのよ。特に対能力者としてはね。』

『能力者だけですか?』

『能力と励起法は神域を纏った攻撃で弱体化するのよ。例えば神域を纏った近接攻撃、例えば神域を追加した能力とかね』


そうあの時、言ってた通りならば神域は神域によって中和される。思惟は誠一の神域はとても狭い代わりに普通の能力者以上の空間処理精度が強いのだ。その誠一の神域を中和し突破できるという事は。


「単純に俺より化け物って事か。全力で抗わせてもらう…。」


目の前の虎人は手を振り上げている。テレフォンパンチと言われるほどの解り切った軌道だが、想像以上の力とスピードが乗っている。まともに打ち合えば不味いこの、しかし誠一は信じて前に進む。


「やらせねーよ!!」


振り上げた虎人の手を掴むのは東哉。両手で押さえつけると同時に分解の固有能力で攻撃を加えるが、先ほどの誠一と同じで能力が通らない。通らないまま虎人の膂力で振り回されそうになる。


「手を離せ!!」


東哉に手を離すように言いながら、踏み込んだ誠一は全力で拳を突きこむ。


「ギャアァァ!!」


手ごたえがあるが、効いた気がしない。鍛錬初期に打ち込んだトラックの分厚いゴムタイヤに突きこんだ時と同じ感触だったのだ。

だが少しは効いたのだろう、虎人は叫ぶように痛みを訴えていた。


「畳みかけるぞ!!」

「応よ!!」


痛みに悶える虎人に誠一は追撃を掛ける。貫き手で頭を狙い嫌がって避けた瞬間、逆の手で腹を狙う下段打ちそして後ろ足で蹴って貫き手で頭を掴むと地面に叩き込む連撃『地を食む龍』。

そして叩き込まれた地面には東哉の手が。


「誠一すぐに退け!!」


同時に二人でその場を飛びのく。虎人は起き上がり二人を追おうとしたが足が動かない、見れば虎人の足が地面へと沈み込んでいた。


「どうだっ!! ここ最近、桂二との勉強で知ったダイランタシーだ!! なんだよ非ニュートン流体ってよー!!」

「何で文句言ってんだ?」


ダイランタシーとは水を含んだ砂を勢いよく踏むと、粒子間の配列が変わり間隙が増えて水が吸収される事で砂が乾く現象だ。東哉はこの性質を利用して、水を大きく含んだ地面を粒子状に分解する事によってこの現象を作り出したのだ。(水は男がスプリンクラーの配管を破壊したため沢山あった)

そしてダイランタシーの性質として、勢い良く動こうとした時にその周囲がドロドロとした泥が固くなるのだ、それを応用して東哉が虎人を泥の中へと一時的に封じ込めたのだ。

とは言え一時的だ。虎人は簡単に抜け出てしまうだろう。


「だから、もうちょっと付き合ってもらうぜ!!」


東哉は全力で分解にかかる、虎人を中心にして地面を分解する事で継続的にダイランタシーの沼を作り出しているのだ。それを見て誠一は追撃を掛けようとしたが、それは阻まれる、虎人が衝撃波を伴うような強烈な咆哮をあげたのだ。


「ぐぐっ」

「耳が痛いっ!!」


咆哮が二人を阻む。どこぞの狩ゲームかよと悪態を吐きながら誠一が耳を塞いでいる中、虎人が地面から抜け出す。アドバンテージが無くなり一からかと東哉が呟いてた時に、再び携帯電話がなる。

東哉がでてスピーカーに変えると、間髪入れずに声が発せられる。


「もうすぐだ!! 後、十秒!!」


声に誘われる様に虎人が跳び、東哉へと拳が迫る。


「九!!」


誠一が空から振り下ろされる拳をトンファーを交差した腕で受け止める。

「八!!」


逸らすように受け止めた腕ごと上半身を捻る、同時に頭を降ろすように後ろ足で蹴り上げる。


「龍尾!!」

「七!!」


しかしその足を虎人は掴んでしまう、誠一は軸足を蹴って跳びその足で蹴る。


「六!!」

「龍尾・双龍。」


蹴った足もやはり分厚いゴムを蹴った様だ。掴まれた足も蹴った勢いではずれる。


「五!!」


隙を突く様に虎人の目の前に鉛筆があった。


「俺はまだ弱いが、忘れてもらっちゃ困る分解からの分解!!」

「四!!」


広がる黒煙が虎人の顔の周りを覆う。


「三、二、一!!」」


それにより、桂二のカウントが早まりゼロとなる。

砂を踏みしめる音で気付き、虎人の耳が動き警戒態勢となる。目の前の二人は来たかと思い振り返ると。


「足止めご苦労さん。後は任せると良い。」


そこには紅い軍服の様な服を着た男。遠くの生徒会室の破られた窓から覗く天子にはその男の名前は解っていた。


「三剣隊長…相変わらず胡散臭いわね。」

そうそこに居たのは第三部隊の長、三剣風文本人であった。


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