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いつもの日々に  作者: ルウ
悪意の残響
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悪意の残響 葬儀屋

今にも爆発しそうな火山みたいな誠一が今にも飛びだしそうなその瞬間、暗い室内にパチパチと拍手が鳴った。


「いやぁ、凄い怒りだ。ひっひっ、これが若さかねぇ。どう思います、鮫島さん?」

「くだらない口をきいてないで、対処しろ。」


暗がりで見えていなかったが部屋の一番奥、ここの施設の心臓部だろうかコントロールパネルがある作業台の前に座る二人の男がいた。

一人は偏光サングラスをかけ、身体のサイズが合っていない大きなフーデッドコートの襟周りで口元を隠す男。

もう一人は鮫島と呼ばれた五分刈り、頬に傷の走る黒服のスーツを着た男。


「ここを処分する日と襲撃が被るなんて面白い。こいつはとてもラッキーだ。」

「何がラッキーだ。余計な仕事が増えただけだろうが。」


どこまでも人を食ったような喋り方に、もう一人の男が苛立ったように返す。だがそんな会話もここまでだった。


「それはともかく、仕事だ。火葬屋。」

「あいよ、葬儀屋。」


二人の男が立ち上がり、誠一と天子の二人の前に立つ。誠一は無意識に天子の前に立ち塞がると、二人を睨み付ける。


「誰だ、あんたら。」

「ああ、失礼。我々『葬儀屋』と言います。今回はここの処分を任せて頂きました。こっちはうちの社員の火葬屋と言います。」

「よーろしくねー。」


まじめな受け答えと気の抜けるような喋り方、誠一は警戒のレベルをさらに上げフードの下から観察する様に睨みつける。


「処分…ここの人間をどうするつもりだ。」

「どうする…とは? 先ほど申した通りです。」


無表情に言う黒スーツの男に、誠一の心の中で確信に変わる。


「お前ら、ここにいるクローンを殺すつもりだな?」

「はぁ、お前何言ってんの?…ああ、あれか自分でなーんも考えられない人形に同情しちゃってんの? キッモ」


ケラケラと笑う火葬屋と名乗る男は、同時に両手を目の前まで挙げる。


「でも、全部。綺麗に燃やしてあげるから。どうでもいいけど…ね!!」


途端、手からボタボタと粘性を持った液体が流れ始める。それを隅々まで届く様に男は手を振る、物凄い匂いがする液体がまき散らされていく。


「これは…。」

「誠一君これマズイ、口を覆ってあまり吸わないように。多分、これは可燃性の何か…嗅いだことがあるのが数種類の何かが混ざってると思う…『カクテル』って言う燃焼物質だと思う。」


『カクテル』数種類の可燃物を混ぜ合わせることにより普通以上の燃焼をする液体だ。数年前から軍事や犯罪組織に売られていると言う。


「犯罪組織が証拠隠滅でテルミットの代わりに使うようになったって聞いてたけど、製造元があれだと思う。」

「へー、俺のこと知ってくれてるんだ。嬉しいねぇ、燃やすのが勿体ないぐらいだ!!」


火が走る。

円柱状の水槽の間を火が走る、ひりつく様な熱が一気に部屋を満たし赤一色へと塗りつぶす。


「ぐっ。」


火にまかれる、いくら励起法や能力が使える二人とは言え形のない火は防げないし特殊な燃焼材の高熱の為ダメージも通る。


「まっ…ずい。」

「これは…防げない。どうする。」


一方、強い火の中二人は意気揚々と誠一達が入ってきた入り口と逆側の扉から出ていく。


「まっ待て!!」

「あはは、今回は仕事だから帰るけどー今度は遊ぼーねー。」

「ああ、私の自己紹介を忘れてました。私は『風葬屋』と申します。葬儀と後始末のご用命がありましたらご連絡くださいますよう。命があればですが…。」


二人が纏うのは風の壁。それで炎を阻んでいた。誠一達は高温の炎に阻まれ近づくことが出来ない。むざむざと逃がすことでしか出来なかった。そして火の回りが早い、誠一達も逃げる事が出来なかった。


「誠一君、火の勢いが強すぎる。中に入り込みすぎて脱出するのが難しいわ!!」

「壁を打ち抜くか!?」

「炎で建物が脆くなってる。下手に崩したら建物が崩れるわ!!」


一か八か、ダメ元でやるか。誠一と天子が考えていた時。突然声が聞こえた。


「いや、すまない。本業の方を優先してしまって後手に回ってしまったよ。」


燃え盛る炎の中、響く声。一瞬、今さっきの二人の声かと思いきや違う声だ。誠一は周りを見るが見えない、あるのは炎の赤のみ。だが、天子は声に気付いたのか驚いた顔で呟くように言った。


「紫門さん!?」

「ああ、久しぶりだな。ちょっと本業で顔を出せないが失礼するよ。伝言だ、君の友達の東哉君がトラブル中らしい、相手は未知の能力者の可能性があるらしい。」

「えっ!?」

「そこで君たちをそこまで跳ばす。行き場所は君たちの学校の屋上だ。」

「ええっ!?」


突然の話に天子は驚く。誠一は話の展開についていけず固まった。


「時間がない。すぐに行くんだ。」

「ちょ、紫門さん。跳ばすってまさか!?」


二人の身体が突然、浮遊感に襲われる。下を見ればさっきまであった床がない。

「うわっわわわわ!!」

「やっぱりー!!」


黒い穴に吸い込まれるように消える二人。遠ざかる声が消えると穴が消え、同時に床から伸びるように紫門が現れた。


「さて、燃え尽きる前に回収できるところまで回収するかね。」


ニヤリと嗤う紫門の手には一つのUSBと書類の束。書類の一番上には『薬品製造機マニュアル』と書かれていた。


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