表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いつもの日々に  作者: ルウ
悪意の残響
65/174

悪意の残響 突入

高見原中央区の八巷通りから海岸線に沿って南へと行くと、太平洋に面したこの街の貿易の為の倉庫街がある。積み上げられたコンテナと倉庫が立ち並んでいる。その一画にあるとある倉庫の入口を監視する様に、誠一と天子が建物の陰からうかがっていた。


「しかし、ここまで話が大きくなるとはね。」

「そうよねー。悪い意味でのわらしべ長者って感じだし。」


二人はここ数日の出来事について思い出して、この街の治安の悪さを頭痛がする思いだった。最初は路地裏でカツアゲしていた不良を沈めて、そこから聞いた半グレグループを叩きのめし、さらに脅して聞いた話から詐欺グループを強襲。とまあそんな事を繰り返していたら、大きな犯罪者グループを二つと四つの小さなグループを壊滅させた上に警察に突き出していた。


「なんか思いもよらない方向になってきたな。桂二の依頼は全然進んでないし。」

「仕方がないとは思うよ? 私もちょーっと思うところがあったからアイツら許せなくて手が出ちゃったけど、誠一君もノリノリでやってくれてたじゃん。」

「いや、昔から…なんでか知らないけど、誰かが理不尽な目にあってたら助ないとって気持ちになって前に出てしまうんだ。」

「ふーん…そうなんだ。」


その言葉を聞いて売れ素襖にする天子に、誠一は少し気恥ずかしくなって目を逸らす。


「まあ、依頼云々はともかく目の前のあれは見逃せない。そうだよね?」

「ああ、その通りだ。誘拐し人を売るだなんて許しちゃ置けない…。」


義憤に燃える誠一、天子は笑う。

路地裏にたむろしている人間が噂していたのが、最近何かと人が消えることがあるという事だ。誠一と天子はその噂をいくつかの犯罪グループを潰すために聞き込みをしている時に聞き、天子が若い女性を騙して連れ去るところを感知しており追跡したところが今である。

あいてはいわゆる人身売買組織だ、能力者もかかわっている可能性が高い時点で気は抜けないと二人はこれからの手順を話し合っていた。


「とりあえずは、入り口の見張りをどうする?」

「んー、見張りは…二人かな? 監視カメラの類はないみたい? いやあるけど、倉庫街の監視カメラだと思う。」

「入口の奴らを手早くやれば、中には伝わらない。」

「やるなら狭い所で、がセオリーだしね。問題は中に入ってからかな? 罠もあると思うけど。」

「それは俺がやる。少なくとも頑上さと防御と言う面では君より強いよ。」

「あはは、頼りにしてるよ。」


大体の方針が決まり、二人は戦う準備を整える。誠一は指抜きの手袋と一体化した腕当てを付け、その上から濃紺のパーカーを羽織る。袖口にはこの間も使ったトンファーを忍ばせ、フードを降ろす。フードの縁には龍を模した刺繍が目立たないように入っている。

天子は何時も掛けてるアンダーリムの眼鏡をケースに入れて鞄にしまうと、左腕に銀色の腕輪を通す。そしてその左手を肩口まで挙げると空中を掴みその場で一回転する。すると天子の身体を黒い霧のような物が纏わりつき、一瞬にして光を通さない漆黒のレインコートを身に着けた。


「それ何度見てもすごいな。『黒霧』だっけ? 一瞬で着替えられるのもそうだけど防御力高いんだって?」

「見た目は黒いレインコートだけどね、防御力は先生お墨付きだよ。あらゆるエネルギーを吸収してこの腕輪にため込む『儀式織』の一品だって。物理攻撃もある程度なら運動エネルギー吸収と言う形で阻める優れものだよ。」


天子が言うには、その装備は霧島一族と言われる戦闘系の能力者集団が身に纏っていたと言う物らしいのだ。しかしその説明よりも今はやる事がある。


「それより行くよ、誠一君。」

「ああ…先陣頼むよ。」

「ええ、行くよ。」


二人はフードを目深に被るとともに頷き合い、倉庫へと目を向ける。

天子は膝の力を抜き、重心が少し落ちたと見えた瞬間その姿を消した。

『霧島神道流』の歩法が一つ『跳び雷』、力を抜いたと同時に励起法で強化した膝で跳ぶ縮地と呼ばれる移動法にも似た技だ。

最初は誠一も驚いたが、ここ数日犯罪者グループを何度も潰している時によく見た技だ。いきなりトップスピードでいなくなるので誠一もいまだに目で追えないが、どこに行くのかが解っているので姿が消えた瞬間に彼も飛び出す。

物陰から飛び出した時点で彼女の姿は倉庫の入り口で見張りをするチンピラ風の二人の男の一人の真上にいた。

「がっ」

「なっ、何だ!?」


いきなり空中に現れた黒い影に1人沈められる。それを見たもう一人が動揺している、その脇腹に走りこんできた誠一が太鼓を叩くように掌を叩き込んだ。


「ごぼっ」

「うわっ、死んでないよね。」

「ちゃんと手加減してるよ、東哉で練習したし。」

「…酷くない?」


うめき声もせず一撃で沈んだもう一人にフードの下で顔を引きつらせながら安否確認をする。が、返ってきたのは酷い話だった。人がいない学校の敷地で、誠一と東哉が模擬戦をやった時に東哉にとっては格上との戦いを経験させると同時に、誠一は手加減を経験していたのだ。それにしても酷い。


「まあ、暫く動かないなら好都合。行きましょう。」

「ああ。」


ともかく二人は頷き合って中へと入った。


何処に隠れていたの顔言いたくなるほどの組織の構成員が、銃器片手にワラワラと出てくるが雑魚程度では誠一と天子の敵ではない。

誠一の役割はRPGでいう所のタンク。真っすぐの廊下の端から機関銃で撃たれても、励起法と能力でガチガチに固められた防御の前では豆鉄砲と変わらない。

天子はその逆で瞬間移動とも言えるほどのスピードで攪乱、壁や天井スレスレを走り三次元軌道で駆けまわり敵を倒していく。


「…ここは本当に人身売買組織のアジトなのか?」

「たしかに。タワー地下の予想見取り図は見せてもらったけど、あれほどの規模はここでは無理とは言えちょっとおかしい気がする…。」


二人がそう思うのは無理もない、何せ『商品』があるとしたら搬入口がもう少し大きくないとおかしい気がするからだ。倉庫街にしてはこの建物は狭い入口、倉庫の管理事務所としても逆に建物が大きすぎる。


「誠一君この間のもう一回できる?」

「…出来る。隙を作ってくれ。」

「了解!!」


集まってくる雑魚を最高スピードで蹴散らす天子、翻弄して彼女が注目を集めている間に誠一は近くの鉄骨へと歩き寄り手をしならせる様に近くの鉄骨を掌底で叩く。

グワンと鉄骨がたわみ振動が鉄骨を伝わり建物を震わせる。


「やっぱり、ここ倉庫じゃない。」

「なんだって!?」

「部屋の配置と奥にある隔離された部屋。多分何かの実験室よ!」

「チッ、なんで、こうも、実験好きが多いかなっ!!」


ワラワラと集まる人員を弾き飛ばしながら誠一は怒りに燃える、何に対して怒っているかも解らぬまま。


「方向はっ!?」

「こっち、人が来る方向‼」

「突っ込む!!」

「後ろは任せて!!」


二人は人が出てくる入り口に突っ込む、数人を退けながら角を曲がったところで誠一は後ろの天子を抱えて元の通路に戻る。


「えっ、どっどうしたの!?」

「曲がって約5メートル先に何かある。」

「何か?」


天子はそっと角から顔をだすと…。


「うわっ。」


首を引っ込めると同時に顔を出した角が削れ、壁に大きな弾痕が刻まれる。


「三脚に銃がついてた、確かあれは。」

「セントリーガン。」

それはセンサー付きの自動で銃弾が発射される、戦場で使われる強力な銃だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ