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いつもの日々に  作者: ルウ
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知識がないと見つからないものもある

朝日が上り始めた頃


あれから夜通し走り回って探した。思い付くかぎりの場所は既に行っていたからただ走り回っただけであった。結局見つけられなかった東哉は今家に向かっている。

東哉はあの時、思わず出ていってしまったがおじさんが何故自分に莉奈を忘れるように言ったのかが気になっていた。


「何がどうなってんだよ…」


昨日の工事現場から増えつづけている疑問は、一つも解決出来ていないのだ。

鉄骨が落ちた瞬間何が起きたのか。莉奈は何故に不安そうな顔で逃げたのか。おじさんは何故あんなことを言ったのか。その疑問について考えているうちに東哉は家の前まで来ていた。

玄関のドアを開けようと東哉がノブを回すと鍵がかかっていた。


「母さん、いないのか」


合い鍵で開けると東哉が徹夜して動いた体の倦怠感と共にリビングに行き、ソファーに投げ出すように倒れ込む。

彼は今にも眠りに落ちそうだ。


『とても瞼が重い。』


東哉の瞼がユルユルと落ちてきてもう少しで意識が離れそうになった時、ポケットに入れていたスマホが震えた。


「…莉奈かっ!?」


急いで携帯をポケットから出して見てみると東哉の母さんからのメールだった。

期待していただけ少し気を落しながらもメールの内容を確認する。


『母さんは莉奈ちゃんのお父さんと莉奈ちゃんを捜すためしばらく家を空けます。莉奈ちゃんは私達に任せて、きちんと学校に行きなさい』


「莉奈がいなくなったのに悠長に学校なんて……」


東哉は自分とおじさんに憤りを感じながらもある単語が引っ掛かった。


「学校…そうだ、誰か莉奈を見てるかもしれない」


思い付き彼は疲れを洗い流すためシャワーで汗を流すと、手早く身支度を終わらせると東哉は学校へ向かった。




東哉が教室に入って周りを見渡すと後ろ側の方で浩二と香住屋、蒼羽が談笑している。

彼が近づいて行くと浩二が気付いた。


「よっす東哉。珍しく一人でそんなに急いで?…どうしたんだお前、目の下凄い隈だぞ!?」

「…おはよう。あのさ。昨日、おまえ莉奈を見てないか?」

「はぁ?」


突然東哉が思いがけない事を聞いたからか、浩二がが不思議そうな表情をしている。

突然の話の内容で困惑させたかと東哉は、昨日の夕方から莉奈がいなくなってからの事を説明した。

工事現場で起きたことは、適当にぼかしながら話さなかった。東哉の中でも解決出来ていなかったし、何故だか解らないけど話してはいけない、そんな気がしていたからだ。


「…そんな、何処に行ったんだあいつ。」

「莉奈ちゃん…」


話が終わり香住屋と蒼羽がそれぞれ呟いた。

少しの空白、各々が何かを思い抱えていた。それから何か考える様に下を向いていた浩二が話始めた。


「俺、情けねえけど。お前に何を言えばいいかわかんねえ…。莉奈ちゃんが何を考えて姿を消したかは解んねぇけどさ。理由もなく居なくなる奴じゃねえし」


そこまで言うと下に向けていた顔を上げて東哉の方を見た。


「だけど東哉、何でも言ってくれよ。俺出来る事なら協力するからよ」

「私にも頼ってよね、友達なんだから。ね、天子?」

「うん、莉奈ちゃんも東哉君も大切な友達だから~」

「みんな…ありがとう」


代わる代わる言ってくれた三人の言葉を聞いて東哉は本当に嬉しかった。

彼は三人に向かって頭を下げると浩二が照れ臭かったのか、急いで話を戻した。


「んじゃ、俺は男子に聞いて見るから香住屋達は女子の方を頼む」

「わかった。私はうちの部活仲間から聞いておく、天子は、」

「解ってるよ、委員会の方で聞いておくよ。」

「だそうだ、東哉。貸し一な」

「高い貸しになりそうだ…」




話し合った後、彼らは朝のHRが始まるまで色々な教室行き、また休み時間ごとにも聞き回った。

そして放課後になる頃には全ての教室を聞き終わり。


「俺達の方は誰も見てないって、そっちはどうだった?」

「こっちも駄目だな。見かけたら連絡してもらう様に頼だけど…」


結局、知り合いに聞いても誰も莉奈を見ていない結果となった。

沈んだ気分を払う為に、東哉は鞄を持って勢いよく立ち上がる。


「…俺もう一度莉奈が行きそうな所を回ってみるよ」

「私は店のお得意さんとかに聞いて見るよ。何かわかったら電話する」

「あぁ頼む。それじゃ、また」

「おぅ、またな」

「東哉君こそ身体に気をつけてね」


みんなの返事を背中で聞きながら東哉は走り出した。

一人だけが切なそうにそんな俺の姿を見ているとは気付かず…




みんなと別れた後、昨日回った場所以外にも東哉は行ってみたのだが、莉奈は見つからなかった。

そして今、東哉は秘密基地がある木の傍にいる。

今日も来るかもしれないと思い来たのだが、昨日の晩から莉奈がまた訪れた形跡はなかった。


「これだけ捜しても見付からないか…」


東哉は弱気になってきた気持ちを奮い立たせ、次の場所に向かい歩きだそうとした時足が縺れてそのまま倒れた。

昨日今日と走り回っていた疲れか、足に力が入らないのだ。

仕方なく近くにある木に背中を預けて少し休み、その際だからと東哉は頭の中を整理するため今までのことについて考えることにした。


何故莉奈がいなくなったか。

何故おじさん達は忘れろと言った後に探すと言ったのか。

何故莉奈はあの危険な『スリング』を持ち出したのか。


そしていくつもある疑問の中で特に気になる事。


工事現場で鉄骨が莉奈に全く当たらなかったこと。


これが莉奈の失踪に関係しているんじゃないかと東哉は何となくそう思う。

しかし、あらためて考えてみると何一つとして解決していないことに思わず溜め息が出た。

体力が戻った東哉が立ち上がった時、彼はふと引っ掛かった。


「ん?確か『スリング』は家にあったもので作った…」


鉄骨が当たらなかった異常、異常な力を持つスリング。ベクトルが違う異常だが、異常なという意味であれば何かしらの繋がりがあるかもしれない。もしかしたら家に今回の疑問に関する物があるかもしれない。

そう考えた東哉は何か手掛かりがあるかもと、一縷の望みを抱きながら急いで家へと帰った。




家に帰り2階にある書斎に入る。東哉の母曰くこの部屋は、東哉が物心つく前に別れた父親の部屋だったらしい。

東哉が見回すと、そこには色々な部品が乱雑に置いてあった。壁の本棚も同様でジャンルなんて考えずに適当に入れられた感じであった。中でも一角は背表紙を見ても混沌としていた。


「何だこれ?『超古代科学』『量子力学』『空間波動学』『儀式概論』『脳内生化学』…全っ然解んねぇ…ん?」




彼が何かないか探していると、机の引き出しが開いていることに気付いた。以前東哉が家探ししたままである。自分の適当さが自分の首を絞めている…これではどうやって手掛かりを探すか、考えるだけで頭が混乱しそうだ。


「はぁ…さらに訳が分からなくなってきた」


どこまでも落ち続ける奈落の落とし穴に入りそう、考えるのをやめそうになる。しかし、ここで諦めたら莉奈が帰って来そうにないと思い、東哉はもう少し頑張ろうと思った。

引き出しの中を見るとそこには何かの資料を見付ける。

鍵付きの引き出しの中に入れているぐらいだから重要な物だとは思う。

だけどそこに書いてある文字は何語かすらわからなかった。


「また振り出しかよ…」


見えたと思った望みがまた消えていく、追い続けては逃げる砂漠のオアシスの様だ。

結局その後も書斎で捜したが莉奈の謎、異常に関するようなものは見つからなかった。


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