悪意の残響 儀式
『儀式』
それは桂二の簡単な説明によれば超常現象や魔法の様な現象を起こすオカルトの総称をいうモノだ。儀式の歴史は古く、最古の儀式『雨乞い』は紀元前の文明でもよく見られていたぐらいである。
その原点は祈りと願い、そして神の力の模倣である。
「儀式って言うのは、大雑把に言えば神の力の模倣だ。能力者は古くから神の末裔と言われているから、能力者の能力の模倣ともいえるな」
昔の人間は能力を使う能力者を見て神を想像した。今の様な文明になる前は、能力とは神が使う奇跡と同然だ。火のない場所で炎を生み出し、水を操り大地を潤す。風を動かし淀みを払い、大地を使い足元を整える。まさに神の御業と言っても過言ではないのだ。
「それを昔の人間が、感覚と知識で能力者の能力を模倣したのが始まりと言われている。歴史は変わり、模倣が技術となり神秘主義から魔法や魔術・錬金術、シャーマニズムから呪術・卜占・道術・陰陽術・霊媒術。数え上げればキリがないほどのオカルトが産まれ。今現在はそのすべてが通る儀式様式で括って、『儀式』と言われて学問にまでなっているんだ。」
「ふーん、で。僕らが今やってるこれは何なの? 見た目魔方陣だけど、この仕様書見てると塗り絵にしか見えないんだけど。」
「これは数秘術とカラーリーディングを組み合わせた、儀式学の一つの成果だ。とある教授曰く、儀式の性質は固定・振動・凝集・拡散を人の言葉にならない何かでプログラムされたものらしいそうだ。細かい話は難しすぎて俺にも分からないんだ。…まあ、それを利用してこれはこの中心に立つ者の能力に沿って、この学校の敷地にある何かを収集する魔方陣だ。」
「…要するに、これは僕の能力をうまく使う補助的な物って事か。」
「そういう事。よし、多分これでいいはずだ。」
そう言うと桂二はパンと手を合わせ柏手を打つと、唸るような複雑な声を上げる。不気味なようでどこか神聖な響きを含んだその声に拓海は魔方陣の中心で眺める。声は旋律へと変わり、それに伴い魔方陣が淡い光を帯びていく。
「その力は収集、中枢に立ちし柱の理に沿って集めよ‼」
最後の言葉と共に淡い光が拓海を包む。
「これは…聞こえる。色んな声が、先生の声、生徒の声。ああ、学校中にいろいろ響いて共鳴する様に…ん?」
「どうした?」
「東哉が誠一に絞られて死にそうになってる…まあいっか。」
「よくないって!!」
桂二は魔方陣の駆動を止めて、慌てて誠一を止めに行った。
暫く経って、芝生にはいつもの三人と一つの屍があった。
「誠一、やりすぎだって。」
「いや僕としては、もっとやれって感じだけど。」
「…拓海はともかく。誠一、世間一般じゃあれってやりすぎなんだ。」
「いや、東哉が強さについて聞いてきたから。強くなりたいんだろうなーって思って、師匠にやってもらったより手加減してやったんだが…」
「お前、自分の頑丈さを自覚しろっ‼ 同じ導士系でも能力の方向性に差があるんだから!」
誠一は正座して桂二に叱られ、拓海は死にかけの東哉にトドメを入れるかどうかを悩んでいた。
実際、桂二の言う通りで誠一は覚醒前から少し能力が発動しており、それを知っていた思惟がそこら辺を考慮して鍛えていた節があったりする。そんな限界ギリギリまで追い詰める様な鍛錬を手加減していたとはいえ、能力者として完全覚醒し身体増強系の極みともいえる誠一が行うと屍とかした東哉の様になる。
「…ま、でもこれで限界が解ったから俺も、もうちょっと行けるのが解ったな…」
桂二も鬼である。それを聞いて拓海はトドメをさすのを止めた、悪魔である。
「ま、まあ。それはともかく、桂二。進捗は?」
「抜かりない。屋上に仕掛けた儀式と拓海をリンクさせて学校内の声を集めて貰っている。」
「そうだねー、今のところは不穏な声は聞こえないね。ただ考えてないだけか、何かに阻害されてなければ大丈夫だと思う。」
のほほんと言う拓海に誠一は、これはひとまず安全かなと考えつつも一つ疑問が浮かぶ。
「拓海が言ってたけど、阻害される事ってあるのか?」
「あるかないかと言えばある。ただ条件があってな…。」
条件は儀式の種類によって色々あるが基本は二つ。
一つは中程度以上の能力者の神域によってその範囲内は無効化される。これは能力者の相性と神域の性質上である、説明が必要だが後日説明するので今回は割愛させてもらう。
もう一つは同じ性質の儀式、もしくは儀式を構成する『式』が同じ出入力変換式を使っていると会阻害される。
「なんかテレビみたいだね」
「あながち変わらんと思う。エネルギーを空間もしくはエネルギースポットから引き出し使えるように変換してテレビと言う名の儀式で現象を投影する。ただ、能力を模倣するから一部の人間からは偽式とか言われてる程だ。、それほど儀式って奴は上手く使わないと能力に押し負けちまう。」
「結構使い勝手が悪いんだな…ん? だったら、この作戦は上手くいかないんじゃないか?」
「そこは大丈夫、能力者であればそこに空白が生まれるし儀式だったらすぐに気付く」
だったら良いけどと考え込む誠一を見ながら桂二はスマホを取り出して連絡を入れる。それは別の側面から見る為の一手だ。
高見原中央区 高見原駅 駅ビル4階 ファーストフード店内
「でさ、そこで斎が怒っちゃっていつもの流れで大騒ぎに」
「苦労してるんだー、私の方も似た事があってさー」
何処にでもあるファーストフード店、そこで二人の少女が横並びで窓際の席を陣取っていて、ハンバーガーにポテト・ドリンク片手に喋っていた。一人は市内の高校、高見原学園の制服。もう一人は市外の制服に薄手のパーカーの少女。
ありていに言えば彩と天子である。テスト勉強の合間の色々な話し合いが、世間話になっていた。
「ん? ごめんメールだ。」
「誰から?」
「桂二君からだ…学園内に能力者がいる可能性あり警戒されたし…か」
メールの文面は桂二からの警告、そして何かあった時の為の根回し。天子は裏の意味を読みつつも、よくやるわと肩を落とした。あそこの部隊の人間、特に上の役職にいる連中は一筋縄ではいかない連中が多すぎる。と考えていると、彩がこっちを見ていた。
「天子、あなた…桂二君と昔からの顔見知りなんじゃない?」
「…ふふ、流石読心の能力者。バレバレかー」




