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いつもの日々に  作者: ルウ
悪意の残響
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悪意の残響

放課後の学習室、東哉は勉強に勤しんでいた。

以前は勉強が嫌でしょうがなく莉奈に促されて勉強をしていたが、今は自主的にやっていた。最大の理由が訓練の息抜きで、斎の兄である晴喜がやっているカフェで桂二とお茶をしていた時だった。




「東哉、お前強くなるなら勉強をしとけよ。」

「え? どういう事だ?」


突然桂二に言われた事だ。最初は何のことだと思ったが、言われた事で思わず顔を顰めてしまった。


「いや、冗談で言ってんじゃなくてな。これは能力者に必要らしいんだ」


能力者の力の源と言えば、脳である。一時期、脳力とか言って脳の力を高めようとか言ってはやっていたが、概ねそれと同じである。

脳には『記憶力』『集中力』『注意力』『思考力』『意欲』またそれらを総合する『直感力(いわゆる勘)』などの力がある。

中でも能力者にとって必要なのは『記憶力』『思考力』『集中力』だ。中でも思考力はダントツに使う、なぜならばこれは能力を使う中で『演算』に当たるからだ。

ぶっちゃけると、これらの能力を伸ばすには勉強をするか実地で色々経験するしかない。


「…ここでも、勉強かよ~。日々の訓練だけなら良かったのに。」

「そう都合よくはいかないよ、これも修行の一つさ。何かあってから考えるなんて、リスク管理上ありえん」

「えぇー」


桂二にたしなめられると東哉はカウンターに突っ伏した。それを見ていた晴喜は、微笑みながら一通の封筒を出した。


「東哉君は気分屋の所があるからね。ここは東哉君のやる気に火をつけてみようか」


東哉が封筒を受け取る。宛先には何も書いていないが、裏返すと送り主には小さく『リナ』と書かれていた。


「晴喜さん、これって。」

「昨日来た郵便封筒の中に入ってたんだ。僕宛の封筒に入っていて、東哉君にって書いてあったから恐らくね」

「ありがとうございます!!」


そう言うと東哉は待ちきれないとばかりに封筒から便箋を出して読み始めた。




拝啓 東哉お元気ですか? 梅雨も明け近付いて夏も間近に迫ってきましたね。

私は昔の友達の伝手で新しい生活を送っています。仕事をもらって名前を変えて学校に

通えるようになりました。友達には感謝しかありません。

話は変わりますが、風の噂であなたが能力者に覚醒したと聞きました。覚醒したという事は色々大変な事にあった事がうかがい知れます。そうして能力者 貴方に覚醒した貴方はもう気付いているかもしれません、五年以前の覚えてない出来事で私が逃げているという事に。それは貴方が考えている通り、間違っていないと思います。と言っても私の口からは語れません、その時の事を聞いて貴方がどんな事を思うか解らないし、傷付いてしまう事を解っていては話す気にはなれなかったのです。五年前の出来事は貴方が思う異常に危険なのです。


(中略)


あなたは私を探してくれるかもしれません、でも私は今のままでは逃げ続けるしか他がないのです。以前も書きましたが、私を探さないでください。


いつか私たちが会えるその時まで。




「ううっ、莉奈~」

「うわっ、いきなり泣き出した…桂二君? 大丈夫なのかい?」

「最近こんな感じなんですよ。」


手紙を読みながら泣き出した東哉に、晴喜は口を引きつらせながら引いていた。


「そうなんだ。なんか東哉君変わったねぇ、前と違って地に足がついてる気がするよ。そう言えば莉奈ちゃんも変わったね、前はあんな手紙を書くなんてしなかったのに」

「そうなんですよ晴喜さん‼ 昔から文章書くのが苦手で、読書感想文何て二行で終わる莉奈がこんなに長い手紙をくれるなんて‼」


だよなあと晴喜と東哉は顔を見合わせて頷き合っていた。桂二は緑茶を飲み、顔を背けながら話に入る。


「まあ、好きな相手から手紙をもらったんだ、彼女に心配させないためにも勉強頑張れよ。」

「なあぁっ!! 桂二。おま、それっ」

「ちなみにみんな知ってる事だ、今更だぞ」

「好きなのは隠してねぇーけど、それをストレートに言うのとは違うだろぉ!!」




と言う経緯があって東哉は一発奮起で勉強を始めたのだった。とは言え、今まで勉強に興味が持てなく全然していない状況から今では思うように進めれなかった。能力の覚醒から理数系は何となく上手く出来るようになっていたが、文系はボロボロと言っていいほど出来ない。


「あーなんで理数系じゃなくって普通科に行っちゃったかなー」


莉奈について回って進路を決めてしまった事を今になって後悔してしまった東哉。

今まで莉奈を基準にして色々な事を考えてきた、依存していたと言っても過言じゃない。しかし、こうやって彼女と距離が出来てから東哉は考えるようになった。自分のしたい事、他人との関係、自分の今、そして自分の未来。


「俺、自分として生きてなかったんだな…」


俺は今初めて自分の足で歩き始めた気がする、なんて東哉は何か悟った気になっていた。

そんな時、妙な音が書聞こえる。耳をすませば何か妙な唸り声の様な声、顔を向ければそれは。


「換気口?」


部屋の隅、天井部にある換気口から何か聞こえてきたのだ。そこに近づいて耳を澄ませば聞こえるのは。


「あいつは死んでいるはずだ、生きていれば殺す。今度こそ殺す、死んでいても殺す。彼女を奪うあいつは殺すんだ。邪魔者は殺す、僕の能力は無敵だ。だから…」


あまりにも悍ましい声で、恐怖しか感じられない事を言っている。思わず声を上げそうになったが口に手を当てグッと我慢、声の主に気付かれないようにゆっくり席に戻る。

冷や汗が流れる中で東哉は気になる言葉を思い出す。


「能力? 学校に俺以外の能力者がいるのか!?」


それは何かの事件を連想させた。


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