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いつもの日々に  作者: ルウ
喪った影を探して
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一旦、休み

高見原タワーの最寄り駅に普段着姿の四人は集まる。襲撃したときの姿ではない、いつも通りの服装で最寄りのアミューズメント施設から帰ってきた設定だ。


高見原市海見区綿水駅。駅ビル屋上公園。


海を臨むそのビルは地下鉄の上に建てられた駅ビル。その屋上にある公園の一角のベンチで誠一は項垂れていた。


「あーしんどい」

「お疲れ様、誠一君」

「ああ、ありがとう天子さん」


天子から渡されたペットボトルのキャップとると、一気に煽り息を吐いた。


「あー、きつかった。最後のフランベルジェって奴、一・二合ほど合わせてみたけど経験が段違いだわ」

「あー、あれは退いて正解。誠一君と相性が最悪だし」

「誠一との相性が最悪って、そんなにとんでもない奴なの?」


そこに有名アミューズメント施設の袋を持った彩が現れて疑問を口にした。


「私の能力は音や振動、いわゆる波動を視覚として見ることが出来る。だからあのフランベルジェって奴の能力が解る。彼の能力は多分『振動』ね」

「うわ、それは厄介だわ。立ち回りを見る限り私たちと同じ接近戦のプロ、それで振動ときたら身体表面の振動波による破壊や得物を持ってからの高周波ブレード擬きかな? とくに組技が得意な私と素手の誠一にとっては天敵になるわ」


その推察は概ね合っていた、実際のところ彼の戦闘スタイルはナックルガード付きのナイフ二刀流と投げナイフによる高周波ブレード攻撃だからだ。どんなに防御を固めていても、バターよろしく切り裂かれる。強化され銃弾や攻撃のほとんどを受け止めた誠一でさえ危ない可能性があった。

そう考えると、先に決めておいた合図で撤退した判断は間違いなかったと誠一は思った。


「まあ今回の件で立ち回りとか事前調査不足とか色々と問題点はあるが、ひとまず作戦成功ってとこだな」


そこでこれまでの会話を締めるように、くぐもった桂二の声が誠一の隣からかかる。その場の桂二以外の目が集まるが、その目は怪訝であった。


「なあ、桂二?」

「どうしたよ?」

「なんで着ぐるみ? あと何でクマやん?」


誠一の隣では黒いクマの着ぐるみがノートパソコンを扱っていた。話の内容的には、それは桂二である。

山を越えた隣の県で流行りのゆるキャラの着ぐるみだが、虚ろな目をしたその容貌で黙々とキーボードを打つ姿は不気味である。


「その着ぐるみの手で、よくキーボード打てるな」

「慣れだ。あとこの格好は、下の催事場でイベントやっているからカモフラージュで借りてるんだ…よしと、今回の資料は纏めた。」


そう言うと桂二はノートパソコンを閉じると、傍らに置いていたタブレットを皆に見せる。そこにはこの周辺の地図に何かが書き込まれたものだった。


「これを見てくれ、今回の地質音響探査の大雑把な結果だ。見ての通り地下鉄以外で七本ほどの地下通路があった。今回の探査では詳細は解らん。ただ一つは確実だ。」


桂二が指し示す一つの線、その延長した先をピンチアウトするとそこにはこの間まで調査に行っていた場所。


「桃山薬品工場!!」

「地下道で繋がってた、どうりで薬品工場の人間の記憶にないはずね」


妙に納得した彩が苦虫を噛みつぶしたように顔をしかめた。工場の中に出入り口のないスペースを作り、そこを地下道で繋げている。工場の従業員に隠匿し、地下道を使い物資を搬入出荷していたと思われる徹底した秘匿研究所。


「あそこに何かあるのか…、どうすればいい桂二」


強張った表情の誠一、それに対して桂二はすんなりと答えた。


「いやその前に、定期テストだから一旦休みだ」




私立高見原学園の図書室の隣には、学習室と言う場所がある。空調完備、衝立がある個人机、数人で集まって教え合うテーブルもある。

六人掛けの対面テーブル、その一席で頭を抱えている男がいた。

東哉である。


「だーわっかんねー」


彼の目の前には教科書が開かれていた。教科は国語、英語と歴史と言ういわゆる文系の教科だ。東哉はそれで勉強をしていたのか、顔をしかめて頭を抱えていた。

対面に座り同じように教科書を開いて勉強をしていた浩二は、そんな東哉の姿を見て頭をかしげる。


「どったの東哉」

「全然わかんない…」


東哉の成績は決して悪くない…のは以前の話、実は彼の成績は莉奈が頑張って東哉にさせていたから維持されていたのだ。頭は悪くはないのだが勉強嫌いの東哉に、莉奈は計画的に行わせていた。その為、東哉の成績は低くはないものの一定以上の成績を維持していたのである。


「東哉。お前、莉奈ちゃんがいないからって怠けてたんじゃないだろうな」

「…違げーよ。その証拠に理数系は問題ない」


そう言って理数系の課題とテスト範囲を勉強し終えた教科書は隅に寄せられていた。その課題を後ろからとる手があった。


「ふむ、確かに出来てる。いい事だが、理数系だけじゃなく文系まで頑張りなさいよ」

「そうそう~…、でも理数系だけって東哉君どうしたの?」


斎が東哉の課題を見れば、確かに出来ていると頷く。いままでそんなに得意ではない勉強、それも理数系だけ得意になったような東哉に天子が疑問を寄せる。

実はこれ、能力者としての覚醒が関係していたりする。

能力者の能力は魔法の様な現象を引き出すが、実の所は科学技術の延長線に過ぎないのだ。

それ故、能力者である東哉の頭の中では、膨大な演算と物質に対する認識が研ぎ澄まされている。それが副次的に理数系の理解を深める事となっていたりする。

そんな事情を知らない東哉は、誤魔化すように笑うしかなかった。

そんな時、一人の男が学習室に入ってくる。


「おっ、生徒会長じゃないか」


浩二が言う通り、彼はこの高見原学園の生徒会長だった。


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