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いつもの日々に  作者: ルウ
喪った影を探して
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影を探して 手掛かり

高見原の開発は遡る事、約50年以上前から始まった。太平洋に面する森林の中にある村を中心に桃山財閥が主導となって開発を計画したという。

この時の計画では、高見原は海側の森林を伐採して大きな港を作りアジアの玄関口の一つとなる予定ではあった。

しかし途中でその計画は妙な方向に変更された。開発初期段階で、とある大学が高見原で見つけた後に固有種『珠木たまき』と言う植物が原因だ。

この樹は色々な謎がある植物で、一番の不思議な点は異常なまでの生命力と成長力だ。例えば開拓する為に樹を伐採するとしよう、すると一週間で元通り戻るなら序の口。切ったら伐採した枝からの芽が伸び成長、根がある程度残っていたらそこから芽が出て数日で元通りになると言う非常識っぷり。高見原の周囲の樹はほとんど珠木で占められており、この所為で開発が困難となったのだ。

そこで当時はどの様な方法を取ったかと言えば、現状を見れば分るだろう。木を切れば切るほど増えるのならば、樹を切らずに成長の方向性を人間側で決めることにより、森の中にある巨大都市が完成したのである。

とは言え、成長をコントロールしたとはいえ限度がある。ビルもある程度建てたが、それでも足りないためどうしたのかと言えば…地下である。




高見原市営地下鉄中央線 竹林駅

深夜1:00



深夜の地下鉄はとても静かだ。

樹と言うインフラに影響を与えているものがある為に、地上の渋滞を避け町の人間の九割近くが使っている地下鉄。終電が近く時間が時間なので、人はまばらで地下鉄のホームは閑散としていた。

そんな中、一人の男が酒気交じりの息を吐きながらホームのベンチでくだを巻いていた。


「クソッ、クソッ、クソッ…なんでだよ、部長の奴…俺の企画を何で通さないんだよ…」


男はブツブツと呟きながら両手を握ったり開いたりと動かしていた。

ホームの一番端のためか男の異様な雰囲気のためか、閑散としたホームは彼の周りには人は居ない。


「クソッ、クソッ、クソッ…俺の方が面白いのに、あんな奴の企画を通すなんて…」


俯き爪を噛み男はギリギリと歯軋りを立てる。

酒が入っている所為か、男の言動は胸の内の怒りを吐き出すように何度も何度も呟いていた。

そんな男の目の前に電車が止まる。


「高見原~高見原です。お降りの方はゆっくりとお願いします。これは最終電車になります…お気をつけください~!! 次の停車駅は…」


俯きがちの男は最終電車のアナウンスが聞こえない。

ブツブツと呟いているばかりで、全然気付いていなかった。

そうこうしている内に、電車のドアが閉まりゆっくりとスピードを上げて暗いトンネルへと消えていく。

男が最終電車を乗り過ごしたのを気付いたのは、それから酒精が回ってひと眠りした後だった。


「チッ、ついてねえ…」


目を覚ましてみれば人ひとりすら居ない構内、省エネの為か薄暗く所々に光る蛍光灯が不気味さを醸し出していた。いつも人が多い場所が誰もいないとなると恐怖ですらある。男は残った酒のせいか恐怖心を忘れ、舌打ちを一つして男はベンチに寝そべる。どうやら男は、このまま寝て始発で帰るつもりらしい。

横たわる男、それに気を利かせた様に構内の電気が更に落ち暗くなる。

所々に灯る非常等の明かりが浮かび上がるような緑色を主張しているため、完全な闇ではないのを男は満足して目を閉じた。




「…ん?」




唐突に男は目覚める。金属同士を強くこすり合わせる、軋る音が男の耳に届いたからだ。


「んあ?」


酒でむくむ目蓋をこすりながら男は身体を起こす。照明はまだ暗いままで灯ってはいない。しかしこの音は何だと、酒で少し痛む頭に響く音に顔をしかめながら耐えていると尾音が止まる。壁側に向いていた顔をホームの方へと向けると、黒い何かが霞んだ目に入ってくる。

何だ?と男が目を凝らせば、黒塗りの列車がホームに入ってきていた。どうやら先程の音は列車の止まった音らしい。

それよりも男の注意は目の前の物、不気味な漆黒の列車にあった。

男の酔った頭でも解る終電の後に来るはずのない列車、それは非常灯の淡い光に照らされてとても不気味な雰囲気を醸し出していた。




「……………………………………」




「…ん? 何だ?」


男は気付く。

どこかで何かが聞こえてくる。

周りを見渡すが音を発する物はない、それどころか先程の列車のとまる音が治まったために逆に静寂を感じる。




「…………………………………」




また音が聞こえる。

いや違うと男が耳を澄ませば声が聞こえた。




「……………………………………」




目を閉じ、耳を澄ませば…どうやら声が聞こえたのは目の前の列車から。

ゆっくりと男は好奇心のみで止まった列車ににじり寄る。




「……………………………………」




近づけばとてもよく解る、どうやら目の前の列車はコンテナのようだ。

男はコンテナに耳をつけ澄ました。






















「たすけて」























それからの男はどうやったかは覚えていない。

おぼろげに覚えている事は酔った足をもつれさせながら逃げた事だけだった。




桜区門前町 喫茶店『里桜』



「というのが高見原の七不思議の一つ地獄列車ね」

「何というか突っ込みありすぎません?」

「はは、ただの都市伝説だ。突っ込みどころがあるのはしょうがない」


工業地区から抜け、追手を振り切った後にバラバラに逃げた三人は時間を空けて再びここに集まった。そこで記憶を読んだ彩から奇妙な事を聞いたのだった。


「記憶にあった地下鉄、そこを走る漆黒の電車。そこから出る子供達…。その記憶の断片からの共通点はある。違う部分といえば」

「漆黒の電車の終着駅、この街を探索したときに一通りの場所は見て回ったけどあんな場所見た事がない」

「それが本当にあるとしたら、この街の地下鉄の駅はもう一つある事にならない?」


この街には地下鉄が通っている。路線は全部で三つ、高見原中心部から内陸部のベットタウンへと続く第一路線、海岸線に平行に北から南へと伸びる第二路線、第二路線と交わるように第三セクターへと続く第三路線だ。

もし天子が言うように、もう一つ駅があるのならば。


「あるかもしれないな」

「灯さん?」

「元々この高見原の開発は桃山財閥が担ってきた。地下鉄の建設は確か桃山鉄道だったはずだ」

「略すると有名ゲームになる会社だっけ」


駅があるとするのならばそれは、桃山財閥が関わっているだろう。何せ都市開発の時点で計画していればそれは出来るのだ。


「地下に知らない駅。都市開発の計画の時点で作られた駅なら、恐らくその場所には実験に関わる何かがあるはずだ」

「だったら、駅を調べないといけないのかな?」

「いや、その場所は見当がついている」


そう言って灯は席を立ち、店の奥から紙の地図を持ってくる。


「以前聞いた話だと、高見原の地下鉄は第一路線から第三路線と銘打ってはいるものの、掘られた順番は違うらしい。」

「順番が通りじゃないんですか?」

「ああ、最初は資材搬入用の基地を作らないとスムーズに出来ないからね。」

「という事は?」

「開発当時は細い道しかなかった場所だ、陸路じゃなく海路だったらしい」


灯が地図の一点を指さす。そこは高見原の北、工業地帯の横にある第三セクターとの境目。第二路線と第三路線の交わる場所で、最も海に近い場所。


「高見原港に近い、高見原タワー」


高見原のシンボルとなる海浜タワー、ウォーターフロントの一角にある高見原を見渡せる全長180mの建造物だ。


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