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いつもの日々に  作者: ルウ
進化計画
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進化計画


「お前らぁああああ!!」


爆発したかの様な踏み込み。それと共に振り上げた拳はテレフォンパンチで、戦闘職の男三人には解りやすいその動きは簡単に躱される。

東哉は怒りに身を任せながらも頭は冷静だった。突撃してきた東哉を散開して囲み男達は銃口を向けてきたとしても、彼は冷戦に対処する。

突然だが、スタングレネードと言うものを知っているだろうか。いわゆる閃光手榴弾と言うもので、強烈な光と音響で敵を制圧する兵器だ。その閃光手榴弾の仕組みはいたって簡単、急激な化学反応により爆発させているだけである。

ここまで言えばおわかりだろう、そう東哉は最近桂二にボコボコにされているので打開策として道具を用意していたのだ。分解と言う能力は出鱈目にバラバラにする能力ではない、物の繋がりを理解して分ける力だ。物の性質を理解してどのように動くかを把握して物質を分けるのだ。それを利用すればこういう事が出来る。


「喰らえっ‼」


ポケットから出した小さな小瓶を二本を投げて、瓶のみ分解する。すると瓶の中身が空中で混ざり合い。


爆発。


「ッ」


強力な閃光と爆音。本物と比べて多分小さい音だろうが、怯ませるのに正解だったのだろう。

東哉は男の一人が耳を抑えているのを見て成功したと内心ほくそ笑みながら、足者に転がる桂二を抱えてその場を撤退する。

今何とかしてやるからなと心で呟いた。




男三人組の戦闘員はこの廃墟にある機密文書を回収する為に来ていた

この場所の用途は桂二が前述していた通り、旧陸軍が行っていた人体実験場だった。人体実験の目的は人工神化計画の言葉通り、人工的に人から神へと変える。

大戦後期、戦況を危ぶんだ軍の上層部が戦力の増強を考え行ったのがこの実験だ。大戦の少し前から盛んになっていた遺伝子の発見から始まる遺伝子研究、それがこの人体実験のきっかけになっていたのが軍の本気度が窺える。

そんな実験は紆余曲折があるが最終的に、研究結果としては失敗だった。原因は時間が足らなかったのだ。後々解った事だが能力者の覚醒時期は10代半ばから20代半ばまでと揺れ幅が大きくこれは脳の成長と関係していると言われている。遺伝子を弄り能力者を精子と卵子の段階から作り出そうとすると、最低でも15年から25年かかると言う寸法だ。計画のスタートは1940年位で、単純にその時に生まれたならば終戦の1945年には完全に間に合わない。計画は日の目を見ることは出来なかったのである。

とは言え、実験は無駄かと言えばそうではない。失敗は失敗だが、その過程はとても参考になるのだ。


そう、次の実験のための指標とするために。


彼等3人はその実験の後を継ぐべく、とある企業から派遣されてきた者たちだった。


「チッ、あの餓鬼はどこの奴だ」

「見当つきませんね。今回の任務はちょっと異常ですから」

「確かにうちも含めて確認は出来てないのが5つ程、有名どころの桃山と六華機関は解りやすいですからすぐに解りましたけど。案だけドンパチやるってのはあの二つしかないですからね」

「ああ、あれはうちみたいな弱小には介入できんしな」


男三人組は企業としては中小企業に分類される、とある製薬会社の子飼いの傭兵だ。今回の任務は裏社会に流れた『神化計画の書類』の情報により、その書類を奪取すると言うものだった。

とある製薬企業は最近、薬物製造で異物混入をしてしまい少々傾いてしまっていた。それを何とかするために、裏社会で人間を人工的に神の位へと進化させると言われる遺伝子変化製剤のヒントが書かれていると言う神化計画書が必要だったのだ。


「しかし、神化計画とか本当にあるのか? ひと昔のアニメみたいな内容じゃないか」

「確かに昔はやったアニメとかもそんなの多かったな。でもこれ裏の情報屋の話じゃここ二・三年、その計画書の断片を利用して作られた薬が出回ってるって話だ」

「ああ、俺も聞いた。確か『偽神薬』だったか?」


偽神薬。以前も説明したが、飲むと能力者になれると言われる薬だ。


「専務はその薬が進化する薬だと思ってるらしい」

「あんな眉唾物の薬を作るって本気かよ」

「いや、専務はそのつもりらしいんだが、依頼者の社長はなんか違うらしい。社長の息子が半グレの奴にそそのかされて、その偽神薬に手を出してなんか大変なことになったらしい」

「マジかよ、俺等そいつの尻拭いかよ…」


理由が理由なためガックリと落ち込む三人組。しかし、そうは言っても金を貰って雇われた手前やめるわけにはいかない。スタングレネードもどきの影響も薄れてきた今ようやく三人組は動き出す。


「行くぞ」

「了解」




「おい、桂二しっかりしろ。おい!!」


桂二を担ぎ少し離れた物陰に隠れた東哉は声を掛ける。しかしの見る限り大丈夫と思えない胸元が真っ赤に染まった姿に、東哉はこれは無理なんじゃないかと歯を食いしばる。


「息は、微かだが少しある…今すぐ病院に行けば間に合うか…」


脈と息を取れば微かに触れる感覚にまだ間に合うとばかりに東哉は考える。

町まで数十キロ近く、低出力ながら習得した励起法で強化した身体なら、桂二を担いで走ればなんとかなるか…と算段を付けていると戦いでハイになっていた感情が落ち着き周辺の音にようやく気付いた。


「戦い…あいつらだけじゃねーのかよ」


そうこの場は神化計画の計画書を奪い合う戦場になっていた。

耳を澄ませると、一番奥の方だろうか爆音と銃声が遠くに聞こえる。他にも色々聞こえるがこれは好都合かもしれないと東哉は希望を見出す。

だとすれば一番の障害は一つ。


「あの三人組か。多分追ってくるだろう…だったら、何とかする」


東哉は倒せるとは思ってない、能力者に覚醒して一か月足らずの自分じゃ到底かなわない。

そう彼は今まで驕って、何でもできるからと楽観視していた自分に反省しながら桂二を助けるべく迅速に敵を倒す算段を付ける。


「ちょっとここで待っててくれ」


部屋の隅に応急的に手当てした桂二を寝かせると東哉は少し戻った通路に仕掛けをするべく、元来た道へと戻っていった。




横たわる桂二の口が弧を描いていたとも知らずに。


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