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いつもの日々に  作者: ルウ
過去を追い求めて
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剣舞

宙に浮いた誠一が放物線を描くように吹き飛んでいる。普通の人間では追いつくことは出来ないが、励起法で強化された能力者であれば追いつく。

その証拠に空中にいる誠一の前に天子が右切り上げを放っていた。


「グッ」


右切り上げを左肘で受ける。空中にいる為か木刀の衝撃が受け流せない。

これは剣術の技術じゃない、杖術の打ち方だ。誠一は天子の技術の高さと幅が広いと感じ体を一層強く引き締める。何故ならこの一撃で終わるわけではないからだ。

そしてその予想は考えた以上の速さで襲い来る。

右切り上げは起点でしかなかった。天子が木刀を振りかぶり袈裟切り、返す刀で右薙、左切り上げ、浮いた誠一の下への滑り込みからの回転蹴り上げ二連。最後の一撃は突き上げの突きで終わる。

この間約一秒足らず、誠一の強化された感覚でも一瞬に行われたと感じられるくらいの速さだ。


「霧島神道流 剣連舞・伏雷」


空中にいるうえに明らかに攻撃速度が違いすぎる為、誠一は何もできないまま吹き飛ぶ。しかしながら防御力が高いため少々のダメージはあるがほぼ無傷である。吹き飛ばされながらも両足でしっかりと立っている時点で見てとれる。

それを見て天子の顔が引きつる。今までいろんな人間と戦ってきた、自分が追いつけないほどの神速の師匠、すべての攻撃を先読みすして避けきる腹黒隊長、そもそも攻撃どころか近づけないほどの弾幕を張る光使い。

今までの相手は攻撃特化、誠一は防御特化と言うところだろうか?

その防御を突破するには骨が折れると突破の方法を考えていると、誠一が掌を見せて待ったをかける。


「ノリで名乗ったけど、そもそもなんで俺等戦ってるんだ?」

「え? 誠一君って鈍感系?」

「…?………いや、まてまてまて。どういう事? なんか俺、話聞き飛ばした? 話飛んでないか?」

「飛んでないよ? 昔から言うじゃない?戦ってから育む恋もあるって」

「いわねーよ!!」


天子は見た目と違い脳筋であり、蛮族よりの戦闘民族に近いようだった。




あれから数十分戦ったが、スピードが違うため誠一はサンドバックだった。


「イタタタ…」

「駄目だよ誠一君、ちゃんと反撃しないと?」

「お前、マジか…」


誠一が反撃しなかったのはスピードの事がある、能力込みの励起法じゃないと追いつけなかったからだ。

励起法は体全体を強化する。体の一部だけ強化も出来るが、あまり現実的ではなく師匠から禁止されている。何故ならば、危険だからである。

強化と言えばどのように強化されているか知っているであろうか?実は力だけを強くなるわけではないのだ。

例えば空手の正拳突きをするとする。簡単に言えば腰を落として拳を突き出すだろうが、実際はもっと複雑だ。

腰を落とし、半身に構え足を肩幅に開き、身体の各部を連動させながら腰を捩じり、突き出した拳と逆の腕を引く。

正拳突き一つでここまで複雑な工程があったりする、そこで例えば腕だけを強化したとするとどうなるだろう?

正解は強化した場所としてない場所の境目を痛めるという結果になる。強化と言うものは力だけではなくその強化した場所の瞬発力、再生力、頑健さいわゆる耐久力を上げるのだ。

もし一部分だけ強化したらその境目の耐久力の違いにより痛めてしまう、強化率の差が大きければ極端な話で境目が千切れてしまう可能性だってあるのだ。

と言う理由で全身の強化tをしている誠一は瞬発力だけではなく力も強化されている為。ぶっちゃけると手加減と言うものが出来ない状態で、もし出力最大で当たったら爆散しそうで怖いからだったりする。


「ま、攻撃したら攻撃したで心が通じたとか言って迫ってきそうだったから出来なかったのもあるけど」

「あれ? お気に召さない? 毎日神社近くで修業しているからそう言うのが好きかと思ったのに」

「好きじゃない。むしろ暴力は嫌いで、暴力を振るう奴が嫌いで、それを当たり前と思う理不尽な奴を蹴散らしたくて、前も…あれ?」


無意識に良く解らない事を言った、滅多打ちにされて何かおかしくなったかと誠一が頭を捻る。それを聞いて天子はほんの少し嬉しそうに笑った。


「ふーん。ま、良いんじゃない。だったら別のアプローチだね‼」

「本人の前で言うかね」

「私は気持ちをストレートに表現するのがモットーです」


話に聞いてたおっとり毒舌はそれが原因かと誠一は納得する、情報源は拓海だ。


「まあ、俺をサンドバックにしたのはともかく、何の用だ?」

「あなたが私の事を探しているって聞いたから来たのよ?」


それは桜坂の剣士、もとい霧島の剣士って事か丁度いい。と話が進むのを感じて誠一は話をする。


「霧島の剣士って君以外いるのか?」

「…うー、あの子が執着してたからまさかと思ったけどそっちかー。確かに私は霧島の剣士だけど、あまり知る事はないのよ」

「どういう事だ?」

「霧島の剣士って霧島神道流を使う人たちに聞こえるかもしれないけど、実際のところ霧島一族の使う剣術使いってのが正確なのよ。私の苗字も蒼羽だし」

「霧島一族…他には知らないのか?」

「全然。師匠は霧島一族らしいけど、生き残りって聞いてた」

「生き…残り?」


話を聞くと、霧島一族は裏社会における最強格の能力者集団であり武闘派の集団でもあったらしい。そのため方々に恨みを買っていたらしく、ある日一族の多くが集まる会合中に強力な攻撃を受けて壊滅状態だと言う。


「って事は、霧島の剣士には早々会えないって事か」

「そういう事だね。私にこの剣術を教えてくれた師匠もここ数か月会ってないし、そもそもふらりと出会った時に私が無理やり弟子入りして教えてもらったくらいだしね。突然の出会いだったから連絡方法も知らない」

「携帯とかは?」

「持ってなかったかな?持ってたとしても多分教えて貰えなかったと思う、何せ生き残りだからね」


それは無理かと、彩にいい話を持って帰れないなと肩を落とす誠一。とは言え、何かと詳しそうな彼女にもう少し聞いてみようかと気を引き締める。


「そもそも君は何の為にこんな事をしてるんだ?」

「こんな事?…ああ、私の活動って事ね?そもそも、この高見原って町の裏側で何が起こっているか知ってる?」

「…何かあるのか?」

「人間狩り、正確に言えば能力者狩りよ」


あまりにも物騒な単語に誠一は息を飲んだ。


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