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いつもの日々に  作者: ルウ
過去を追い求めて
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桃山財閥の始まりと闇

桃山財閥の始まりは古く、遡る事600年『応仁の乱』までたどれる。応仁の乱とは足利幕府の後継者争いから始まったこの戦いは、日本全国の有力大名が西と東に別れ争った内乱である。

とまあ、ざっくり説明はしたが応仁の乱は歴史書や学校の教科書で見てもらえればいい、問題はこの時代で記されていない出来事だ。

1470年.応仁の乱の真っただ中で、畿内(現在の近畿地方)で一人の男がいた。男の名前は吉備義氏、足利幕府に在籍していた武士だったが戦乱の世に疲弊し辟易した挙句に暇を貰った男だ。

今となっては男が何思って、武士と言う身分から商人へと変えたかは解らない。桃山財閥に残る文献によると彼は幕府の裏方から身を引いた後、ふらりと作り始めた堺の港に現れた。

それから彼はどのような手管を用いたかはわからないが、当時の遺明船による海外貿易により豪商となった商人に弟子入りしている。そこから彼の一族は豪商から暖簾分けをしてもらい『吉備屋』と言う廻船問屋(現在の海運業)になり、ゆっくりとだが繁栄を続け明治から海外貿易による拡大を続け桃山財閥へと名を変えたのだった。


「と言うのが桃山財閥の傘下である雉元家に伝わる話よ」




桜区門前町 喫茶店『里桜』。




喫茶店『里桜』の玄関は今『臨時休業』のお知らせが貼られていた。中では三人がカウンターを挟み向かい合っていた。

カウンターの席には誠一と彩、その目の前では灯がドリッパーにお湯を注ぎながら話していた。


「それが一体、彩さんのお姉さんとどう関わりがあるんですか?」

「結論から聴くものではないよ。誠一君。物には順序がある」


気の早い誠一に溜息を吐きながら、彩の早くと言わんばかりの目に促されて話を続ける。


「そもそもこの話にはおかしな所があるんだ。何処かわかるかな?」

「えっと、当時の武士が証人になると言う事ですか?」

「それもおかしいトコだが。根本的なものがないんだ」

「根本的なもの?」

「…動機、ですね」

「そうだ。流石、奈緒美の妹だ洞察力があるな」


そう、この話には結果しかない。男が何をして結果が出たという風な話だが、そもそも何でそのような事になったかの理由がないのだ。

コーヒーサーバーに溜まったコーヒーをショットグラスに分けてほんの少し味見をした灯は、少し濃かったのだろうか低温のお湯を注ぎ、コーヒーカップに移すと二人に出した。


「アメリカンだ、最初はブラックで飲んでみて飲みにくかったらお好みで砂糖とミルクを入れてくれ」


二人にコーヒーを出しつつ、灯も自分用のカップに入れたコーヒーを口に含む。すっきりとした苦みと少し酸味が強い味が香りと共に口の中に広がると、灯は少し気持ちを切り替えて話を続ける。


「この話は毎年、新年に行われる雉元家の集まりでよく聞かされるんだ。その度に私は君と同じ疑問があってな………調べたんだ。あの頃は今も若いんだが私は若かった、好奇心だけで突っ走ってたんだろうな。数年程、雉元の化学研究所で働いた後に桃山本家の化学研究所に移って、そこで桃山の歴史を調べた」

「…それで何が解ったんです?」

「ほとんど解らなかった。桃山の資料室にも潜ってみたんだがそれに関することは解らなかったんだ。ただ、解ったこともある。財閥内で噂されていた事があってな、桃山本家にあるとある研究所では、遥か昔から研究し続けている研究があると言う噂だ」

「研究ですか?」

「そう研究だ。噂によればその研究は非道な人体実験を行う部署らしく、目的は何かを取り戻す事…」

「非道な…人体実験?…まさか」


彩は何かに気付く。それは一番ありえなく信じがたいもので。とても聞きづらい事だ。

それに気づいたのか、灯は意を決して話を続けた。


「今はないが私が君の姉に出会ったのは、高見原の北にある第二セクター内の工業区画『桃山生物化学研究所』だ」




彩は衝撃を受けて絶句していた、噂と言えど姉が非道に手を染めていたと言われればそうなる。


「そんな、嘘でしょ」

「奈緒美の妹だったら解るだろう、私は能力者じゃないから神域も使えないから簡単に心が読めるはずだ。だが、少し勘違いしているみたいだから言っておくが、非道な人体実験に奈緒美はかかわっていないはずだ」

「え?」

「私も言い方が悪かったが、彼女も私と同じように調べていたらしいんだ」


よく話を聞くと、彩の姉は桃山財閥本社庶務課で雑務を担当していたらしい。


「でも、姉さんが何でそんな事を…」

「どうも、話を聞くに誰かから頼まれていたらしい」

「誰に?」


ここまで話しておいて、彩には解らない事ばかりだ。そして気付く、自分は知らない事ばかりか姉の事も解っていない、愕然とした。

能力にかまけて答えだけで満足して、過程を知る事を疎かにした結果だ。


「すまないな、それは解らないんだ」

「そうですか…」


話はここまでだった。解ったことは色々あったが、彩にとってそれ以上に自分のふがいなさが際立ってしまっていた。

誠一が頼んで喫茶店の奥にある居住スペースの空いている場所に泊まらせてもらう事になった彩は、備え付けのソファーに寝転がり目を閉じる。


「お姉ちゃん…」


今はいない姉の名を呼び。彩は眠りに入った。




夜に待ち合わせる為に誠一は彩を灯に任せると、楼閣町へと足を向ける。

目的地は彩から聞いた、誠一と出会った日に彩が大暴れしていたという場所だ。桂二に調査のコツを聞いてちょっと実践したくなったのだ。桂二曰く、まずは現場に行ってみるという事らしい。

昔の良くある刑事モノの教訓を使う今どきのチャラい男、妙なアンバランスさに苦笑しつつ楼閣町の路地裏に入る。

あまり手入れされていなく、路地裏の道が蔦で分断されて奥が見えなくなって隠されたスペースの様になっていた。

実はこのような隠されたスペースは高見原で数多くあり、浮浪者や半グレの人間が住んでいたり屯していたりしている。

それはともかく仕方がないと誠一は、持ち歩いていた仕事道具のを入れたナップザックから鉈を取り出すと一閃する。


「金にもならないから、適当でいいか…」


適当に切り払うと、誠一は奥へと入る。

しばらく歩くと、そこは何かのスペースかちょっとした広場になっていた。上は樹に覆われ薄暗いが、一か所だけ光が差す場所がポットライトを当てたようになっていた。そして、そのスポットライトの光を切り抜くように『黒いレインコート』が佇んでいた。


「桜坂の剣士」


誠一が思わずつぶやいた言葉に、レインコートを着た人物が振り向いた。


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