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いつもの日々に  作者: ルウ
過去を追い求めて
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影を探して

桂二が東哉に現状と能力者の事を説明している時、誠一は待ち合わせをしていた。


高見原市 桜区石上町 『石上神社』公園


今回は話し合いではなく。お互いの力量を量る為のもの、解り易く言えば力試しである。

公園の一角にある空白地帯、樹や茂みに隠された誠一と思惟の練習場所である。

そこで誠一は足を開き腰を落とし、胸を少し後ろに引きながら肩甲骨を開く、手は肩ほどの前にあげ何かを掴むような形をしていた。

俗にいう気功法の馬歩站椿功と言われる、鍛錬法である。


「精が出るわね」

「体を作る一環で続けているだけさ。最近じゃ気功法のつもりだったんだけど、能力者じゃ励起法って言うんだっけ?」

「気功法は体の活性化を促す技法だけど、励起法は細胞レベルのエネルギー操作と操作による励起共鳴現象による身体超強化法よ」


そこに現れたのは彩だった。いつもの服装にレディースにしては大きなリュックサックを背負っていた。


「彩さん、今日は荷物が多いみたいだけど」

「今日は金曜日で明日明後日と休みじゃない?だから泊りがけの準備してきたの」

「…ちなみにどこに泊まるんだ?」

「あなたの家」

「え? あ?…無理無理無理無理っ!!」


あまりの発言に誠一は馬歩を解いて彩を止める。


「…? ああ成程、あなた施設なのね。それじゃ無理か」

「心を読んだ?」

「読んだって程じゃないわ。あなたの心の声が漏れてるのよ」


話が誠一の心を読んでいるかのように話が飛ぶので聞いてみれば一寸違うらしい。

心を読む能力者は意外と多くいるらしいが、実際は大まかに分けて三種類しかいないらしい。一つがアンテナ型、人から漏れた脳波を受け取ってしまう能力者、拓海がこれに当たる。二つ目がハッキング型、これはアンテナ型とは逆で相手の脳に対して操作する。そして三つ目が能動的受信型だ、ややこしいが解り易く言えばレーダーみたいなものでアンテナが動き向いた先だけが感知できるというものだ。


「余計解りにくいんだけど」

「うーん頭固いわね。大雑把に三つに分けてるけど、実際にその違いはあまりないから考えすぎなくてもいいわ。ま、そんなんだから、あなたの漏れた思いを私が受け取っただけで、意識して読んでたわけじゃないのよ」


そう言うと彩は荷物を降ろして、誠一から少し離れて立った。その距離は約20歩ほどで、誠一はその距離の意味を感じ左手を前に出し、右手を引き、腰を落とす。

20歩程の距離は以前、不意打ちをしたときに把握したお互いが一足飛びで肉薄できる距離だ。


「とは言え私の能力はただの読心じゃない。『モーション・エモーション』の能力の真骨頂を見せてあげる」

「見せてもらおうか」


唐突に始まる腕試し。構えと共に二人の身体から空間が揺らぐような無音の力が発せられる。その力が刹那で安定すると同時に二人は同時に踏み込む。


「フッ!!」


牽制と様子見の右の拳での突き。牽制と言うには恐ろしいまでの力が込められているその突きが彩の胸に吸い込まれるように撃ち込まれる寸前、彼女の身体が拳の外へと逃れていた。

彩は避けられた右拳からの追撃が一番難しい位置いる。彩の位置は右後ろ、おそらく彼女の狙いは足。

普通ならば避けるか受けるかだが、誠一は重心を落とし力を籠める。


「グッ」


後ろ足の内腿に衝撃が走る。足が狙いだと思っていたが、思いの外衝撃が強い。肩越しに後ろを見れば彩がうつ伏せでお辞儀する様に蹴っていた。名前は忘れたが、あれは骨法や古武術にある技だ。普通ならばバランスを崩すが、直前に重心を落としていたため被害は最小限だ。しかし最小限とは言え誠一は体勢を崩した、彩にとってそれは最大の隙。


「ウオオッ!!」


誠一は左手の小指を取られ、身体のバランスが更に崩され浮足立ち、体の踏ん張りがきかなくなる。そして浮遊感と主に背中から地面に投げ落とされた。

痛みもなく、衝撃のみだったが励起法を使っている間では問題ない。問題なのは…。


「アダッアダダダ!!」


手首と腕が完全に極められていた、腕ひしぎ十字固め完全な関節技である。


「これならあなたの馬鹿力は関係ないわ?どう、あなたの最初の牽制を読んで相手の死角に移動、あなたは足へと攻撃が来る事を予想してたけど、あえてそこに攻撃して体勢を崩したところで投げる。そして関節技」

「思考だけじゃなく相手動きも先読みできるほど読み切るか…ちなみに今俺はどう思っている?」

「それは…」


言われて読むと、彩は段々顔が赤くなっていく。


「バカッ、スケベ!! こんな時にそんなこと考えるな!!」

「しょうがないって!! こっちは健全な高校男子だぞ!! 柔らかい何かの感触があったらそう思うんだって!!」

「わざわざ読ませなきゃいーでしょーが!!デリカシーの問題ってやつなの!!」


力試しは強制終了、決まり手は煩悩。

締まらない事、この上なし。




「あたた。なあ、機嫌治してくれよ。悪いと思ってるんだって、ホント読んで確かめてもいいからさ」

「…」


神社から麓の仲見世通りに続く道、緩やかな下り道を二人で歩く。頬を赤く腫らした誠一は、不機嫌さを隠さない彩の機嫌を取っていた。

実際は彩は機嫌を治しつつあった。読心能力者あるあるで、人間の心を読みすぎて男子高生の若い欲望だから仕方がないと彩は達観していたのである。


「もういいわよ、私の能力で世の中の酸いも甘いも汚さも理解しているつもりよ。知ってる?学校で一番漏れ出てるのって男子生徒の性欲なのよ?」

「………知りたくなかったよ」


生々しい話にウンザリした顔をする誠一は、何となくわかる気がして何も言えなかった。


「それよりどこに行っているの?」

「彩さんが今夜泊まれる所と情報提供してくれそうな場所」

「どういう事?」

「ここだよ」


仲見世通りから少し離れた門前町から入った路地裏の店前で止まる。レンガ壁に蔦が絡まった味のある趣がある店、喫茶店『里桜』。


「ここ?」

「そう、ここの店長さんだったら多分知ってると思う。この間の話にも出てた喫茶店は多分ここだし」


ドアを開けると柔らかなドアベルがカランコロンとなる。入ってすぐ奥にあるカウンターの中では店長の雉元灯がグラスを拭いていた。


「いらっしゃい…なんだ、誠一君…な、奈緒美?」


彩の顔を見た途端、灯は驚きグラスを取り落として割ってしまう。その顔は死んだ人間を見てしまった人そのものだった。


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