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いつもの日々に  作者: ルウ
過去を追い求めて
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友達だから

「あ、ああー。うー」


森の中にある都市、高見原。その北西にある山よりやや南側にある高見原学園の通学路にゾンビが歩いていた。いや、死体みたいに真っ白な顔をした東哉が虚ろな目で呆けたように歩いていた。

それを横から見ていた誠一は顔を引きつらせた。


「ヤバい。力加減間違ったか⁉」

「多分違うと思うな」


林間学校の時に殴った力加減を間違えてやらかしたかと慌てるが、一緒にいた拓海が冷静に突っ込む。


「誠一が殴ったのお腹でしょ?頭じゃないから大丈夫、むしろ何で死ななかったかなー」

「うおぉ、ブラック拓海が出てる。嫉妬とは言え殺しちゃマズイって」

「今さっき誠一から聞いた話から考えると彼も能力者なんじゃない? だったら誠一がちょっと強めに頭殴っても大丈夫だよ、正常になるかも?」

「殺意高くない?」


あまりの嫉妬に真黒くなった拓海の殺意の高さに誠一は苦笑いだ。そんな二人の後ろから声をかける男が一人。


「よ、おはようさん。どうした、二人とも」

「桂二か、おはよう」

「おはよう桂二」


振り向けば、そこには桂二と長い黒髪とアンダーリムの眼鏡をかけた少女がいた?


「あれ?桂二と莉奈ちゃんの友達?」

「蒼羽天子って言います、よろしく」


にこやかな笑顔で挨拶をしてくる天子、その視線は誠一と拓海を見ているようだが何となく誠一の方を見ているような気がする。


「あ、え。よろしく」


最近押しが強い女子との出会いが多いなと思いながら、誠一は戸惑いながら返事を返す。


「で、何で天子ちゃんが桂二と一緒に?」

「ちょっと依頼の件でなー。そういえばメールで見たけど俺に話ってなんだ?」

「あー、ちょっと野暮用で。昼休み男三人で話さないか?」

「? ああ、そういう事か。了解、いつもの場所でな」


そう言いながら桂二は誠一達に背を向けて、ゾンビもとい東哉の下へと歩いて行った。残されたのは誠一と拓海、天子の三人だった。


「あー、えと、私天子って言います。天子って呼んでください」

「今さっき聞いたかな? あと、いきなり名前呼びは難しい」


何故かグイグイ来る天子に困惑する誠一。たまに見かける彼女の雰囲気と姿が今と一致しないのが原因だが、鈍感系の男ではない誠一は何となくわかる相手の感情に押されてしまう。傍で見ている拓海は面白いものを見たとばかりに、ニヤニヤしながらその場を離れようとする。


「誠一にも春が来たねぇ」

「ちょ、拓海⁉ どこ行くんだ?」

「美術室だよ、描きかけの絵があるんだ、完成させなきゃ」

「おい、拓海? ちょっと蒼羽さん?」

「天子でいいです」


捕まっている訳でもないのに何故だか逃げられない誠一は、ここに来て何となく桂二に嵌められた事に気づき、拓海に見捨てられた事に悲しみを覚える。

とりあえず此処は通学路、しかも登校中で周りには同じように登校している学生が多数。しかもこちらを見ていると言う状況に誠一は覚悟を決める。


「えー、天子さん?」

「なんですか?」

「とりあえずは一緒に登校しよう?」

「はい‼」


その時周りの学生たちは思った。ヘタレたなと。




「お前、アレはねーわ。ヘタレすぎじゃない?」

「うっせ、お前と違って女慣れしてないんだ」

「自覚してたんだ…でも、これで誠一も恋愛仲間だね」

「え、俺もカウントされてる?」


放課後の校内、二階にある美術室の横に作られた非常階段の踊り場に三人はたむろしていた。

話の内容は主に朝の誠一がとったヘタレっぷりだ。


「東哉の介護しながら見てたけど、あれは酷いぞ。もうちょっとスマートに出来んのかスマートに」

「後で聞いた僕も呆れたけど、登校中上手く話せなくってガッチガチだったらしいじゃない?」

「うっせ、生まれてこの方、女の子に拳は向けられても好意は向けられたことはないっての。て言うかスマートってどうすりゃいいんだよ」

「前向きなだけ良いのかもなー。スマートってのはな、心で焦ってても表情に出さずに余裕…」


誠一の煮え切らない態度に何故か桂二流『恋愛の立ち回り方』が始まってしまう。意外と浮名を流しまくってる桂二の話に興味を引かれながらも、拓海は脱線している話を戻すべく止める。


「ちょっと二人とも、今はその話じゃないだろ?」

「う、え。ああ、そうだな」

「うーん、もうちょっとでストイック誠一がアモーレ誠一になりそうだったのに」

「桂二も誠一をどうしたいのさ」


呆れながら拓海は話を戻していく。


「まあ、おふざけはここまでにして本題はアレだろ?」

「そうだね。誠一はちょっと本調子じゃないから僕が話を進めようか」

「おいおい、何か尋問みたいだな」

「そう思ってもらっても構わないよ。君はなんか僕たちに色々隠しているみたいだし」


そう言われると困ったのか桂二は目尻を落としながら笑う。

しかしこれは仕方がなかった。林間学校の時には何かを知っているような発言をしていて、いつの間にかいなくなって聞くタイミングを外していたのだ。いつもなら詮索することはないが、いつの間にか覚醒していた拓海と能力者達の仲間入りした誠一にとっては気になるところだ。


「僕と誠一にとって君は大切な友人だと思ってるよ。でも、ここ数日の僕達の変化と知らない世界を知った事で、僕も誠一も今まで通りじゃ行かなくなりつつある」

「…」

「だからね。何か知っていたら、教えて欲しいんだ。桂二」


拓海は誠一からこの町は意外と危険だという事を聞いた。特に能力者が襲われ、能力者同士で争い、狩られていく。

三人それぞれの立ち位置が解らない、その所為で疑心暗鬼に落ちかけているのだ。

それを察した桂二はグッとした唇を噛み、鼻をつまむ。拓海は長年の付き合いから、それは桂二が悩んでいる時のポーズだと解っていた。だから、何も言わずにジッと待つ。

数分程だろうか、沈黙の中で刑事の重い重い溜息が踊り場に響いた。


「解った、だけど、全部は話せん。俺にも立場があるからな?」

「立場? 立場って事は…今はいいや話を聞かせてくれ」




人は昔から社会を形成してきた。人は群れを形成し食料を効率よく調達し、外敵から身を守ることにより生活を安定させ発展させて来たのだ。

それは能力者も同じ人類故に変わらない。

古くから能力者は人類と共に生きてきた、時に助け合い、時には敵対して。


「それが神話の時代と言われている」

「という事は、俺たちは神様の一種って事か?」

「ざっくばらんに言うとな」


神や悪魔なんてものは人がつけたラベルでしかない。

人に利益をもたらせれば、それは神と呼ばれたり仙人と呼ばれたり。

人に仇をなせば、それは悪魔と呼ばれたり妖怪と呼ばれたり。

結局のところ立ち位置が変わるだけで、本質は変わらないのだ。


「とまあ能力者ってのは人に特殊な力がくっ付いただけで、人間と変わらないんだ。んで、ここからが本題。能力者にも色々な集団がある、例えば西欧の宗教に基づいた騎士修道会、知識の源泉ミーミルの泉を奪い擁するアレキサンドロス・ライブラリー、能力者の限界を求道するシャングリラとか小さいやつを含めるともっとある。その中でここ数十年で急激に勢力を伸ばしつつ実態の掴めない集団がある。それが桃山財閥だ」

「マジか。西日本じゃ知らない奴がいない一流大企業じゃないか」

「大企業の裏はほとんど能力者だぞ」

「マジかよ」


誠一の語彙力がなくなるほどの衝撃的事実である。


「でだ。最近の騒動、こいつらが糸を引いている可能性が高いんだ。この間の林間学校の爆発事故覚えてるか?」

「ああ、そうか。あそこの施設は桃山系列だったけな」

「そういう事だ」

「…なあ桂二、俺は今疑問に思った。情報屋を名乗るお前でも、流石に色々知りすぎだと思うんだ。学生でそれを知るには不自然すぎる………お前、どうやってその話を知ったんだ?」

「あー、やっぱりそこに気付いちまうか。…まあいい、もし聞かれたら教えても良いって言われてるし」


言われている? その言葉にだれか桂二に指示を出している人間がいるのだろう。誠一と拓海は聞きたい気持ちを抑えて待つ。


「俺の今の所属はサイファグループ警備部第三隊情報科だ。」


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