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いつもの日々に  作者: ルウ
過去を追い求めて
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彩りを添えて

「うん? ここは…そっか、私寝てたんだ」


折紙おりがみ あやと名乗った少女は目覚める。泣き疲れたせいか、いつの間にかに寝ていたらしい。少し泣き腫れた目を擦り、周りを見るとそこは姉の墓があった崖の洞内ではなく青年に自分が襲い掛かった神社裏だった。


「えっと…」


思い起こせば色々自分が暴走していたのがよく分かる。五年前に居なくなった年が離れた姉。両親がいない彩にとって彼女は、小さいころから色々お世話をしてくれて、一緒に遊んだり、悪い事をして叱られたり、些細なことで喧嘩だってした。彼女は親代わりの大切な存在なのだ。

それが五年前のあの日、突然いなくなった。

今でも覚えている、二人きりで住むマンションの一室で姉が帰ってこない。

電気も付けずに帰りを待っていると、鳴るインターフォンに飛び出すように扉を開ける。

そこに立つのは白銀のレインコートを着てフードを目深に被る長身の男性。


「お姉ちゃん…」


不気味に立つ男性が告げるのは姉が死んだという言葉。それからこれからの事を淡々と話してきた。言われた事と淡々と話す男の不気味な雰囲気に、あの時の彩は動揺して頭が真っ白になって気絶した。次に気付いたのは、彩の後見人と言った老人『多々良』の工房の一室だった。


「気づいたのね」


昔を思い出していると横から声をかけられた。気づけば姉の行方を教えてくれた女性がにこやかな笑顔でこちらを向いていた、足元に戦った青年が横たわっていなかったらとても安心した笑顔だろう。


「えっと。ここまで運んでくれて、ありがとうございます?」

「なんで疑問形かな? まあ、現状を見れば分らんでもないけど」


思惟はヤレヤレと溜息を吐きながら頬を掻く。何はともあれ現状を回復させるかと、自身より大きく重い誠一の身体を、首根っこを掴み荷物を放る様に彩へと投げる。


「えっ、ちょっとっ!?」


彩は慌てて励起法を使い、放られた誠一を受け止めるだけの出力で抱き留めた。


「いきなり何を」

「ふむ、励起法の使い方が上手いわ。それなりの修練を重ねると共に無駄のない運用、相手に実力を悟らせないようにって所か」


言われた事にギクリと喉が鳴るのを抑え彩は平静を保つ。それは以前、自分の師に言い含まれた事柄と一緒だからだ。彩が警戒感を滲ませると、思惟は掌を見せながらそうじゃないわと安心させるように笑いかけてきた。


「ああ、気にしなくてもいいわよ。あなたの境遇は多々良老から聞いてはいるから」

「お爺ちゃんからですか?」

「ええ、女性物の服とか下着やその他諸々。あの鍛冶馬鹿じいさんが気が付くわけないじゃない。栞と二人で買ってたのよ」

「師匠まで…えー、その節はお世話になりました…」


聞けば引き取られてから、ここ数年季節ごとの服やその他諸々の物を送ってくれたのが自分の師と目の前の女性であるらしい。確かにあのセンスのよさそうな服や下着なんかは、お爺ちゃんでは無理ねと納得する。


「んで、今あなたが受け止めたその子の名前は水上誠一。ちょうど今能力者として最低限の覚醒をしたから一寸揉んでやったのよ」

「やっぱり能力者だったんだ」

「鈍い事に、その子が気づいたのはさっきだけどね」


それはヒドイと思いながら抱え込んだ誠一を、神社の縁側にそっと横たえる。能力者が覚醒するには色々なハードルがあるが、一番最初のハードルは認識と常識の壁がある。覚醒に置いて自分が能力を使えると言う自身の『認識』が必要であり、その認識をする為に社会の中での常識とすり合わせする為だ。

例えば生まれつき赤が認識できない子供がいるとしよう、その子供が赤色を赤と認識するにはどうすればいいか。結論で言えば周りに合わせるからである、子供が赤色を赤と認識するのは周りが赤を赤だと言っているからである。

もしこれが例えば手で触れた物を分解する能力者だったらどうだろう、この世界の大多数の一般人はそんな事は出来ない。だからこそ、もしその能力者が能力者のコミュニティの中ではなく一般人に紛れていたら、その自分の認識と常識に阻まれて覚醒出来ないのだ。


「この子は薄っすらとその片鱗が出ていたんだけど、ギリギリ身体が強い位での範囲の身体能力であり周りが受け入れておかしいと認識してなかったせいで気づいていなかったみたいなのよ…」

「いー感じでバランスが取れてたって事ですね」

「奇跡的よね、でももうそれは通用しない。ここの奴らに感づかれた可能性があるから…」

「それって…」

「この高見原に巣食う、桃山財閥よ」


桃山財閥。

それはここ数年で業績を上げて有名になってきた企業体の名称だ。桃山商事を頭に、犬飼警備・雉元化学工業・猿田重工を傘下に置いた複合企業体だが、裏の世界では死の商人として有名だ。


「お爺ちゃんから聞いてます、最近能力者が消えている事件が多く。その大本が桃山財閥なんじゃないかって」

「じゃないか、ではなく真実よ多分。あなた、お姉さんが務めていた会社知ってる?」

「いえ、でも。まさかっ」

「話によれば桃山傘下、雉元化学の研究所って聞いているわ。」


ここ数十年、能力者の数が少なくなっていると言う噂がある。調べてみれば全体数は変わらないが年齢別の統計を取れば子供の数が増えており、青年の数が異常に減っているのだ。この統計は成人の能力者が少なくなっているという事だ。ではその少なくなっているのは何だと言われれば、誰かに誘拐されている可能性があったのだ。


「奈緒美はそれに自分の勤めている会社が関係しているって言っていた」

「それじゃもしかして、その研究所が?」

「確証がないって言っていたわ」


沈黙がおちる。彩の中では、姉の死に疑問が湧いていた。どう考えても普通じゃない死にかた、探っていた研究所。あからさまにおかしな点がある、もし犯人がいるのならば殺されたのならば。


「私、その研究所を探りたいと思います」

「危険よ。」

「それでも、私は知りたいんです。姉がなぜ死んだのか、どうしてそんな事になったのか。何を考えていたのか」


彩の目は決意に光に溢れていた。思惟はそれを見て、これは止められないと溜息を吐くと誠一地を指さした。


「それなら、その子を連れて行きなさい。今なら護衛ぐらいにはなるわ」


思いがけない提案だった。


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