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いつもの日々に  作者: ルウ
過去を追い求めて
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今ある記憶と違った記憶

高見原市 桜区石上町 『石上神社』公園。


石畳の上で踏む誠一の足音は重く、踏み込む度に大地を微弱ながら揺らしていた。套路を繰り返す事により身体に効率的な動きを覚えこませ、最小に動きで最大の威力を与える訓練だ。

本来ならば一挙手一投足を意識し、技の意味を考えながらやらねばならない。しかし彼の動きは少し精彩に欠けていた。


『多分、これが能力なんじゃないかなぁなんてね』


あの言葉を聞いてから誠一の心は乱れていた。能力と言う言葉に胸が騒いだのだ。それはあの時、棒を持った少女が言い放った言葉と一緒で驚いた。

何度も聞いた言葉、実際に起こるありえない現象、そして何度も起こる事件と爆発。

それが誠一の心、正確には記憶をおかしくさせていた。


『この記憶、一体なんだ?』


林間学校の施設の中で拓海と二人で話している時に響く轟音。窓ガラスをビリビリと振るわせるほどの爆発音に驚いた二人は、カーテンを引いて外を見ると遠く離れた場所が赤く燃えており黒煙が立ち込めていた。

その光景が、見たはずのない何処かの建物を幻視したのだ。誠一は馬鹿なと思いながらも、その幻視した光景は自分が以前見た光景だと確信していた。

もしそれが、見た事がある本当の光景なら自分はあの光景をいつ見たのだろう。

グルグルと回る思考、何度も思い出そうとするが結論は同じ。記憶はないが、何か覚えている。

そんな齟齬が誠一の心を乱れさせていた。


「これは一体…っ」


迷いを振り払うように一心不乱に套路を行っていると、一瞬目の端に何かが映る。それは以前見た黒いキャスケット帽。

視覚で感じるより早く胸を逸らせると、掠めるように棒が飛んできて石畳の隙間に突き刺さる。


「なってぇっ」


避け方を不味ったと誠一が心の中で呟く。避け方が胸を逸らせた為に引いた後ろ足が石畳に引っかかり体勢を崩す。体勢を立て直そうとするが、目の前にはキャスケット帽の少女の手が迫る。


「とったぁ‼」

「とって、ない‼」


背中から倒れるのを抗うのを止め、ワザと力を抜く。そうする事により背中から落ちることにより、迫る手をやり過ごす。

受け身を取りながら落ちることによりダメージはない、むしろその勢いを利用し足を振り上げる変形のサマーソルト。

少女は上げた肘でガードするが、体格の違いからの威力と誠一の純粋なパワーで軽く吹き飛ぶ。


「グッ」

「痛っ」


少女は体勢を崩した蹴りのあまりに威力に呻き、肘で足を打ち付けたられた誠一は痛みに呻く。誠一はすかさず起き上がると半身になり構える。相手が相手だ、誠一は呼吸を整え以前と同じように自己の中を掌握すると細かくエネルギーを振動させる、すると身体のエネルギーが一気に倍増する。すると、相手の少女も誠一とは違うリズムで同じような呼吸をすると、ブワッと風にならない揺らぎが身体から発せられる。


「本気で行くわ」

「来い」


一触即発。爆発ずる直前とも言ってもよいようなひりついた空気の中、どちらともなく一歩踏み込むと二人の姿がぶれる。次の瞬間二人は互いに同じ間合いに入る、誠一は右拳を少女は左掌底交差する様に突き出した。

二人の勢いと駆動はお互いの意識を刈り取る様に出たが、その二人の一撃は当たらなかった。

二人の間にもう一人入り込んでいた。


「えっ!?」

「思惟さん!?」


誠一と向かい合うように彼の右腕は叩き落され、少女の左腕は打ち上げられていた。


「救だらけよ、あなた達。意識は相手にありながら周りを見なさいよっと!!」


軽く言ったと同時に思惟は腰を落とし、背中を少女に預けた次の瞬間に先ほどの誠一以上に再び吹き飛ばされる。


靠撃こうげき


それは八極拳で言うところの『鉄山靠』で有名である背中や肩を使った体当たりの総称だ。しかし今の技は正確には違う、密着した状態からの瞬発力での一撃だ。むしろ靠勁こうけいに近いが、吹き飛ばす方に力を割いているのか勁が乗っていないのでただの靠撃だ。

そこまで考えていたらいつの間にかに思惟が目の前にいて…。


「状況判断が甘い、油断大敵」

「やばっ」


誠一は手を交差し防御態勢をとる。思惟は体を捩じり、体を開くように掌底を打ち込む。


「グゲッ」


身体を固めてガードしたが、簡単に抜かれ体を強く打ち抜かれた。体の芯を綺麗に打ち抜かれたのか、身体が動かなまま倒れてしまった。


「ふぅ、これからどうなるのやら」


遠く離れた場所で倒れた少女と足元に倒れた誠一を見て深い溜息を吐いた。


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