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いつもの日々に  作者: ルウ
混迷の林間学校
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混迷の林間学校 一応の収束

「すいませんでしたー‼」


今日二回目、正確には日を跨いでの救護室である。慌てて入ってきた斎と浩二を見た瞬間、状況を理解した東哉は開口一番で謝る手を取った。


「一回目はこんな事になって協力した手前、気を失ってからはとても心配したんだ。でもな、今回は違うだろうが‼ 危ないって分かっていて無理やり行くってどういう事だ‼」


東哉はぐうの音も出ない。斎の言う通り自分の身を顧みなったのは確かなのだ。


「すいませんでした」


涙目の斎に東哉は黙って説教を受けるしかない。下手に反論をすると倍以上になって返ってくるのだ、ここは殊勝な態度で嵐が過ぎるのを待つのが正解である。

救護室のベッドの上で斎の説教は続くが、流石に長かったのか天子が中断するように促す。


「まあまあ、斎ちゃん。東哉君もだいぶん反省しているみたいだから。今日はここまでにしておこう?」

「むっ、天子がそういうならばここまでにしておこう。いいな、これに懲りたら無謀な行動は止めるんだぞ、わかったな?」

「ああ。スマン」


あまりの剣幕に発電実験場での戦いよりもぐったりとしながら東哉は頷いた。見た目は萎れたレタスみたいだった。そんな中、おとなしく傍観者になっていた浩二が口をはさんだ。


「んでよ、結局手掛かり見つかったのか?」

「ん、ああ。その事なんだが、コレ」


そう言って東哉はポケットからストラップにつけられたUSBを取り出した。


「なんだそりゃ…USBか?」

「製品としては一番安い何処でも売っている奴だな」

「ついてるストラップが可愛いね。なんでか煤けてるけどさ」


煤けているのは爆発に巻き込まれたからである。東哉はこれ良く壊れなかったなと関心していた。

あの後爆発は、自分が思っているより数倍の威力を持っていた。発火した瞬間、爆発で気を失って気付いたらもうココだったという事を考えるととんでもない威力だったのが分かる。


「そりゃあそうだ、あの規模の爆発は生きていた方が凄いよ」

「うお、ビックリした」


突然割り込んできた声に全員が振り向けばそこにはノートパソコンを持った桂二が天子を伴って入り口に立っていた。


「廊下で待ってたから連れてきたよー」

「探してたら、凄い爆発音が聞こえて。ボロボロで落ちてたお前を連れてきた俺に何て言い草だよ。…まあいいや、お前これが必要なんじゃないか?」


桂二が差し出すノートパソコンに東哉は驚く。


「どうして俺がパソコンが欲しいと?」

「…助けた時に胸元から落ちたのが見えたからな。今までの話を聞いて、多分何かしらの手掛かりなんじゃないか?」

「うっ、そうなんだが。なんか納得いかないような? いや悪い事じゃないからいいんだけど…ありがとう」

「どういたしまして」


何かと言いたい事があったのを飲み込んで感謝を返す東哉は素直にノートパソコンを受け取った。

パソコンを立ち上げて、USB内のファイルを見ると一つのテキストファイルがあった。

題名は『また逢う日まで』。開くと莉奈が浩二を心配する言葉から始まり、言えない事情で5年前からのゴタゴタが原因で逃げなければいけない事、それが片付くまで会えない事などが書かれていた。


「大好きなあなたに、いつか会える日を楽しみにしています…か。莉奈…」


パソコンの電源を落とすと、言葉にならない東哉は下唇を噛み必死に何かを耐えていた。

浩二達は心の整理がつくようにと、彼を一人にするため部屋を出た。




再び階段の踊り場に腰を下ろすと今回の報告書を打ち込み始めた桂二は、後ろに現れた気配に声をかける。


「どうした、剣士殿?」

「疲れたから愚痴りに来たのよ」

「仕事の邪魔だ、おとなしく部屋に帰っておけ」


ジャージ姿の天子はにべもなく断られたのを気にせず、階段に腰掛けて溜息を吐く。


「話聞かないのな」

「帰っても斎ちゃんが落ち込んでて部屋が暗くってさ、ようやく部屋から抜け出してきたところなの」

「そりゃそうだろうよ、彼女は頭が切れるだろうが一般人だからな。俺らとは違う」


あの後、斎は部屋に帰って落ち込んでいた。友達の役に立つ、手掛かりが得られるようにと考えてやった結果があれなのだ。落ち込むに決まっていた。


「東哉君と莉奈ちゃんがもう一度出会うためにと考えてやった結果だけど、あんなどうしようもない別れの手紙を受ければ落ち込むわよ」

「…………そうだな」

「どうしたの?手が止まってる、珍しいね」


仕事の手が止まっている桂二の顔色が悪い、いやバツが悪い顔だろうか天子の視線から逃れようと身じろぎしていた。


「桂二君、あなた何かした…?」


ビクッと体を跳ねさせる桂二に天子は何かを悟る。


「まさか」

「………あー、そうだよ。あの手紙は俺が書いた」

「ブッて、あの文書あなたが書いたの?」


実はあの手紙は桂二が書いていた。天子が事情を聞くと、どうも莉奈は本当にちゃんと用意して彼女から直接預かっていたらしい。だが書いた内容を読むと何というか残念な感じの手紙だったという。


「あれは手紙じゃない、報告書だ。いや報告書の方が、書式が決まっているから温かみがある」

「そんなに酷かったの?」

「悪いと思ったんだが、守秘義務があるんで読ませてもらったんだ、そしたら箇条書きに事実のみを書いた無味乾燥な文章が書いてあってな。これは逆に信用されないんじゃないかと思ってソレを基にして書き直したんだ」

「うわあ」


そうしたら逆に情感たっぷりに書きすぎて、東哉のみならず周囲にダメージが入っていた。


「内容はともかく、あれをあなたが書いたと思ったら涙が引っ込むわ。と言うか爆笑しそう」

「俺は悪くない。と言うかお前は大丈夫なのか?」

「大丈夫、ピンピンしてる。相性が良すぎたみたい、ボッコボコしてやったわ」


音を感知する能力者と振動を操る能力者。振動を操る能力者にとっては最悪である。


「能力の起こりが見えてるなら簡単に避けられるし、カウンター気味にこうボコッと」

「あー別に無事ならいいんだ、無事なら」


やられた『崩壊』フランベルジュに同情しながら、横に置いてあるタブレットを桂二は天子に渡した。


「なにコレ」

「菊理さんからのメール。お前に直接渡すとバレた時に困るからな。今のうちに読んでくれ」

「そっか、ありがと」


見ると莉奈からの手紙が書いてある。確かに妙な箇条書きになっているなぁと苦笑いしながら読み進めると、だんだん泣き言になっていて天子は首をかしげる。


「なんか最後になるにつれて、遺言みたいになってんだけど?」

「ああ、それは仕方がない。今アイツはあそこにいるんだ」

「あそこ?」

「『学園』」


名前を聞いた途端、天子は盛大に顔をひきつらせた。


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